GWのまっただ中の今日は雲一つない快晴のドピーカン。リフトの順番待ちする春スキーの人達でリフト乗り場は大混雑だった。ようやく上駅に登り着くとそこからは姥ガ岳へとツボ足登行。積雪はかなり多いのでTバーリフトも山頂直下に設置されている。そこまではゲレンデスキーヤーもスキーは担いで登らなければならないというわけである。
姥ガ岳山頂もまだ雪が豊富だった。例年ならばほとんど雪が解けて木道がむき出しになっているところだが、いつもと全然違う光景にうれしくなる。さっそく北面へとスキーを担いでゆくとそこには信じられないほどの白く大きな大斜面が広がっていた。さらにスキーヤーも全く見当たらないのだ。
滑降を開始すると快適なザラメにたちまち装束場へと滑り降りてゆく。すると何人かのスノーボーダーが5、6人で休憩をとっているところだった。雪像を作ったり、少し登り返しては滑ってみたりと、のんびりまったりとこの桃源郷を楽しんでいる様子である。僕もこの装束場でしばらく昼食を楽しむことにした。装束場は石跳川の源頭部でもある。しかしこの大雪原をみていると広大なゲレンデをみているようで、つい源頭部であることを忘れそうであった。
姥ガ岳からは300mほど下ったが湯殿山へは150mの登り返しがある。しかし、初夏を思わせるほどの好天と、そして大量の積雪のおかげで登りも楽しいばかりだ。雪はいささかも潜らないのでシール無しでも全く問題はなかった。右手眼下には湯殿山神社が見えていて、多くのマイカーも停まっている。GWに併せて有料道路も開通したようであった。前方には先行する2名の姿が見えていたが、なかなか追いつけない。もしかしたら僕と同様に姥ガ岳経由の山スキーなのかも知れなかった。いくつかのピークを越えてゆくと湯殿山の山頂が正面だ。遠くからみれば切り立った稜線にもみえるのだが、あまりに積雪が多いために広い雪原となっている。ここはまるで朝日か飯豊の稜線のようだった。
湯殿山山頂にようやくたどりつけばもう登りはない。先行の二人組はすでに下ったらしくみあたらなかった。東斜面をのぞき込んでみたがトレースはない。この斜面も雪があまりに豊富なために急斜面という感じがしなかった。うっかり誘い込まれそうだったが石跳川を下るつもりはないので踏みとどまる。僕はもう昼食を済ませているのであとは滑降あるのみだ。久しぶりに南斜面へと進んでみると、ここにもトレースはなく、やはり二人組は尾根伝いに下ったようであった。
南斜面の滑降は快適だった。広くフラットな中斜面が延々と続いているのである。一気にブシ沼近くまで滑り込んで行き、途中から進路を左方向に転換だ。観客のいない一人舞台はあっという間に終わったが、シュプールをながめて一人満足感に浸った。あとは緩斜面のブナ林を一路、月山荘まで滑ってゆくだけである。ここのブナ林も積雪が多いために、例年の3月か4月の光景をみているような錯覚を覚えた。
ネーチャーセンターを過ぎると石跳川の末端だ。ここには砂防堰堤があり、駐車場はその向こう側になる。下流部も雪でふさがっていたが登り返しが嫌でそのまま道路に下った。最後は2、3分ほどスキーを担いで駐車場に戻った。今日はシールを忘れるというポカをしてしまったが、そんな失態を忘れさせてくれるほど快適な滑りを楽しむことができたのは予想外だった。こうしてみると何が災いするかわからないものだと、あらためてスキーの魅力、あるいは機動力というものに感謝した一日であった。