山 行 記 録

【平成22年4月10日〜11日/月山〜肘折温泉



月山山頂直下と品倉尾根



【メンバー】西川山岳会(柴田、宇野、駒沢、神田、安達、荒谷、上野、大江、石川、菊池、くさなぎ、三宅、橋本、蒲生)
      +ゲスト(大和田、大和田さんのお友達、後藤)※三宅さんは途中リタイア
【山行形態】山スキー、避難小屋泊、冬山装備(シュラフ、スコップ等)
【山域】出羽三山
【山名と標高】月山 1980m
【地形図】(2.5万)月山、立谷沢、肘折(20万)仙台
【天候】(10日)晴れ、(11日)小雨のち晴れ
【温泉】肘折温泉「肘折いでゆ館」350円
【行程と参考コースタイム】
(10日)リフト上駅8:45〜月山11:20-50〜千本桜12:40(1490m)〜立谷沢橋13:45(930m)〜念仏ヶ原避難小屋(1080m)(泊)15:00
(11日)小屋7:20〜小岳8:20〜978m9:20〜ネコマタ沢9:40〜778m〜大森山11:40-12:40〜朝日台13:40〜肘折温泉13:50
「肘折いでゆ館」=(車)=そば屋=西川町開発センター(解散)=(車)=自宅19:00

【概要】
 月山のツアーコースでは著名な「月山〜肘折温泉」。その滑走距離はゆうに全長20kmを超える。月山からの東斜面は大雪城とも呼ばれ、その広大さは言葉などではとても表せないほどのものがあり、滑走は天候に恵まれれば終生忘れ得ないものとなるだろう。立谷沢川の沢底から少し登れば秘境、念仏ヶ原に出る。しかしその念仏ヶ原の奥に建つ二階建ての大きな避難小屋も、4月上旬には通常大量の積雪に埋まりまだ影も形も見られない。そして念仏ヶ原からは変化に富んだコースが続くので、山スキーに慣れた人々でさえもなかなか飽きさせないものがある。終点が大蔵村の肘折温泉というのもいい。滑り終えた後は鄙びた風情の温泉に浸って帰宅の途につけるのだ。このルートは月山では最大最長のコースでもあり、山スキーの愛好家達を魅了してやまない。

(4月10日)
 この週末は恒例になっている山岳会主催の月山肘折ツアー。そして今日が月山スキー場のオープンでもありリフト代は無料である。おかげで姥沢スキー場には溢れるほどの車が止まっていた。今回の参加者は20名近くにもなりまたまたマイクロバスをチャーターしての山行である。オープン日とも重なったおかげで、姥沢界隈にはお祭り騒ぎのような雰囲気が漂っていた。

 リフトに乗っていると早くも姥ガ岳から滑降を楽しんでいる人達が見えた。リフト終点ではさらに多くのスキーヤーで溢れていた。天候は無風快晴。今年もまた願ってもないツー日和になるようであった。気温は高くすでに雪面はザラメとなっている。これならば山頂直下の急斜面もアイゼンなどは必要なさそうであった。シールを貼り終えれば一路金姥をめざす。順調に金姥を過ぎ、牛首を目指していると日帰りで山頂往復を予定している川口さんからアクシデント発生の連絡が無線で飛び込んできた。最後尾を歩いていたメンバーの一人が転んだ拍子に胸を打ち、もしかしたら肋骨を折っているかもしれないというのだ。自分のザックも背負うことができないというから事は大事だった。一瞬みんなに緊張感が走ったがここで僕たちと同じく先行していた佐藤(俊)さんから「ここは自分が対応するからまかせてくれ」ということで引き返していった。幸いに佐藤さんも日帰りでの参加だったことからこういった対処が可能となったのだが、山岳会の大先輩だけあってこうした機転、対応のすばやさには頭が下がる思いがした。結局、その人は歩くことは可能な様子だったがツアー継続は不可能となりリタイアすることになった。

 今回のメンバーは歩きの4名を加えて総勢16名。山頂直下の急斜面を無事に登り切って全員が月山到着した。山頂からは360度の展望が広がっていた。鳥海山もくっきりと青空に浮かんでいる。しかし、いくらゲレンデが無風快晴でも2000mの山頂は風の冷たさもハンパではない。とてものんびりと休んでいられるような状況ではなかった。多くの人たちでにぎわっていている山頂を早々に切り上げて、僕たちは早々と大雪城の滑降となった。そして窪地まで下ったところで大休止となった。いまのところ僕たちの他に大雪城を下ってくる人はなさそうだったが、良く見るとすでに先行者のトレースが千本桜に向かって続いていた。

 初夏を思わせるような日射しが頭上から燦々と降り注いでいた。大雪城は昼食地点からでも長い滑降が続いた。そして千本桜の急斜面を思い思いに楽しめば、広大な尾根を自由自在に下ってゆく。春風を全身に浴びながら滑降していると浮き世のつらさを忘れさせてくれるようだ。そして再び急斜面を下り立谷沢川の沢底へと降り立った。ここで柴田さんと上野さんは釣り竿を取り出し、例年のように釣り師へと変貌する。僕たちは二人に大量の釣果を期待して一足先に念仏小屋を目指すことにした。

 立谷沢の沢底からはシールを再び張って沢沿いに登ってゆく。まもなく飛びだした広大な雪原は秘境念仏ヶ原だ。この頃になると気温はますます上がり汗がしとどに流れた。僕たちはすでに下着一枚になっていたがそれでも暑すぎるほどの気温であった。

 念仏ヶ原避難小屋はほとんど雪面から出ていた。先行者は関東からの一パーティだけで他にはいない。避難小屋の混み具合も想定し、僕たちはテントも持参していたのだが、これならば小屋泊も十分可能だろうと1階部分を確保した。一段落する間もなくトイレの設営や小屋前に宴会場の設営が始まった。

 後続の釣り師部隊を含め全員がそろったのはそれからかなり経ってからであった。で、肝心の収穫はというとからきしらしい。どうも餌を忘れたとかで、ソーセージやカマボコで代用したようだったが、賢いイワナには全然見向きもされなかったとか。ともあれ、みんなが揃ったところで乾杯となり、今回も外での大宴会の開始だ。先週に引き続いてメインのシェフは石川さん。鳥海山での鍋があまりにおいしかったので全員からアンコールとなったのだった。塩釜からゲスト参加の大和田さんからは新鮮な刺身の差し入れがあり、ここが月山の秘境、念仏ヶ原とは思えないような豪華な食卓となった。日没後は山小屋とテント内へと宴会が引き継がれたようだったが、僕は例によって早めにダウンしてしまったのはいうまでもない。

(4月11日)
 翌日は5時に起床した。外の様子が気がかりだったがあいにく雨が降っている様子だった。それでも関東からの人達は6時半には小屋を出て行った。僕たちの出発予定は午前8時。下界では味わえないようなおいしいラーメンが大鍋で作られてそれぞれに朝食のひとときを楽しんだ。

 小屋から出てみると雨は小降りとなっていた。気温も高いのだろう。視界はあまり良くはなく月山はうっすらとしか見えない。午後からは晴れる予報がでているので天候は回復基調なのが少しだけありがたかった。念仏小屋からはいつもの快適なシール登行が続いた。小岳には約50分で到着したが、今回は山頂を踏んでこようとなり、広々とした雪原を西に向かって進む。どこが山頂かわからないのだが一番高い地点にたったのは初めてだ。三角点は少し低いところにあるのだがもちろん今は雪の下だ。全員で記念写真をとりいつもの滑降開始地点へと移動。小休止を終えればシールはもう不要である。

 ここからは快適なスキー滑走の始まりだ。歩きの部隊も数名いるのだがこれがなかなか侮れない。スキーでもたもたしているとたちまち追い抜かれてしまうのだ。赤砂沢に沿そっていつものように尾根を快適に滑ってゆく。降りきった鞍部からはすぐに978m峰への登り返しだ。978mからはネコマタ沢への最上部にたどりつく。この目まぐるしいほどのコース変化がこのツアーコース最大の魅力だろうか。あいにく視界は最悪の状態で沢底は全くみえなかった。ネコマタ沢は人間雪崩が頻発するところで有名だが、視界が無い反面、雪面はこれまでで一番良かったような気がした。いつもクラックにはまったりしている僕が一度も転倒せずに末端まで滑降したのはもしかしたら初めてかも知れなかった。ともあれ全員無事にこの急斜面を滑り降りて次の登り返し地点まで再び滑降が続いた。

 ネコマタ沢の末端からは778m峰への登り返しとなる。雪面はかなり柔らかくなっていて、ツボ足では膝近くまで潜った。778m峰からはブナ林をすり抜けながらのツリーランが連続する。そして途中からは大森山直下までは長いトラバース区間となる。この次々と変化するコースは何回経験しても飽きることがない。トラバースが終えればそこは大森山直下。すでに歩き部隊もすぐそばを歩いていた。ここから大森山山頂までは見上げるほどの急坂が待っているところだ。大森山の急斜面は雪解けも早いところだが、今回は予想外に積雪もあってツボ足でも登ってゆけそうだ。僕は夏道部隊と別れてツボ足部隊のトップをゆくことにした。最近の体力不足を補いたかったのだが、稜線にたどり着いたときには両足がつりそうなほど疲労困憊であった。

 大森山に登り切った壮快感は格別であった。登り返しも終わりあとは肘折温泉まで下って行けるのである。宴会用のテーブルは先行者がすでに設営してくれていた。ここは年に一度だけ開店する"レストラン大森山"である。ザックに残っていた食材やアルコールなどが各自から次々と雪のテーブルに広げられ、しばし歓談に一同盛り上がった。

 大森山山頂からは最後の滑走となる。ブナ林を縫って行くこの区間は急斜面ながらもツリーランが楽しめるところだ。アルコールの勢いもあってみんな大胆な滑りを繰り広げる。林道に降り立てば今回のツアーも終盤だ。林道をショートカットで滑って行くと肘折温泉の朝日台に飛び出す。朝日台はまだまだ多くの積雪に覆われていた。林道の除雪がされていないせいもあるのだろうが例年よりも積雪が多いようにさえ感じた。朝日平からは肘折小学校前へと滑り込んでツアーはエンディングとなる。そこにはマイクロバスと軽トラ運転の事務局長自らが私達の到着を待っていてくれた。

 下山後、私達は「肘折いでゆ館」のしっとりとした温泉に浸ってこの二日間の汗を流した。その後は舟形町「重作」の美味しい蕎麦で締めくくり、一路、西川町の開発センターへと向かった。



二日目の朝


リフト上駅


牛首付近


立谷沢川


念仏ヶ原


念仏小屋


熱々の鍋


夕食


大森山直下


大森山レストラン


朝日平


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