スキー場ではスキー大会が行われていて予想以上の賑わいを見せていた。リフトトップでシールを貼っているとスノーシューの団体が大勢通り過ぎてゆく。天候がよいので今日の蔵王はツボ足やかんじきを使った多くの登山者で混み合いそうだった。山スキーは誰もいないだろうと思ったら一人だけの踏跡が馬の背へと続いていた。
蔵王はいつきても雪面は堅く、バウだーなどはほとんど望めないのだが、2、3日前に降った雪がまだ残っていてアイスバーンでないのがありがたい。避難小屋を通過すると前方には熊野岳や刈田岳が正面となった。この頃になると駐車場で吹いていた強風はすっかり治まっていた。
廃線リフトからは大勢の登山者が斜面にとりついていた。僕たちは大駐車場へと回り込み、登山リフトの下を上ることにした。こちらは誰も来る様子がなく貸し切り状態だった。新雪のおかげで一面真っ白の雪面はまぶしいほどに輝いている。天候の心配もなさそうなので今日は本当の意味でのハイキング気分だった。
馬の背からはひとのぼりで刈田岳についた。一時は氷も融けかけたと聞いていたたお釜はしっかりと氷結していた。冬の蔵王は晴れるのが珍しいだけに今日の天候に感謝した。山頂では多くの登山者でにぎわっていた。宮城県側からの登山者も多いようだった。山頂を吹く風はさすがに冷たく、そして一時も立っていられないほど厳しかった。早々に避難小屋へと逃げ込むことにした。
小屋には誰も入ってはおらず、僕たちが一番乗りだった。避難小屋の周りは雪に覆われていて薄暗く、僕はスコップをもって外にでて雪を払った。その分だけ小屋の中に明るさが戻った。風は強かったが小屋の中はやはりあたたかい。ストーブもあるのだが火を入れる必要はなかった。山から遠ざかっているうちにすっかり春山の雰囲気に満ちていた。昼食をとっていると避難小屋には次々と登山者がやってきた。
強風は相変わらずだったためシールは避難小屋ではがした。山頂付近はガリガリのアイスバーンだったがリフトの鉄塔まで下ると風はピタッとなくなった。いつになく雪も柔らかいのでもう心配はなさそうだった。いつもはこの付近もシュカブラが発達して滑りにはあまり適さないのだが、先日の雪がまだたくさん残っていて今日は楽しみながら滑ってゆく。たちまち平原地帯までおりてしまい、そこからはのんびりと下ったゆくだけだった。熊野岳をみると今日の気温の上昇もあってか、雪がだいぶ溶けていて一部岩肌も見えるほどだんた
リフトトップまで降りてきても人の姿がほとんどなかった。スキー大会はすでに終わったらしっかった。それにしてもスキーヤーが一人も見あたらないのが不思議だった。ちょうど昼時間ということもあるかもしれなかった。あまりに暖かい日々が続いたためスキーシーズンが終わったのだろうかと思ったほどだった。駐車場まではほとんど休むことなく滑ってきて今日の短いスノーハイキングが終わった。まだ午後の2時前だった。駐車場には暑いくらいの日差しが降り注いでいた。ちょうどこの日、中丸山の西斜面で雪崩事故が発生したのを帰宅してから知った。