先週は降雪直後ということもあって、下りラッセルのような積雪量のため往路を下るしかなかったのだが、今回は氷化した雪面の上に適度な新雪が積もっており、山頂からの滑りの快適さは約束されたようなものであった。さらには先客もあってとりあえずラッセルの必要もなさそうである。
いつものように夏道に沿って登り始めると徐々に積雪が増してゆく。上空は気持ちの良い青空だ。先人のトレースはそれほどの深さはなかったが、それでも楽なことには変わりがない。ペースはどんどん捗りたちまち先週の折り返し地点である賽河原まで着いてしまった。そこからはほどなく山鳥山の分岐点で、前方を見上げると新雪を抱いた家形山が見えた。まだまだ距離はあるので小休止を終えればすぐに出発だ。ここからのルートは久しぶりなので懐かしい。緩やかな上り下りを繰り返すと井戸溝があり、やがて慶応山荘への分岐点に着いた。先人達のトレースは山荘へと続いていて家形山へは踏跡はなかった。安定していた天候も下り坂なのか家形山は雪雲に隠れようとしている。今日は晴れたり曇ったりと変わりやすい天候であった。
分岐からは徐々に勾配が増して行き、それに比例するかのように積雪も増えていった。風も非常に冷たく、立ち止まると体が震えるほどである。高度が上がってきたということもあって寒さはかなりのものだ。今日は大根森辺りまでゆけるだろうか、という不安が募る天候であった。
大根森には3時間ほどでようやく到着した。ここは烈風が吹き荒れるところで普段は雪がほとんどつかないところだが今年は例年よりもある。ここまでくれば家形山は目前だった。その前にたちはだかるようなピークは通常トラバース区間だが、今回は表層が流れる危険があり直登することにした。大場さんは愛犬とともに先頭を切ってゆき、ほとんどピークまで登り着いたようだったが、今日はここまでが限度だろうと行動停止とした。晴れれば家形山の山頂から滑る予定だったが、今日の悪天候ではせいぜい五色沼までが精一杯。そうなるとここから滑降開始としても変わりはない。なあに天候さえよければ家形山へはいつでもこられるのだ。
僕たちは高度1750mまで登っていた。シールをはがしてまずは大根森に戻って昼食としよう。雪は激しくなるばかりだったがツェルトを張れば問題はない。しばし団らんのひとときとなる。大根森からの滑降は快適だった。強風のおかげで積もりに積もった吹きだまりでは新雪が40〜50センチはあるだろうか。慶応山荘分岐点までは斜度もあって一気に下った。慶応山荘で休憩中のグループはまだ下った様子がなかった。もしかしたら泊まりなのかもしれなかった。分岐からもバウダーのふんだんな樹林帯を縦横無尽に下ってゆくばかりだった。この開放感と浮遊感はこの季節ならではのものである。僕は前回の経験があるので感激はなおさらであった。
リフトトップまでくればここからは今は無人となった吾妻スキー場を滑るだけである。このスキー場が営業廃止となってから何年になるのだろう。上部ではところどころに枯れ草や潅木類が見えていて、あと数年もすれば自然の山に戻るのも知れなかった。とはいっても今年の滑りの快適さは文句なしである。みんな雄叫びをあげながら一気に飛ばして行くばかりだ。ゲレンデの半分ほどまでくると無人のスキー場を楽しんでいる人たちが4、5人いた。この人達は駐車地点からまっすぐにスキー場まできたようであった。
バニーハットからはスカイラインに沿って下ってゆく。ゲレンデで遊んでいる人たちが残してくれた登りのトレースがあるのでここも楽々と滑ってゆくことができる。みんな900mの高度差を滑り降りてきた満足感に満たされているようだ。さらに今日はこれから高湯温泉で汗を流し、その後は楽しいテントでの宴会が待っているのである。そんなことを頭の片隅で考えながら下っていると駐車地点まではまもなくだった。
夏道に沿って登りが続く |
山鳥山から家形山を望む |
大根森で |
無人のスキー場はパウダーの宝庫 |