山 行 記 録

【平成22年1月16日/高湯温泉〜家形山(※賽ノ碩まで)】



往路を滑ってきました



【メンバー】単独
【山行形態】山スキー、冬山装備、日帰り
【山域】吾妻連峰
【山名と標高】 家形山 1,877m(※賽ノ碩標高1380mまで)
【地形図 2.5万、20万】(板谷・土湯温泉・吾妻山)(福島)
【天候】晴れ時々曇り
【参考タイム】
除雪終了地点10:40〜賽ノ碩13:00〜除雪終了地点14:00

【概要】
 山形県内は例によって冬型が強まり荒れ模様の天候だった。こんな時の山スキーは福島県か宮城県側に限るだろうということで久しぶりに高湯温泉へと向かった。栗子峠付近は風雪が舞っていたが、福島県内に入るとそれほどではない。市街地では青空が広がっているようだった。

 スカイラインの除雪終了地点には予定どおり朝早く着くことができた。しかし、予期しないアクシデントが発生したこともあっていったん飯坂町まで戻らなければならなかった。詳細を書いてもしょうがないのだが、結局、今日の山は諦めようかというまで一時は気分が落ち込んだ。その後様々な事があったのだが、急転直下、なんとかアクシデントは一応解決となり、時間は遅かったものの再び吾妻高湯へと上がっていった。

 除雪終了地点には車が1台だけ停まっていた。うーむ、あづまスキー場が閉鎖されてからは人気がさっぱりとないのだなあ。しかし天候は思った以上に良かった。新雪が陽光に煌めいていて、そんな風景を眺めているだけで登行意欲が湧いてくるようだった。それに予想外の積雪がある。この高湯温泉付近でこんなに積雪があるのを見るのは滅多にないような気がした。そして今日は一人の先客がある。その先人のトレースをありがたく利用させてもらうことにしてさっそく僕も登り始めた。

 積雪は驚くほどの量だった。踏跡をたどると膝上以上もあるのだ。これでは先客も大変だったろうと思っていると、まもなくして踏跡は早々とスキー場の方角へと折れていった。意外ではあったのだが僕は予定どおりに慶応山荘へと直登してゆく。さて一人でラッセルをがんばろうかと先を見ると、昨日か一昨日のものと思われる踏跡がうっすらと残っていて、これならば予想よりも楽に登れるかも知れないと思った。昨日から今朝にかけての新雪が半分以上降り積もっていたが、そのわずかの踏跡でもラッセルでは助かるものなのだ。しかし、そんな喜びもつかの間であった。まもなくその踏跡も強風にかき消されてゆく。当然ながらここからの単独ラッセルは気合いが入った。

 時間はかなりかかったものの、急斜面を登り切り、まもなく不動橋付近に飛び出そうという辺りで後続帯が追い付いてくるのが見えた。関東から訪れたと思われる若い人たちで5、6人ほどいる。みなスノーシューを履いて登っているようだったが、スキーよりも浮力はないので僕のトレース跡でもずいぶんと苦労しているようだった。

 パーティが追い付いてきたところで少し先を譲ることにした。朝からほとんど食べてはいない上に喉もカラカラに乾いていたので初めての小休止である。そのパーティを見送っていると全員大きなザックを担いでいる。銀マットも背負っているところをみると今日は泊まりのようであった。ふと後ろ姿をみると、そのパーティの最後尾を慶応山荘の管理人が登っていた。

 小休止を終えて登りを再開すると、ほどなくパーティに追い付いてしまった。今日のような深雪のラッセルではスキーにかなうものはないのだろう、スノーシューのラッセルにみんな難儀しているようだった。少し立ち話をしていると、この5、6人のパーティは管理人から宿泊を断られたとかで立ち止まっていたようである。いろいろと聞いてみると彼らはテントを持参しているというので僕は絶対に幕営を勧めたりして少し慰めてみる。天候も悪くはない上に今日のように新雪が多いのは天の恵みだともつけ加えた。

 彼らがどうするかはわからなかったが僕は僕で時間も気になり先をゆくことにした。まもなくすると単独ラッセルに苦労している管理人に追い付いた。そこからはラッセルを管理人と代わった。今日のような深雪ではスノーシューでのラッセルは非常にたいへんそうで、足を抜くだけで難儀している様子がありありだった。そこからは管理人の大○さんと話をしながらのラッセルとなる。すると慶応山荘の管理人は小屋までとはいいながらも、なんと毎日往復しているのだというから驚いた。あくまでトレーニングということだったがそれにしても鉄人のような管理人だ。今日も小屋まで行って折り返してくるのだというのである。例年はこんなに積雪があるのはないらしく、この雪も昨日、一昨日の2日間で降ったものなのだと教えてくれた。

 太板のスキーとはいっても膝上のラッセルはさすがにきついものがあった。僕の太股はともすれば攣りそうになっていた。しかし賽ノ碩付近まで来れば平坦地となりようやく一息をつけるところだ。この付近の標高はおよそ1380m。ここから右手に折り返して行けばあづまスキー場のリフトトップに出ることができる地点である。しかし、ここまでの積雪を考えると少々の斜度ではスキーは絶対に滑らないだろうと思った。今日はこのまま登ってきた夏道沿いに下った方が良さそうなのは明白のような気がした。そんなことを説明して管理人とはここで別れた。管理人はスキーを小屋付近にデポしているので今日は自分も滑ってくる予定だと言っていた。

 朝から広がっていた青空も少し薄雲が広がっていた。このコース自体は樹林帯なのでほとんど風の影響はないと思っていたのだが、その樹間を強風が突き抜けてきて、ともすれば体が煽られるほどである。スキー場では強烈な風雪が舞っているようだった。

いくら積雪があるとはいえ、自分のトレースを利用すれば当然ながらスキーはよく走った。そしてスピードがでた時点で新雪へと飛び出してゆきパウダーを味わうのである。きょうはこんな滑降でも楽しいばかりだった。それもこれも予想外の深雪のおかげである。本来、この夏道は狭い上に斜度があるので滑りなどには向かないはずなのである。それが今日はへたなスキー操作でも快適に滑ることができるのだから災い転じて何とかというやつだろうと思った。

 まもなくすると斜度がゆるんで除雪終了地点へと飛びだした。まったく下りとなるとスキーは早い。こんなことなら大根森付近まででも足を伸ばしても良かったかなと思ってみる。駐車地点ではちょうど下山してばかりの単独行の人と出会うことができた。ラッセルのお礼をいうと今日のスキー場はほとんど滑りにはならなかったという。当方も似たような気持ちではあったが、ラッセルを楽しんでその分だけお互いに滑ってきたという、なんともいえない満足感が僕の心を満たしていた。


スカイラインの途中


ツアー標識がある


1パーティと管理人


慶応山荘の管理人とラッセル


コース略図

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