前回残っていた紅葉はすでになく、登山口周辺は冬枯れ一色という雰囲気に包まれていた。天候も期待した快晴とはならず雲が多かった。しかし、大荒れの山形県内からみれば信じられないほどの好天なのは確かだった。
半田沼管理事務所はすでに冬支度を終えていた。人の姿は他にはなく登山者のものらしい車が数台駐車場にとまっているだけである。半田沼を半周すればウォーミングアップも終わりでさっそく北口登山口から山道に入った。一帯は松林におおわれており、登山道は松葉や枯れ葉で茶色一色となっている。その中で一部青々とした路傍の雑草に燦々とまぶしい日射しが降り注ぐ。その様子はまくで春の里山を思わせるようだった。100m毎の標識に促されながらゆっくりと登ってゆく。山道は広く快適だったが久しぶりのカミさんは喘ぎながら登っている。急ぐ必要もないので途中、のんびりと休憩を取りながら山頂をめざした。
松林は密集しているが朝の日射しが差し込むと目映いばかりの明るさに包まれる。陽光を浴びると今が初冬だとは思えないほど体が温まった。太陽のありがたさがつくづくとわかる瞬間でもある。まもなくすると登山者が三々五々と下ってくるのに出会った。ほとんどの人は南登山口からの周回コースを歩いているようだった。
山頂にはちょうど1時間半で到着した。風は強いが日射しもあって心地よい。登山者は他にはなく、山頂は僕たちだけだった。風が冷たいので案内板のあるブロックの陰に腰を下ろして昼食とした。ここならば風は全く感じられなかった。僕たちは阿武隈川や阿武隈山地を眼下に見下ろしながら、楽しい時間をしばらく過ごした。2回目の山頂だったがここはこんな時期のハイキングにこそふさわしい山だとあらためて思う。
下りはそのまま南登山口に向かって直進してゆく。一時は薄雲が広がり始めたもののすぐに日射しが舞い戻った。尾根道は陽の光と木陰のコントラストがくっきりとして初冬とは思えないほどの明るさに満ちていた。逆コースをたどると下り道は拍子抜けするほど短く感じた。ほどなく舗装路の林道に一旦出て、ふたたび山道へと入ってゆくとキャンプ場が見えてくる。付近一帯は薄暗い杉林だが距離はいささかもない。正味3時間のハイキングだったが運動不足の解消にはほどよい歩きを楽しんだ一日であった。