山 行 記 録

【平成21年11月8日/本沢コース〜豪士山〜江の沢山〜中ノ沢コース



豪士山山頂と文殊山



【メンバー】単独
【山行形態】秋山装備、日帰り
【山域】奥羽山脈南部(置賜東部)
【山名と標高】豪士山 (ごうしやま)1,022.4m、江の沢山949.7m
【地形図】(2.5万)駒ヶ岳、(20万)仙台
【天候】晴れ
【参考タイム】
本宮キャンプ場駐車場6:20〜ひかば越え登山口7:50〜ひかば越え分岐8:15〜豪士山8:40〜豪士峠9:05〜江の沢山9:35〜中ノ沢峠10:00〜中ノ沢登山口11:10〜本宮キャンプ場駐車場12:00

【概要】
 ガイドブックによれば豪士峠はその昔、高畠町上和田と福島市茂庭を結ぶ古い街道上の峠だったようである。高畠村は古くは屋代郷に属し、江戸時代において幕府の直轄領となったり、米沢藩の一時預り地となるなど時の権力者に翻弄されたところだが、その屋代郷民にとって豪士峠は二井宿街道に対する間道として利用されていたらしく、またそれは米沢福島間の表街道である板谷峠に対するいわば裏街道だったようでもある。この街道は福島県側から高畠町の亀岡文殊堂までの最短距離だったことから、昔は多くの参拝者に利用されていたらしいが、その昔日の面影も今はまったく見られず、街道があったことさえ知る人は稀である。

 昨日に続いて今日も秋晴れが予想されている。しかし置賜盆地は濃霧に覆われていて朝から夕暮れのような薄暗さに包まれていた。もうこの時期になると高山では積雪があるはずなので冬山の準備は必携となる。僕はまだまだ心の準備も出来ていないことから近くの豪士山に向かうことにした。秋の山歩きは先週末でもう終わりだろうと思っていただけに、今日は少し得をしたような一日になりそうであった。

 豪士山にはいろんなコース取りがある。その中でも中ノ沢コースは未踏であり前々から気になっていたものである。できれば一番大回りコースをとりたいところだが体力に不安があるので、今日は本沢コースからひかば越えに登り豪士山をたどって中ノ沢を下ることにした。

 豪士峠への駐車場には時間が早いこともあって一番乗りであった。濃霧のためか歩き出すとたちまち草露に登山靴が濡れたものの、高度が上がると徐々に山道は乾いていった。急坂をしばらく登ればまもなく雲の上に飛び出した。濃霧の中を歩いているときはとても信じられないことだが雲の上は当然ながら快晴であった。ひかば越えでは目の覚めるような青空が広がっていた。見渡せば一面の雲海が広がっていて、その遠方には飯豊連峰や朝日連峰がうっすらと見えた。雲からちょんと飛び出している手前の山並みは文珠山のようだった。

 ひかば越えから見上げる前方の高みは豪士山で、振り返れば駒ヶ岳がすっきりとしたスカイラインを見せている。豪士山にきてこんなに晴れるのは初めてのような気がした。周りには先日降ったと思われる雪が一部に残っているが今日の小春日和では単なる点景でしかない。降り注ぐ日射しは11月とは思えないほどの暖かさを感じさせた。

 豪士山にはひとのぼりで到着した。日射しはあるのに気温はなかなか上がらないのかも知れない。雲海はあいかわらず置賜平野を一面覆っていた。豪士山を後にするとひとくだりで豪士峠に着く。ここには分岐点の標識が立ちここからはいよいよ未踏のコースだ。道はよく踏まれていて何の不安も感じない。不安どころか初めてのコースだけに実に新鮮な喜びのようなものがある。これには今日の好天というのも大きく影響しているのかもしれなかった。

 豪士峠から中ノ沢峠までは小さなアップダウンがあって距離はけっこうありそうだった。しばらくすると大きなピークにたどりつく。ここには小さな三角点と標柱があってそこには江の沢山と書かれていた。山頂からは遮るものもないので山頂からの展望はすこぶる良い。駒ヶ岳から豪士山への山並みが全て見渡せるうえにこれから歩いてゆくコースも手に取るようにわかった。なんとか判別出来る程度だが遠方には蔵王連峰も空の色に溶け込んでいる。手前には鳩峰峠らしき山並みがあってその向こう側は七が宿町のようである。すると中ノ沢峠はあの辺だろうかとおおよその見当をつけてみた。

 江の沢山からも快適な稜線歩きが続いた。日陰の部分は濡れているのだが陽の当たる南面の山道はカラカラに乾いていて、歩くとカサカサと心地よい音が辺りに響いた。ほどなくすると中ノ沢峠に着いたが、ここから先はヤブとなっていて稜線上に道はない。山道は左手へと続いていてこの標識が中ノ沢コースへ下る分岐点であった。

 中ノ沢峠からはこれまでのアップダウンとは違って一気に下ってゆくようだった。急坂は七曲がりのように続いていてなかなか沢へとは降りてゆかない。夏場ならば鬱蒼とした樹林で薄暗いようなところだが、この時期のブナ林はすっかり落葉を済ませていて、それは信じられないほどの明るさに満ちている。通常は見えないところがほとんど見渡せるので晩秋の山歩きもなかなかに楽しいものであった。

 うんざりするころになるとようやく中ノ沢の沢底へと降りたった。急坂はもうなくなり、そこからは沢を右へ左へと渡りながら下ってゆく。斜度もゆるやかになると杉林と砂防ダムが現れて中ノ沢登山口へと降り立った。ここからは長い林道歩きが待っていた。豪士山登山口までは1時間ほどもかかるかもしれない。ここまではあまり行動食なども食べなかったためにザックにはたくさんの食料が残っていた。僕は菓子パンや果物をポケットにつっこみ、少しずつ口に入れながら駐車場に向かって長い林道を歩き出した。



コース概要


ひかば越え


豪士山から望む文殊山


江の沢山


明るい山道


中ノ沢から見上げる

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