山 行 記 録

【平成21年11月1日(日)/朝日連峰 祝瓶山荘から中沢峰】



中沢峰取付から朝の祝瓶山



【メンバー】単独
【山行形態】冬山装備、日帰り
【山域】朝日連峰
【山名と標高】 中沢峰(なかざわみね)1,343.3m
【地形図】(2.5万)羽前葉山、(20万)村上
【天候】晴れ
【参考タイム】
祝瓶山荘7:20〜1031m峰8:45〜1171m峰9:45〜中沢峰10:40-11:10〜祝瓶山荘13:40
  
【概要】
 中沢峰は朝日軍道における長井葉山と御影森山のちょうど中間地点にある。何回か訪れているピークで三角点もある山だが、祝瓶山荘からは実に14年ぶりだった。大朝日岳からならば4回ほど通過している山だが、祝瓶山荘からは予想外に登っていなかったことに、我ながら驚いてしまった。たぶん2、3回ほど登っていたような覚えもがあったのだが、おそらく山菜採りのためだったのだろう。中沢峰の標高は祝瓶山より低いとはいえ、アップダウンが多いことと距離が長いので、比較すれば行程的には中沢峰の方が少しきついコースとなる。

 祝瓶山荘は1週間振りだ。駐車場には車が何台かあり、少し登って行くと岳人長井の宇津木さんに出会った。宇津木さんは斜面に三脚を立て、祝瓶山の撮影機会を伺っている。その地点からは燃えるような祝瓶山を望める、最高のビューポイントのようだった。宇津木さん達は前日から奥山山荘に泊まって宴会を楽しみながら、今日は朝から仲間達による小屋仕舞いの作業を行っていた。

 杉林の急坂がしばらく続き、途中からミズナラが目立つようになると、周囲の木々はほとんど葉を落としていた。おかげでスカスカとなった枝の間からは、普段は見られない景色が望めるから冬枯れの山も楽しい。最初の急坂を登り切ってしまえば時々平坦部分が現れるので、この時期ならではの紅葉を楽しみながら歩くことができるのだ。1171m峰を過ぎると眼下に木地山ダムが見えるようになる。薄雲の色を反射してか、湖面は鈍く光っているだけだった。その右手には三体連山から祝瓶山への稜線が続く。そして大玉山、平岩山、大朝日岳、御影森山へと連なる山並みを全て見渡すことができた。細い木立はすこし邪魔だが、その枝越しにこの大パノラマを眺められるのは残雪期とこの時期しかないものだ。

 小さなアップダウンを繰り返すと前方に中沢峰を仰ぐようになる。この小さな上り下りが結構くせ者で、14年前に登ったときには下りで膝を痛めて、辛い思いをしたことがあった。いわゆる膝が笑うという状態である。とにかく多くのアップダウンがあるので、その標高差も加えると祝瓶山よりも登りも下りも結構つらい。

 高度が1200m峰を超えて前方に大朝日岳が見えるようになると中沢峰は近い。上空には秋空が広がり、爽やかな空模様だったが、風は冷たくて、冬の到来がすぐ目前まで迫っていることを感じさせるようであった。

ここまでは手入れの行き届いた登山道が続いたが、山頂付近は刈り払いがされていないうえに、倒木が結構道を塞いでいた。ヤブ漕ぎほどではないがいよいよ朝日連峰の最奥に入ってきたという雰囲気に満ちてくるところだ。最後のひと登りを終えるとようやく中沢峰の山頂に着く。ここまでの所要時間は3時間20分だった。

 山頂付近はヤセ尾根が縦長になっていて、三角点をそのまま進むと御影森山への分岐点だ。ここは朝日軍道の一角で、目の前に三角錐の御影森山がきれいなスカイラインを見せている。一方、焼野平や八形峰を経て長井葉山へ続く縦走路はブナの原生林が広がっているところだが、すでに紅葉は終わり、モノトーンの寂寞とした風景が広がっているだけだった。

 休憩をとろうとしたら鈴音が聞こえ、単独の登山者が登ってきた。今日は一人だろうと思っていただけに意外であった。この中沢峰は初めてだという山形市の方で、できれば御影森山まで行くつもりだったらしいのだが、まだまだ距離があることと、秋の日の短さを考えて断念したようだった。私は30分ほどのんびりとしながら、山頂からの久しぶりの光景に見入っていた。飯豊連峰だけは雲に隠れて見えなかったが、その他の山並みはほとんど見渡すことが出来た。大朝日岳の初雪は3週間前にあったはずだが、その雪はほとんど消えてしまったようである。冬枯れの光景はもう雪を待つだけのようでもあり、今日の好天に感謝した。

 山頂を後にすると、前方に祝瓶山が見えた。すでに朝の輝きはなく、薄雲も広がり始めたため、一抹の寂しさが漂っている。鎧を覆ったような岩壁も鉛色に鈍く光り、山肌も長い冬ごもりの準備を始めているようであった。

 下るに従って陽射しの暖かさが戻ると、山頂で冷えた体も徐々に温まってくる。新たに登ってくるような人もなく、静かな稜線歩きが続いた。ときどき鮮やかな潅木の紅葉に出会うと、何気なく嬉しくなり、それらを山の前景にしながらシャッターを押す。こんななんでもないことがこの時期の楽しみのようでもある。私はキノコがないものかところどころで目を凝らしてみたが、ほとんどみあたらず、山荘付近でクリタケのようなものをひとつかみだけ見つけ、自宅へのささやかなおみやげにした。



途上から中沢峰を仰ぐ


三体山と木地山ダム


中沢峰三角点で


中沢峰から大朝日岳と御影森山(右端)


途上から大朝日岳を望む


中沢峰直下からの祝瓶山


クリタケと思って食べてしまいました


祝瓶山荘と祝瓶山


賑やかになった祝瓶山荘登山口


木地山山荘付近から


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