四駆の我が車でもなんとかたどり着いたというのに駐車場に着いてみると野田ナンバーの車が一台停まっていた。それも普通車でありこれには二人で驚いてしまった。さてこのコースはアプローチこそ難路だが登山道は驚くほどに優しい山道が続く。日射しがないのが少し残念だが、それでもカラマツ林の紅葉には気持ちが安らぐようだった。
頭殿山の標識が現れるとそこからは急坂の始まりだ。といっても距離はそれほどはない。標高差は全体で400mしかなく、だらだらと平坦路を歩けば残りの高度は300mとなる。これを一気に山頂まで登るのである。暑ければ汗を搾り取られるところだが、今日は登るほどに風が強まり、立ち止まると急激な寒さが襲ってくるようだった。稜線にでると目の覚めるような紅葉の鮮やかさにハッとさせられる。そこは脇戸沢源流部であり、この流れは荒砥の中心部へとながれてゆくのだが、源流部の両側は恐ろしいくらいの岩壁がそそり立つ渓谷だ。遠方には白鷹町の街並みが見渡せた。しかし、展望が楽しめたのもここまでで、途中からは霧に包まれてしまい視界が徐々に失われていった。
山頂まではゆっくり歩いて2時間弱で到着した。不思議だったが山頂に野田ナンバーの登山者は見当たらなかった。山頂は濃霧に覆われていた。白鷹町側から朝日町側へと盛んに霧が流れていて、肝心の大朝日岳や小朝日岳は見えなかった。展望がないのはガッカリだったが雨が降らないだけ感謝しなければならないようだ。僕たちはしばらく山頂に腰をおろして昼食休憩とした。風は不思議と治まっていたが気温の低さは尋常ではない。二人とも防寒着を羽織っての休憩である。そしておにぎりだけでは体が温まらず、ガスコンロを取り出して熱いコーヒーを作る。寒いときには熱い飲み物に限るようだ。コーヒーを飲んでいるうちに登りの疲れや寒さなどが次第に和らいでゆき、再び歩き出そうという元気を取り戻していた。