駐車場はすでに満杯状態で道路の路肩にも数え切れないほどのマイカーが停まっていた。笹谷峠では朝から冷たい風が吹いている。長袖シャツだけではとても間に合わず最初から防寒着を着込んだ。早くも雁戸山を往復してきた人もいて駐車場ではたくさんの登山者達でにぎわっていた。
気温は低くとも乾燥した秋の空気が爽やかだった。目の前の斜面には多くの登山者が張り付いていてかなりの混み具合を感じさせた。ひとのぼりでハマグリ山に着くとここでもたくさんの人たちが休んでいる。ここまで登れば前方にトンガリ山と山形神室が見えてくる。久しぶりなので眺める風景が新鮮だった。こんなに大きなアップダウンがあったのだろうかと思うほど記憶が曖昧になっていた。
紅葉を愛でながらの快適な稜線歩きは楽しい。特に宮城県側の方が紅葉の進み具合は早いように感じた。時々ハッとするような赤色はカエデのようだった。左手には山形市内が一望で、右手を見ればやがて神室岳が忽然と現れる。前回はたぶん展望が良くなかったのだろう。別名神室岳と呼ばれる仙台神室はまるで大きな岩の固まりのようでもあり、おおきな腰掛けを思わせる台地状の山であった。あそこを登るのかと思うと気が遠くなるようであった。
トンガリ山を過ぎると急に登山者が少なくなった。おかげで渋滞にあうこともなく自分のペースで歩いてゆけた。鞍部から登り返すとまもなく山形神室に着く。山頂から少しくだったところが仙台神室と清水峠との分岐点だ。ここからはさらに登山者は少なくなり数えるほどだ。早くも戻ってくる人もいて、聞いてみたら朝7時半に笹谷峠を出発したのだという。鞍部の平坦地はダンゴ平と呼ばれていて湿地帯でもあるのだろうか。まもなくすると仙台神室の急坂の取り付きに着く。
胸突き八丁のような急斜面はきついなどというものではなかった。ロープもないのでよほど注意して登らないといけないようだ。さらに斜面は濡れていて登山靴のフリクションも効かない。周りの灌木をつかみながら体を引き上げなければならなかった。だいぶ汗を搾り取られたがそれだけに登り切った爽快感はすがすがしいものがあった。
山頂では予想外にたくさんの登山者が休んでいた。寒さは相変わらずで、みんな防寒着を着ての休憩であった。山頂からは宮城県の名山、大東岳がすぐ目前に聳えていた。その後方には面白山がありさらに奥を眺めれば黒伏山や船形山も見渡せる。遠方には新庄の神室連峰と枚挙にいとまがない。僕もここでは展望を楽しみながらのんびり昼食をとることにした。久しぶりに味わう山頂はとっても味わい深いものがあった。このところ調子が悪かっただけにここまで歩き通せたことに安心感のようなものが湧いてくるようだった。上空には秋空らしい鱗雲がまばらに浮かんでいる。時々日射しが遮られると肌寒い風が下から吹き上がってくるようだった。しかし雨が降らないだけ感謝しなければならない。久しぶりに爽やかな秋の一日が過ぎようとしていた。
トンガリ山と山形神室(右) |
ダンゴ平から仙台神室を仰ぐ |
仙台神室と大東岳(左奥) |
ダンゴ平から山形神室を仰ぐ |
清水峠分岐点 |
トンガリ山を振り返る |