山 行 記 録

【平成21年6月28日/硯石〜不忘山〜南屏風岳〜屏風岳



タカネバラ



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】連峰
【山名と標高】不忘山1705.3m、南屏風岳1810m、屏風岳1817.1m
【地形図】(2.5万)蔵王山、(20万)仙台
【天候】晴れ
【参考タイム】
硯石7:00〜不忘ノ碑〜不忘山9:00〜南屏風岳9:30〜屏風岳10:00-10:20〜南屏風岳〜不忘山11:00〜硯石12:40

【概要】
 前日に続いて今日は七ケ宿町から蔵王連峰の計画である。昨日は手軽に味わえる高山の涼しさとお花畑にはまってしまい、今日も蔵王にこだわってみようというわけである。まあそんなことは別として、ネットやメーリングリストからは花の便りが次々と聞こえてくるようになって、気が気でならなかったというところであった。
 
 七ケ宿町の硯石から登るのは久しぶりだ。調べてみたら3年前の紅葉の時期に登っていた。つい先日のようだったが登山口までの行程もほとんど忘れているのだから情けない。ナビに案内されながらようやく登山口へとたどりつくことができた。登山口は南蔵王キャンプ場だったが5年ほど前に閉鎖されてしまい人気のない静けさだけが漂っていた。車はまだ1台も見あたらなかった。

 登山口周辺はよく整備されたカラマツ林となっている。ここにいると林間学校という懐かしい言葉が浮かんでくるようでもあった。キャンプ場を抜けて登山道に入るとあたりは急に薄暗くなる。多くのカラマツが日射しを遮っているのでひんやりとした感じだ。今日も昨日以上の気温となるらしく真夏日が予想されているが、ここにくるとそんなことを忘れそうな雰囲気が漂っていた。

緩やかな山道も次第に勾配が増してゆく。それはほとんど無駄のない登りといってもよく小気味よいほどだ。今日は不忘山を越えて屏風岳までを予定しているのだが、距離もある上に単純な標高差だけでも1100m近くある。普段は何でもなさそうな高度差も最近の体調不良気味ではかなりの苦行に思えてくるようであった。

 樹林帯は次第にカラマツとミズナラが混じるようになった。そして灌木帯を抜け出すと大きな岩が目立つガレ場となる。急に見晴らしがきくようになるとたちまち日射しが背中や後頭部にジリジリと降り注いだ。昨日は寒いほどの風に助けられたが今日はほとんど風がないのでたちまち汗が流れた。まだ標高は1000mほどなのでもう少しがんばろうかと水分を補給しながら急坂を上り続けた。

 標高が1500mほどにもなるとぐっと気温の違いを感じるようになる。吹く風は爽やかで、高原地帯のありがたさがしみじみと身にしみてくるようだ。振り返ると七ケ宿町や長老湖などはもちろん蔵王山麓の様々な山並みが一望となった。ガレ場が連続するようになると不忘山も目前だ。そんなとき、色鮮やかなタカネバラが道の片隅に咲いているのをみつけて、山の雰囲気は一変した。無機質な岩場が続いていただけに、突然のタカネバラの出現にはまさに感動する思いがした。以前もこの不忘山でタカネバラを見つけたことがあったのだが、この不忘山がタカネバラの貴重な自生地だったことをいままですっかり忘れていたのだ。この花は山の奥深いところでしか出会えない高貴な花でもありまさしく高嶺の花なのである。咲く時期も場所も限られる花ということを思えば今日の偶然に感謝しなければならないようである。その後は登山道の両側に次々と現れるようになり、まさしく群生の様相を呈していたのだった。

 不忘山には2時間で到着した。まだ山頂に登山者は二人だけしかいないようだ。まだ9時という時間帯なので登山者はこれからなのだろう。振り返ると白石側からも次々と登山者が登ってくるようであった。今日はまだ前方にそびえ立つ屏風岳を往復してこなければならない。その手前の南屏風岳までも距離は結構ありそうである。不忘山ではほとんど休まずに南屏風岳へと向かった。

 不忘山からはヤセ尾根の両側に沢が切り込んでいて急峻な岩場となっている。この縦走路では一番の要注意区間だ。山頂からもったいないほどの高度差を一気に下り、鞍部からは再び急坂の登りとなる。この区間ではハクサンイチゲやミヤマキンポウゲ、ハクサンチドリ、ミヤマウスユキソウなどが目立った。ここでは徐々に多くの登山者と行き交うようになった。みんな刈田峠からだというからきっと早立ちしてきたのだろう。行き交う人達はときどき立ち止まりながら、僕と同様に高山植物を楽しんでいるようであった。ここでもタカネバラが疎らに咲いていて、以前はここで出会っていたのを思い出した。

 南屏風岳でも大勢の登山者が休んでいた。ここから屏風岳へはほとんど登りらしい登りがない稜線漫歩となる。この区間を歩くのも久しぶりのような気がした。左手には広々とした山並みが見渡せるのだが、右手は切り立った断崖となっているところだ。この急斜面にはまだ残雪が張り付いていた。涼しい風が吹き渡る緩やかな稜線歩きは山の楽しさをあらためて思い出してくれるようだ。前方には昨日登った刈田岳や熊野岳が見えている。すばらしい展望である。まもなく水引入道への分岐点があり、そこから屏風岳まではわずかだった。この屏風岳には1年ぶりとなる。ここにはりっぱな標柱とともに蔵王連峰唯一の一等三角点が設置されているところだ。少し潅木があるとはいえ展望は抜群である。不忘山からはちょうど1時間だったが両足は結構疲れていた。ここはマラソンでいえば折り返し点。両足の屈伸などをしながらしばらく小休止をとることにした。

 不忘山には屏風岳から2時間で戻った。往路も復路も同じ時間がかかっている。意外とかかったようでもあり写真をかなり撮影しながらなので短いといえば短いのだろうか。結局見た目ほどの距離はないようであった。ここからは硯石へと下るだけである。もう行動食もいらないので残っていたおにぎりなどを全部食べることにした。

 不忘山を後にするとこれから登ってくる大勢の登山者に出会った。下るに従って気温が上昇してゆくのが実感として伝わってくる。歩いているといくらか風を感じるのだが、少し立ち止まると真夏の日射しが容赦なく降り注いだ。ガレ場が終わればようやくこの日射しから逃れることができるようになった。やはり木陰はいいものだ。道も岩場から土の山道となり、そのフカフカするような柔らかさにホッとするようだった。そしてミズナラ林になると日射しはほとんど届かなくなる。昼でも薄暗い樹林帯はこの時期なんとありがたいことだろう。2日続けての蔵王連峰だったが、おかげでバテることもなく登山口まで戻れそうである。今日は写真に撮りきれないほどの花々に出会い、そして気持ちが癒された一日であった。


南蔵王登山口


ハクサンチドリ


サラサドウダン


ミネウスユキソウ


マルバシモツケ


ミヤマキンポウゲ


ニガナ


ウラジロヨウラク


不忘山山頂


不忘山から南屏風岳と屏風岳(右)


ハクサンイチゲ


不忘山を振り返る


ハクサンイチゲと不忘山


不忘山へ向かう登山者


コケモモ


南屏風岳


チングルマと遠方に熊野岳


イワハゼ


屏風岳山頂


コバイケイソウ


ミツバオウレン


ミヤマキンバイ


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