5月も中旬となると山スキーも終盤が近い。それでも今週末集まったメンバーは5名。大台野の放牧場へと続く道路も融雪が進み車も宮様コースの入口まで入ることができた。ナンバーをみると県外からの山スキーヤーも結構いるようだった。見上げると七高山の山頂まで雪がつながっているのがはっきりとわかった。心配していた天候もとりあえず持ちそうな様子である。今日も暑くなりそうなのをみて念入りにお化粧を行った。もちろん手袋なども不要であった。
今年は雪が豊富なので宮様コースの正規ルートから登り始めた。それでも雪がつながっていないところもありそうなので初めは沢沿いに高度を上げていった。防火帯の切り開き付近の積雪は例年並のようだ。芽吹き始めたブナ林が美しく、この時期ならではの風景に心が安らぐようである。快適のシール登行がしばらく続いた。
眼下に滝の小屋が見えるようになるとマタフリ沢源頭部だ。ここからは急坂の連続となる。ところがここにきて僕のビンディングにアクシデントが発生する。あの堅いスチール製のケーブルが切断してしまったのである。まだまだ登りも序の口なのでガッカリするばかりだった。みんなには先に行ってもらいとりあえず細紐で応急処置を行いながら登ることにした。どうも原因は金属疲労による切断のようでもあった。
伏拝岳へのルートを見送り七高山へとトラバースしてゆくと広大な斜面が現れる。僕たちが一番乗りと思ったらすでにシュプールを刻んでいる単独の先客がいた。どうやら祓川から登ってきて何回か滑りを楽しんでいるようであった。すでに七高山の一角は頭上に見えているのになかなか近づかない。すでに3時間をとっくにすぎていて体もアップアップの状態が続いていた。この湯ノ台コースは標高差1400mとそれほどではないのだが距離が予想以上に長い。高度が上がるに従って風も強くなり途中でジャケットを羽織った。
結局いつものように4時間ほどの所用時間で七高山に到着した。山頂は雪煙が舞うほどの強風が吹いていた。僕は細紐ケーブルでとりありず登り切ったことで一安心だった。澄んだ青空と降雪直後の新雪はまさしくまぶしいほどであった。
山頂からは新山や大物忌神社が見えた。先日来たのはいつのことだったろう。当然だったが前回よりもまた一段と雪解けが進んだようでもあった。遠方を見渡すと唐獅子避難小屋の赤い屋根がある。今シーズンはまだ百宅コースが残っているのでついつい気になるものなのだ。いつも滑っているルートを目で追ってみたりしながら、鳥海山の裾野に広がる雄大な景色をしばらく楽しんだ。しかしそんな時間もわずかしかなかった。思い思いの時間に耽っていると急速にガスが吹き上がってきたのである。それはたちまち周囲を覆い尽くしてしまい、視界はたちまちのうちに無くなってしまった。天候が崩れるのは夕方からと踏んでいただけにこれは予想外の天候の悪化であった。これではたまりません。急いでシールをはがして滑降にうつるしかありません。逃げるが勝ちです。
寒気を伴った強風にホワイトアウトでは長居をしている暇はなかった。視界が効くところまでは横滑りなどで高度を下げて行った。ガスの中では凹凸などがわからないのでまるで船酔いのような状態が続いた。おかげで何でもないところで転倒してしまう始末であった。300mほど下るとようやく視界が戻った。それでも強風は相変わらず。しかたがない。滝の小屋で休憩をとることにして一気に小屋へと下ることにした。僕の細紐も何とか持ってくれているようでテレマークでもアルペンでもターンそのものはまだ大丈夫である。仲間からは高価なビンディングなどはいらないねえ、などと盛んに揶揄される始末だ。天候は下り坂だったがこれから登って行く人達もまだまだいるようであった。
滝の小屋はすっかり雪解けが進んでいたがそれでもまだ残雪は多い方であった。僕たちは小屋の入口付近にザックをおろしてしばし昼食とする。今日はこの小屋泊りの人達もいるのだろう。これから小屋を出て山頂をめざす団体達も結構いるようであった。
滝の小屋からは登ってきたルートを忠実に下ってゆくだけだった。ツリーランをしばらく楽しみながらのんびりと駐車場へと向かった。結局、車の目の前までスキーで滑って行くことができて、積雪は少ないなりに5月の鳥海山を満喫した一日が終わった。
新緑のシャワー |
宮様コースです |
登りでビンディングが壊れてしまいました |
山頂直下(眼下は百宅コース) |
七高山に到着です! |
滝の小屋で休憩 |