山 行 記 録

【平成21年2月11日/飯豊連峰 大峠トンネル〜日中飯森山



飯森山目前



【メンバー】5名(柴田、上野、神田、阿部兄、蒲生)※西川山岳会
【山行形態】山スキー、冬山装備、日帰り
【山域】飯豊連峰
【山名と標高】飯森山(いいもりやま) 1,595m
【地形図】(2.5万)飯森山、(20万)新潟
【天候】晴れ
【参考タイム】
大峠トンネル7:00(670m)〜ヤセ尾根9:20〜鉢伏山コル〜飯森山11:00-45〜ヤセ尾根〜大峠トンネル13:50

【概要】
 白い飯を盛ったような山ということから転じて山名が名付けられたという飯森山。飯豊連峰と吾妻連峰の間に聳える地味な山ではあるが、その昔には会津盆地から眺めると真っ白い飯森山と飯豊山が連なってみえるために、この飯森山が飯豊連峰の本峰とも呼ばれていた時期があったのだという。すぐ近くには飯豊連峰から派生する尾根上の名峰である栂峰がある。

 大峠トンネルに集合したのは全部で5名。意外にも仕事のはずだった柴田氏まで現れたのをみてみんな唖然とする。飯森山の山頂へ仕事なのだという冗談が飛び出して一同大笑いとなる。天候は願ってもない青空が早朝から広がっていた。豪雪で名高い飯豊連峰の一角の山だけあって、このツアーコースはスキー滑走はもちろんのこと、山頂直下には知る人ぞ知る絶景の広がる桃源郷のようなブナ林もある。いわば冬山限定ともいえる最高のロケーションが楽しめるのである。僕は5年ぶりに訪れるのだが阿部さんも3回経験済みとのことで、今日はコース取りの心配もなさそうだった。このコースの取り付きが大峠トンネルというのもいい。つまりここは吾妻連峰と飯豊連峰を結ぶ稜線上の一角に位置しているのである。

 コースは最初から急斜面のシール登高から始まる。標高差は1000m近いことから長丁場となるのでゆっくりと登ろう。しかし、けっこうきつい登りのためにたちまち汗がほとばしり、メンバーもつぎつぎとジャケットを脱ぎだした。登るにつれて左手には遠く日中ダムが望めるようになる。振り返れば磐梯山や吾妻連峰も見渡せた。右手には深い飯森沢をはさみんで飯森山も見えてくるから登っていても楽しいばかりだった。1462mピークに連なる急斜面を登り始めると、やがて右手奥に真っ白い飯森山が望めるようになる。全山無木立でほとんど樹木も見あたらないこの神々しいまでの姿には、まるで飯豊連峰の盟主の風格さえ感じられる。昔の村人達が見誤ったのも無理はない。やがて登り切った1462m峰手前のヤセ尾根に登り着き少し小休止をとる。この辺りまで登ると樹林も疎らになり、周囲の山々もほとんど見渡せるようになった。ここは見晴らしがよく、休んでいても実に気持ちの良い場所であった。

 ヤセ尾根からは正面のピークを卷きながら右手にトラバースとなる。雪が深ければ雪崩にも注意が必要な箇所でもある。沢の源頭部をつめると左手には雪庇を抱いた鉢伏山の南東斜面が現れた。この輝くばかりの鉢伏山の真っ白い斜面には圧倒されて声も出ない。右手にはブナ林の平坦地が見える。前回はここをテン場としたところで、桃源郷のような場所とはまさしくこんなところをいうのだろう。

 鉢伏山のトラバースは、急斜面が少し崩れている箇所もあって、少し緊張するところだが、ここもコンディションがよければ滑降の対象にもなるところだ。振り返ってみればこの辺りはどこでも滑降コースを取れるようにも思える。まもなく1472mピークの飯森山と鉢伏山のコルに到着する。コルとはいってもここは飯豊連峰の展望台ともいえるピークである。今日の飯豊連峰は大日岳から飯豊本山、そして鉾立峰や杁差岳までの山並みが全て見渡せるうえに、稜線は眩しいほどの輝きを見せている。コルから登り返すと前方には下りの滑降が楽しみな無木立の斜面が山頂へと続いていた。最後はきつい登りだがもうひとがんばり。飯森山は西と東にピークを持つ双耳峰となっていて、登り切った西峰から飯森山の山頂までの距離はわずかだ。東峰までの県境稜線は波打つようなナイフリッジとなっていて少し緊張する。ガリガリのアイスバーンを慎重に登り、飯森山に立つと待望の栂峰がようやく全貌を現した。

 飯森山の山頂にはちょうど4時間で到着した。ラッセルらしいラッセルもなかったので予定よりも1時間は早めに着いたようだった。山頂からは文字どおり360度の大展望だった。西には飯豊連峰、北を見れば月山や朝日連峰の山並み。そして蔵王連峰や吾妻連峰が右手にぐるっと飯森山を取りまいている。山並みはその細部までが手に取るようにわかるのである。栂峰の左奥には白鷹山が見える。するとその左手に広がる盆地は長井市や白鷹町であろう。僕が住んでいる平野部までが見えるのだからこれはうれしいものだった。

 無風快晴ということもあって昼食は山頂でとることになった。大展望をつまみにしながらの食事は最高の贅沢を感じさせた。ここでの小一時間ほどの休憩は時間の経つのも忘れるほどであった。西峰に戻ってシールをはずせばいよいよ待望の滑降となる。飯豊連峰をバックにしながらの滑降はまさしくダイナミックそのものである。雪も適度に柔らかくてみんな歓声をあげながら急斜面を一気に下って行く。ここではカメラの撮影もかなり忙しい。一気にコルまで下ってしまうとそこからは元の道をトラバース気味に下って行く。鉢伏山直下からは何度も振り返りながらヤセ尾根へと向かった。あらためてこのロケーションの素晴らしさを思う時、日帰りでこのまま下ってしまうのが妙につらかったのだ。僕たちは後ろ髪を引かれる思いでこの桃源郷を後にしなければならなかった。

 途中のヤセ尾根まできたところで大休止をとり疲れた足を休めた。行程の半分を下ってきたとはいえ、ここからはブナ林のツリーランとなり、まだ高度差にして700mも楽しめるのである。僕たちは満ち足りた思いで休憩時間を過ごした。さて、ヤセ尾根からのルートは飯森沢沿いに下ってみようか。ここは樹林帯なので雪も柔らかくフカフカのパウダー斜面が広がっていた。スキーを自在に操り、右に左へと自由に下って行く楽しさはバックカントリーの極みでもあろうか。おおきな斜面を僕たちは自由にくだったいった。その楽しい滑降も国道121号に架かる赤い橋が木々の間からチラチラと見えてくるとゴールも近い。最後の急斜面は半分ザラメのようになっていて、まるで春山を感じさせるようだった。ここもみんな快哉をあげながら下った。国道を走るトラックの音が聞こえると大峠トンネルは目前だった。


急坂から始まる


間から飯森山が見える


ヤセ尾根に到着


桃源郷に着く


桃源郷


トラバース


最後のひと登り


飯豊連峰を眺めながら


鉢伏山をバックに


きつい登り


飯森山が目前


ちょっとこわい稜線


栂峰がようやく望める


山頂で憩う


滑降直前(背景は吾妻連峰)


飯豊をバックに


最高の気分


いざ滑降!


鉢伏山めざして


飯豊をバックに


鉢伏山めざして


飯豊をバックに


山頂からの滑降


お疲れさまでした(大峠トンネル)


コース概要


inserted by FC2 system