山 行 記 録

【平成21年1月18日/蔵王連峰 坊平〜熊野岳〜中丸山〜猿倉



中丸山へ



【メンバー】6名(上野、クサナギ、神田、大場、菊池、蒲生)※西川山岳会
【山域】蔵王連峰
【山名と標高】熊野岳1841m、中丸山 1562m
【地形図 2.5万、20万】蔵王山、仙台
【天候】晴れ(快晴)
【温泉】赤湯温泉「赤湯元湯」200円
【参考タイム】
リフト終点9:00〜熊野岳避難小屋10:35〜コル11:30-12:10〜中丸山12:20〜猿倉駐車地点13:45(718m)
猿倉駐車地点=(車)=ライザスキー場駐車場

【概要】
 今回の中丸山ツアーは熊野岳から西側に伸びる尾根を下るもので、終点が蔵王ラインまでという結構なロングコースとなる。一般の人にはあまり知られていな いこのツアーコースは、ルート集などにも掲載されていないとっておきのコースでもある。しかし、悪天候の場合には要注意だ。リフトを使えば熊野岳までも楽 々と登れるのだが、いったん天候が崩れれば戻ることも困難と思った方がよい。中丸山などで方角を見失えば生還することさえ不可能となる。

 集合は猿倉スキー場の駐車場で、すぐ近くが下山予定の蔵王ラインである。集まったメンバーは6名。下山予定地点に車を2台配置し、全員でライザスキー場に向かった。天候は朝から信じられないような快晴の空模様が広がっていた。

 ライザスキー場は閑散としていて静かなのはよいのだが、このままでスキー場は大丈夫なのだろうかとこちらが 心配になるほどだった。一番リフトでリフトトップまでくればそこからはシール登高の始まりとなる。同じ山岳会によるアイスクライミングチームがほぼ同時に 仙人沢へと向かっていった。積雪は驚くほど多く、樹氷も完璧にできあがっている。その景観はまさしくモンスターであった。穏やかな気温に包まれてこの樹氷 原地帯を歩くのは楽しいばかりである。平地では氷点下12度まで冷え込んだのだが、ここ蔵王での気温は意外と高かった。ジャケットは最初から脱いでいたの だが、それでも汗が流れてきてしまい最後は下着だけとなる。廃線リフト小屋で小休止後はショートカットで熊野岳へとめざした。

 馬ノ背付近まできたところで「東北アルパインスキー」の坂野氏に出会った。坂野氏はリフトも使わずに刈田岳 へと登り、早くも濁沢源頭部を一本滑ってきたのだというから驚くばかりである。いったいこの人の体力や筋肉はどうなっているのだろう。せっかくなので僕た ちのツアーにも誘ったのだが、丸山沢を滑るからとあっさりと振られてしまい、坂野さんとは熊野岳直下で別れた。

 熊野岳へは1時間半ほどで到着した。山頂からは見渡す限りの展望が広がっていた。ここまで薄着で歩いてきた が山頂の風はさすがに冷たくて完全装備に身を固めた。熊野神社は巨大なシュカブラと化していて、その形から元の姿を想像するはできないほどだ。それでも心 配していた天候は一向に崩れる気配はなさそうである。紺碧の青空には雲ひとつ見当たらない。おまけに無風といってもよさそうなほど穏やかな山頂だった。厳 冬期において今日のような好天は1カ月に1日あるかないかだろうと思う。西を見れば飯豊連峰、北方には朝日連峰や月山の真っ白い稜線が長く伸びていた。さ らに東側には雁戸山や大東岳などの山並みが連なっていた。

 さて昼食はひとまずお預けとし、中丸山直下まではお楽しみの滑降の始まりだ。山頂付近こそ堅いシュカブラの塊だが、雪面が柔らかくなるとみんな思い思い に斜面をすべってゆく。ここはまさしく自然が作り上げたゲレンデのようでもある。熊野岳の滑降が終わると痩せた尾根上へと乗り上げて行く。いつもは雪質が いろいろ変化してけっこう難儀する区間だが、今回は豊富な積雪に助けられて難なくルートへと導かれて行く。不思議なことに今年は例年よりもはるかに雪が多 いという印象である。推進滑降気味に稜線を滑って行くと、たちまち中丸山直下へと降り立った。

 中丸山直下の雪原に雪のテーブルをこしらえ、ザックをおろせばなにはともあれコーラなどで乾杯となる。目の前にはバージンスノーを身にまとった中丸山が ある。樹氷がまばらにあるだけの一面の銀世界は夢をみているようなロケーションだ。人の気配は微塵もなく静寂だけが支配する世界。知らず知らず心が高揚す るような不思議な場所でもある。こんなところにテントを張ってしばらく滞在できたらどんなに幸福だろうか、といった思いが沸々と湧いてくるようだった。

 中丸山までは短い登りながらもシールを貼って山頂へむかった。といっても登りは10分程度なので登りなどといえるほどのものでもない。それでいて中丸山 の山頂からは360度の展望が楽しめるところだ。対岸の仙人沢を眺めるとアイスクライミングを楽しんでいる山岳会の仲間が小さく見えた。さてシールをはず せばいよいよ猿倉に向けての滑降開始。この開放感はここにたどり着いたものだけが味わえる特権であろう。ビーコンチェックを完了すればどうぞご自由にの世 界へと突入だ。初めは雪質の重さに足を取られて転倒したりしたが、その後は快適なツリーランとなる。木立はすこし密集気味だが、今日は予想外の積雪もあっ て、スキーには適度に制動がかかり操作は自由自在である。あまりに快適なものだからいつも休憩している1246m地点を僅かに通り過ぎてしまう”アクシデ ント”まで発生した。これもみな良質のパウダーのおかげである。いつになく下るスピードが速すぎるのである。

 小休止してからなおも尾根の滑走が続いた。やがて前方に松林が見えてくるとそこからは林道へと降りて行く。林道といっても地形図には無く道形がなんとか わかるだけである。あとはこの道沿いに滑って行けば蔵王ラインだ。ところどころに横たわる倒木やブッシュの間を滑ってゆく。この区間もスキーはよく走っ た。最後は蔵王ラインへと滑り込んで中丸山ツアーが終わる。行動時間はおよそ4時間45分。去年は同じコースを7時間30分もかかっているのである。これ もみな豊富な積雪と良質の雪質のせいだろう。いかに快適に滑ってきたかの証左のような気がした。いずれにしろ無事に終わってこその山スキー。厳冬期の蔵王 連峰を目一杯に楽しんだ一日が終わろうとしていた。


樹氷原地帯をゆく


お田ノ神避難小屋と熊野岳


樹氷


熊野岳へ


熊野神社は巨大なシュカブラ


雁戸山(熊野岳から)


神社の前でパチリ


中丸山直下で大休止


中丸山山頂(仙人沢をながめています)


至福の時


至福の時

至福の時


至福の時


至福の時


至福の時


お疲れさまでした


コース概要


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