山 行 記 録

【平成21年1月3日/南蔵王連峰 澄川〜聖山平〜刈田峠避難小屋〜前山】




駐車地点から歩き始める



【メンバー】4名(神田、花輪、上野、蒲生)
【山行形態】山スキー、冬山装備、日帰り
【山域】南蔵王連峰
【山名と標高】前山1,684m
【地形図】(2.5万)蔵王山、(20万)仙台
【天候】曇り時々雪(稜線は風雪)
【行程と参考コースタイム】
すみかわスノーパーク駐車場8:30〜聖山平9:30〜井戸沢10:20〜金吹沢11:20〜刈田峠避難小屋11:40-12:50〜前山13:30〜峠の沢14:20〜金吹沢15:10〜井戸沢渡渉点15:40〜観光ツアーコース合流点16:10〜駐車場16:40

【概要】
 今日は南蔵王連峰の前山ツアー。状況次第では杉ガ峰をめざすコースだ。これは「岳人」(東京新聞出版局)2008年12月号に「聖山平〜前山」として紹 介されたツアーコースである。岳人では初心者コースと紹介されてはいるが冬の蔵王は侮れないものがある。悪天候の場合はたちまち上級者向けとなるので要注 意だ。状況によっては前山の山頂を踏むことさえ困難である。

 今日の予報では冬型が緩んで一応快復傾向とある。とはいっても朝からあまり芳しくはなかった。昨日も刈田岳をめざしたという神田さんたちは、あまりに風 が強くて途中で断念しているが、今日はその時よりも天候が悪いというのだから冬山の予報はあまり当てにはならない。今回のコースでは稜線直下まで樹林帯が 続いているのがわかっているので、少々風が強くてもなんとかなるだろうと「すみかわスノーパーク」に集合した。

 初めてのコースとはいいものだ。期待感でワクワクするようである。とりあえずリフト券売場で登山計画書を提出。リフト運転開始まではまだまだ時間があり そうなので今日はリフトを使わずに全て歩くことにした。当然ながらゲレンデにもスキー場周辺にも人はいない。前方は刈田岳の方角だが暗い雪雲がどっしりと 居座っているようだった。神田さんによればリフト3本分とはいっても所要1時間ぐらいだという。この登りでは意外と風にあたることもなく逆に暑いくらい だった。リフトトップにはちょうど1時間で着いた。こんなに短時間で澄むのであれば次回からもリフトの使用はやめにしようかと思われるほどである。体も温 まってほどよい準備運動ともいえそうだった。

 ゲレンデでは風雪が激しさを増していた。しかし聖山平の樹林帯に入ると風はぱったりと無くなった。アオモリドドマツが風を遮ってくれるので、いたって穏 やかな歩きがしばらく続く。この辺りはとても雰囲気が良いところで、特に今日のような風の強い日には樹林帯に抱かれているような心地よさがあった。

 前山に向かうにはまず井戸沢を渡渉しなければならない。ところがいくつもの枝沢があって平坦部に出るまではけっこう難儀しなければならなかった。部分的 には沢がまだ埋まっていない箇所もあるから要注意だった。聖山平への急坂では2回目の休憩をとった。今日は天候があまりよくないだけにこうした休憩は必須 ともいえそうだった。僕は悪天候の場合には休憩もとらずに歩きすぎてしまう傾向がある。今日は上野氏が的確に休憩の指示を出してくれるのでありがたかっ た。

 平坦な聖山平とはいっても少しずつだが高度が上がって行く。次第にアオモリトドマツの背丈も低くなり、それに比例するかのように風も強まってくるよう だった。金吹沢渡渉点はほとんど平坦になっている。ここはちょうど源頭部のようだった。対岸の尾根をひと登りすると刈田峠避難小屋も近い。当初は小屋に立 ち寄る予定はなかった。しかし女性陣がこの避難小屋を知っていて、さらに2階建てだというので雪に埋もれていることはないだろうという。天候が快復する兆 しもないので小屋をみつけて休憩をとることにした。

 初めはこの避難小屋を容易には探せなかった。冬山にきて初めての山小屋を探すのは並大抵ではない。ほとんど諦めかけていた時、女性陣が見つけてくれた。 なんと小屋の壁面は白色で、これでは積雪期に見つけることはほとんど不可能に近いのではないか。そんなことをブツブツぼやきながらも見つけた喜びはやはり 大きい。避難小屋はプレハブ造りのような山小屋で2階部分の冬期入口から入るようだった。僕たちは雪から入口を掘り出して内部に入った。

 避難小屋は畳敷きやストーブもあって快適な山小屋だった。さっそくこのストーブに火をいれて昼食となる。外はますます風雪が強まっていた。こんな時ほど 山小屋の有り難さを思わずにはいられない。小屋の内と外では天国と地獄ほどの違いがあるのだ。僕たちはこの山小屋のあまりの快適さについ時間の経つのを忘 れていた。気づいたときには1時間以上も経っていた。

 小屋を出てみると休憩前よりも天候は悪化していた。前山の山頂まで距離は約600m。高度差は120mほどしかない。ほとんど山頂直下といっても良さそ うだが、今日の天候では容易ではなさそうだ。広い尾根だがなるべく稜線の東側を登ることに努める。西側からは容赦のないブリザードが僕たちに襲いかかって きた。

 前山の山頂には小屋から40分もかかって到着した。こんな天候でも山頂を踏んだことで小さな達成感に浸る。ひどい状況下だったがメンバーの体調はよさそ うだ。神田さんは蔵王の悪天候にもすっかり慣れてしまったのか余裕の表情さえ見せている。しかし気温は氷点下10度近いこのブリザードである。体感温度は いったい何度になっているのか見当もつかないほどだ。僕のまゆげにはエビのしっぽが張り付いていて重い。花輪さんのゴーグルもとっくに凍り付いているとい う。これでは杉ガ峰どころではなかった。ブリザードの吹き荒ぶ山頂に長居は無用だった。早めに樹林帯に逃げ込もう。シールをはがし急いで滑降にうつること にした。
 
 前山の東斜面はフカフカのパウダーだった。勾配もほどよい感じであり、少し下ると樹林帯に入って行けそうだった。稜線の強風は少し下ると極端に弱まっ た。滑降は快適だった。樹林帯には適度な間隔で木立があり、予想外に快適なツリーランを楽しむことが出来たのだ。そして悪天候だけに雪質は最高のコンディ ションである。下れば下るほど元のコースに戻るには難しいのはわかっていたが、今日はここまでみんな苦労して登ってきたのだ。僕だって少しのご褒美は欲し い。きっとみんなも同じ思いだろう。快適な斜面が視界に入るととりあえず目一杯滑降を楽しもうと思った。

 さて、いくらなんでも下り過ぎてしまえば戻るのは至難の技となる。そろそろ聖山平に向かわなければならなかった。スキーでしばらくトラバースを試みた。 しかし次々と枝沢がでてきたため、適当なところでシールを貼ることにした。シールさえ貼ればもうこっちのものだ。何しろ魔法のシールなのである。ここから は少し尾根を登り返した。まもなく大きな峠ノ沢が立ちふさがったが、ここは雪崩だけが心配なので一人ずつ注意して対岸に渡った。

 途中で一服をはさむと心が落ち着いてくる。少しずつ気持ちにも余裕が出てきたようだった。再び大きな金吹沢の渡渉点が現れたが、この渡渉でようやく聖山 平に戻れるのがわかった。あとは僕たちの往路の踏跡を見つかればよいだけだった。見つからなくともかまわないのだが、暗くなった場合のためにはやはりあっ たほうがはるかに心強い。今日の風雪で踏跡はほとんど消えてしまっていたが、樹林帯が深くなるとトレースも次第にはっきりとしてくる。僕たちの周りには少 しずつ夕闇が忍び寄っていた。

 まもなく踏跡をみつけるとそこからは足どりも軽くなった。風雪はだいぶ弱まっていた。遠くには少し明るみも見えるようだ。きっと向こう側はスキー場に違 いないと思った。井戸沢の渡渉点を過ぎるとスキー場も近い。この辺りになると登りで苦労させられた枝沢の通過にふたたび時間をとられた。スキー場の一角に 飛び出すとようやくシールも無用となる。シールをはがす作業には心が弾むようだった。すでに4時を過ぎているのだ。冬至を過ぎたばかりではまもなく日没だ ろうと思った。

 観光ツアーコースの滑降は快適だった。営業はとっくに終わったのか、スキー場の音楽もざわめきも聞こえなかった。見渡してもスキー場には一人も見当たら なくなっていた。観光コースからはリフト下に入った。スキー場は僕たち4人の貸し切りであった。リフト下もスキーは快適に走った。はたから見れば僕たちの 姿は異様だったに違いない。なにしろ薄暗くなったスキー場を、大きなザックを背負った男女がスプレーを巻き上げながらビュンビュンと飛び交っているのであ る。スキー場に戻ったときには4時半を過ぎていた。下山後、僕はスキー場の切符売り場に立ち寄り下山の報告を済ませた。スキー場の営業開始前から営業終了 後まで、8時間以上も楽しんだ今日の前山ツアーが終わった。


樹林帯へ分け入ります


稜線は風雪でも樹林帯は穏やか


やっと見つけた!


刈田峠避難小屋


憩いのひとときは至福のひとときです

休憩を終えて前山へ(刈田峠避難小屋)


前山の山頂でピース(余裕です)


前山からの滑降


ツリーランを楽しむ


雪のコンディションは最高です


今回のルート軌跡

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