山 行 記 録

【平成20年12月29日/吾妻連峰 天元台〜西吾妻〜若女平〜白布温泉



若女平から西吾妻を仰ぐ



【メンバー】単独
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】吾妻連峰
【山名と標高】西吾妻山2035m
【地形図 1/25000】天元台、吾妻山、白布温泉
【天候】晴れ
【参考タイム】
北望台10:45〜梵天岩11:40〜西吾妻小屋12:10〜若女平13:00-13:20〜強清水(ヤセ尾根)13:40〜若女平登山口14:10〜駐車場14:30

【概要】
 今日は昨日の悪天候がまるでウソのように朝から快晴の空が広がった。とはいっても昨日の疲れがなかなかとれず、自宅をでるのがだいぶ遅くなってしまった。天元台からはいつものようにゴンドラとリフトを乗り継いで北望台へ向かった。リフトに乗っていると西風がビシビシと頬を打つ。空は快晴なのに風は異常なほどの冷たさだ。昨日の寒気がまだ吾妻連峰一帯に居座っているようだった。

 北望台から樹林帯に踏み込むと1本のトレースが西吾妻方面へ続いていた。良く見るとそれはスキーではなくスノーシューによる登山者のものだった。ストック跡は2人分を示している。トレースは歩き始めてからだいぶ時間が経過しているようだった。昨日の激ラッセルからみればそれほどの深さはなかった。しかしこの豪雪と好天でも山スキーに入っている人が全くいないというのが不思議だった。

 中大巓の樹林帯を抜け出せばそこは広大な樹氷原地帯だ。中大巓から梵天岩、西吾妻山へと連なる山並みは形容しがたいほどの穏やかさに満ち溢れている。こんな光景をながめさせたら、誰しも一発でバックカントリーの魅力に取り付かれるだろうと思わずにはいられない。スノーシューのトレースは最初ありがたく利用させてもらったが、急斜面を直登するのが結構つらくて、僕は途中からトレースを逸れ、ジグを切りながら梵天岩へと登った。

 梵天岩までくると完璧な樹氷がすでにできあがっていた。この樹氷の完成により西吾妻山一帯はすでに厳冬期の様相を示しているのがわかった。スノーシューの二人は西吾妻山へと向かっていた。僕は西吾妻山は割愛し、天狗岩経由で西吾妻小屋へと直進する。遠方には飯豊連峰が望めたが不思議に西大巓付近は雲が居座っていて天候は不安定のようだった。

 西吾妻小屋が目前となると突然大雪原が現れる。ここでシールをはずすことにした。風の通り道のようなこの付近でも膝上まで潜ってしまう深雪だった。飯豊連峰はさらに近くに見える位置で写真を手当たり次第に撮った。昨日はほとんどカメラをだせる状況ではなかったが、今日のような快晴に恵まれれば写真撮影もかなり忙しい。

 若女平のツアーコースは僕一人の貸し切りであった。ツアーコースに入ると雪はさらに柔らかくそして深さを増した。おかげで何の支障もなくブナの木を右に左にかわしながらの滑走が延々と続いた。この快適さをなんと表現すればいいのだろう。12月とはとても思えないほどのパウダーなのだ。見当違いかもしれないが、ここはテレマークスキーにこそ相応しいコースだというのが僕の勝手な持論である。ブナの疎林帯を縫いながら滑走するのは心がときめくばかりだ。自然と一体になるような心地よさがこのツアーコースにはあるようである。

 途中で何回かツアー標識を確認しながら一気に高度を下げて行くと若女平が目前に迫っていた。ブナ林に混ざって今度はダケカンバが多くなるところだ。自然と明るさも増してくる地点でもあった。若女平は平坦地だけにここは推進滑降で進んだ。若女平はいつもの休憩地点である。スキーに腰を掛けてしばらく西吾妻山をつまみに昼食。こんな時間がたまらなくいい。冬山に来て幸福感に浸れる瞬間でもある。こんな時間がずっと続いたらもっといいなあ、などと他愛もないことを考えながら澄み切った青空と西吾妻の稜線をしばらく眺めていた。

 さて若女平から強清水までの中斜面がまだ残っている。ここも結構スキー滑走を楽しめる区間だ。ここで一本の深々としたラッセルに出会った。こんなところを坪足で登る人がいるのか、と思ってよくよく見ればそれはカモシカの踏跡であった。本当に人の踏跡と間違えそうなほどそっくりなのだ。深雪のラッセルはカモシカにとってもかなり難儀な作業だろうと思うと、なんとなく親近感も湧いてくるようだった。

 強清水のヤセ尾根は、もしかしたらスキーを担がなければならないかともしれない、とある程度の覚悟はしていた。なにしろまだ12月なのである。しかし、そんな不安は杞憂にすぎなかった。厳冬期と同様な積雪のおかげでスキーをはずす必要など全くなかったのだ。もっともスキーをはずせば歩くのさえ困難なほどの深雪ではあった。

 ヤセ尾根からはカラマツ林、杉林を滑り抜けて行く。この付近は割合に平坦なので直進するのみ。まもなく急斜面があり、そして杉の植林地へと降りて行く。今回は「小坂」とかかれた標識が出ていた。この付近になると積雪はまだ少なかったが、スキーで滑る分にはむしろこのぐらいの方がずっと滑走しやすかった。というのも積雪量がさらに数メートル増えると杉の枝振りが滑走の邪魔になってしまうのがわかった。いつも難儀しながらこの杉林の密集地帯をすり抜けなければならないのだが、今日はほとんど障害物とならなかったのだ。最後は藤右エ門沢にかかる橋を渡り対岸を滑走してゆく。若女平の登山口はもう目前だった。


中大巓を背にシール登高が続く


遠方は東吾妻への縦走路


快晴の梵天岩


完璧な樹氷群と西吾妻山(天狗岩で)


天狗神社と飯豊連峰


西吾妻小屋とツアー標識


ツアーへの出だし、飯豊連峰をバックに


パウダーランが続く


こんな感じの所を滑ります


ふと見上げると


パウダーランが延々と続く


ツアー標識をときどき確認


若女平で一服


強清水のヤセ尾根


強清水から天元台が対岸に見える


白布温泉に無事到着しました


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