山 行 記 録

【平成20年12月28日/吾妻連峰 デコ平〜西大巓】



トップで激ラッセルの上野さん



【メンバー】4名(上野、荒谷、山中、蒲生)※西川山岳会
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】吾妻連峰
【山名と標高】 西大巓1981m、
【地形図】(2.5万)吾妻山、(20万)福島
【天候】風雪
【参考タイム】
グランデコスキー場リフト終点10:00〜西大巓12:20〜西大巓直下(昼食)12:50-13:40〜リフト終点14:00〜グランデコスキー場14:30

【概要】
 山形県は連日の暴風雪が続いていた。この2日間の降雪によって吾妻連峰は厳冬期のような豪雪となったのがスキー場のサイトでわかった。うれしい悲鳴を上げている人も全国にたくさんいることだろう。かといって今日も風雪は止む様子はなさそうだった。山形県の悪天候は終日続くとの予報もある。それでは福島側からならばと早朝、除雪も行き届かない雪道をグランデコに向かった。

 予想はしていたが強風のためグランデコではゴンドラやリフトが動いていなかった。しかし9時頃からリフトがとりあえず動き出したため、僕たちはリフト3本を乗り継いでリフトトップにあがった。リフトトップでは風雪がさらに激しさを増していた。視界もほとんどなくスキーヤーも見当たらない。こんな時には一刻も早く樹林帯に逃げ込むのが一番である。

 当然ながらこんな天候では山に入っているパーティはいなかった。でも僕たちはこんな時の楽しみ方を知っている。山頂に届くかどうかさえわからない時はラッセルを楽しむのが一番なのだ。悪天候になればなるほど山スキーの充実感も増すといえばいいだろうか。そんな負け惜しみのようなことを考えながらトップを切って斜面に取り付いた。スキーはたちまち膝上まで潜りうれしい悲鳴がみんなから聞こえた。しかし一歩進むにも難儀する今日のディープパウダー。たちまち両足が攣りそうになり、短時間でラッセルを4人で交代しなければならなかった。トップを代わるとたちまち体が冷えてしまう。ラッセルに汗を流していた方が今日はずっと気分的には楽だった。

 一向にはかどらないラッセル作業に時間だけが経って行く。東側の尾根にでると積雪量はさらに増した。1900mピーク付近は斜度がきついだけに一歩進んでは何秒か休むといった作業を繰り返さなければならなかった。それほど今日のラッセルは困難を極めるような感じであった。そんなとき後続のパーティが追い付いてきた。朝方スキーセンターで声をかけられていた○○さんのグループであった。1900mピークはすでに山頂目前でそこから高度は残り80m。ここは後続のパーティに譲ろうか。僕たちはもう疲れはてていた。そこに加えて僕はシールトラブルに見舞われていた。シールトラブルなど最近にはなかったことだ。気温はマイナス7度。そこにもってきてすさまじいほどの風雪なので体感温度は相当なものだった。どうやら僕のシールは氷点下7度前後では使いものにならないらしかった。僕はガムテープで補強するために素手になる。両手は厳しい寒さにたちまち凍傷になりそうだった。さらにスキーを脱ぐと腰まで雪に潜りそうになって慌てた。尾根上にもかかわらず今日の積雪ではストックのみで雪から這い出すことはできず、スキーを使って体を雪面から引き上げなければならなかった。

 西大巓の山頂には2時間20分かかって到着した。いつもよりも1時間はよけいにかかったことになる。しかし大満足の山頂でもある。単独ならば山頂にはほとんど届かなかったはずである。4名の力は本当に大きいものだとあらためてメンバーに感謝した。

 山頂は風雪で大荒れであった。視界も展望も何もない。こんな天候では長居は無用だろう。手際よくシールをはがし山頂から下ることにした。南東尾根に下る直前に広々した雪原がある。この斜面をひと滑り楽しみ樹林帯にはいったところで休憩とした。ツェルトの中は天国だ。どんな暴風雪でもこのたった一枚の布きれが僕たちを救ってくれる。テルモスの熱い飲み物をいただくと芯から体が温まった。

 さて滑降にはいるとしようか。今日のような深雪では少々の斜度だと下りラッセルとなりかねない。しかし、ちょうど僕たちが休憩に入った時、二人組が滑っていったトレースが残っていた。このトレースを利用すれば下りラッセルの心配もなさそうだった。休憩地点からは全身に粉スプレーを巻き上げながらの滑降だった。天候は休憩前よりもはっきりと悪化しているのがわかった。樹林帯の中でさえも視界が効かなくなるほど風雪が入り込んできたのだ。上野さんは凍傷になりそうな手にもかかわらずビデオカメラを頻繁に取り出している。上野さんもこんな時の楽しみ方をよく知っているなあとあらためて感心するばかりだ。樹林帯ではなるべく斜度のありそうな斜面を拾いながら下るとゲレンデトップは目前だった。今日も激パウダーのツリーランを目一杯楽しんだ一日が終わった。

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