山 行 記 録

【平成20年12月20日/志津温泉〜紫灯森〜姥ケ岳】



烈風が吹き付ける



【メンバー】3名(上野、坂野、蒲生)
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】月山
【山名と標高】姥ケ岳 1,669.7m
【地形図】(2.5万)月山、(20万)村上
【天候】晴れ(快晴)
【参考タイム】
志津7:30〜姥沢9:00〜紫灯森11:00〜東斜面(休憩)11:45-12:30〜姥ケ岳13:00〜姥沢14:10〜志津14:40

【概要】
 県内は前日まで雨が降り続いていた。月山では間違いなく雪だろうと判断し今回は月山の計画である。この時期山頂を踏むためにはアイゼン、ピッケルは必携で、装備を万全にして西川町へと向かった。予報どおりというか朝からこれ以上は無いだろうと言うほどの快晴の空が広がっていた。志津温泉にきてみると仙台から坂野さんが一人駐車地点で待っていた。いわば私達は網にかかったサカナという形だった。しかし、かんじんの山岳会はというと今回は上野さんだけという状況だけに、坂野さんが加わって楽しい雰囲気となったのはいうまでもない。

 歩き始めこそ雪が少なくてがっかりだったが、登るに従って明らかに周囲の積雪が増してくる。やはり豪雪の月山は違うなあと思わずにはいられない。加えて信じられないような今日の新雪である。これにはうれしい悲鳴をあげたくなるほどで、これだから山スキーはやめられないなあと思う。ネイチャーセンターを過ぎると前方に姥ケ岳が見えてくる。姥ケ岳は青空をバックにまぶしほどに輝いている。見渡しても雲ひとつ見当たらなかった。私達の前にはすでに先行する新潟の二人組がいた。このトレースのおかげで姥沢には1時間30分で到着した。ここからはリフト下の最短コースで登ってゆく。風はほとんどなかった。

 リフト上駅から新潟の二人組は姥ケ岳へと直登していった。新潟組は姥ケ岳の東斜面を滑降するらしかった。私達は金姥をめざしいつものルートで姥ケ岳を回り込む。前方には紫灯森や牛首そして月山が正面となる。一点の染みもないような無木立の大斜面に圧倒されるようだった。金姥までくるとさすがに風の強さはハンパではなかった。さながらブリザードのような雪粒が真横から飛んでくる。この烈風は日本海から直接吹き付けてくるようだった。金姥から紫灯森への斜面はこの強風に晒されて雪面が堅く凍りストックさえ刺さらなかった。

 紫灯森からは品倉尾根が湯殿山スキー場へと伸びていた。稜線はナイフリッジとなっていてまさしく鋭利な刃先を見ているようだった。月山ではすでに厳冬期の様相を呈していた。紫灯森のピークではさらに風の強さが増した。姥ケ岳からの雪煙が雪粒となって降り注いでくるようだった。紫灯森まで登れば月山は目前だったが、堅く凍った雪面ではとうてい快適な滑降など望めそうもなかった。そう思うと当初の意気込みは急速に萎えてゆき、山頂はあっさりとあきらめることにした。

 稜線伝いに姥ケ岳へと引き返すと東斜面が左手に広がっていた。ここはとてつもない広さという表現がピッタリだった。さらに願ってもないコンディションである。私達は風船が弾け飛ぶようにそれぞれ東斜面へと飛び込んでいった。滑降が始まると途中で停止するのがもったいないほどの快適さに結局沢底まで滑り降りていった。そこは風もないので最高の休憩地点だった。姥ケ岳の山頂付近はあいかわらず雪煙がたっている。山頂に降り積もった雪が強風に舞っているようだった。私達は春山のような陽射しを浴びながら、東斜面の沢底でしばらく至福の時間を過ごした。

 休憩後はふたたび姥ケ岳山頂へと登り返し東斜面にシュプールを刻んだ。しかしいくらシュプールを刻んでも刻みきれないほどの広大さがここにはある。まるで太平洋にオシッコをするようなものなのである。月山の斜面を見ているとふとそんなことが自然と浮かんでくるようだった。こんな楽しい時間がいつまでも続いてくれたらばと願わずにはいられなかったが、午後も一時を過ぎると陽射しが急速に傾き始めてくる。私達の影も雪面に長く伸び始めていた。楽しかった遊び場から退場する時間がもう間近に迫っていた。


紫灯森めざして(上野氏撮影)


東斜面の滑降(上野氏撮影)


東斜面の滑降


東斜面の滑降(坂野氏撮影)


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