ドカ雪のような初雪もその後の晴天ですっかり融けてしまった。しかし、ここ志津温泉ではまだまだ結構な積雪があってびっくりするほどだ。さすがに豪雪地帯の月山だけのことはあって、ここでは決して裏切られることがないのがうれしい。シール歩行は月山荘への分岐付近から始まる。のんびりと歩き出すとまもなく遅れて現地入りした荒谷氏と神田さんが早くも追い付いてきた。というよりも我々先行グループが予想外に遅かっただけなのだが。
意外にも雪は締まっていてラッセルするほどではなかった。途中で道路から鉄塔下にコースをとり、そこからはショートカットで姥沢をめざした。今日は単独のスノーボーダーと山スキーの先行者がいる。その踏跡もあって約2時間ほどで姥沢に到着した。姥ケ岳はまだ山頂付近に雲が居座っていたがそれも時間の問題だろう。まもなく快晴の空に覆われる兆しが漂っていた。
振り返ると朝日連峰の山並みがほとんど見渡せた。ブナ林の間から見え隠れする湯殿山は、新雪を抱いてびっくりするほどの白さだ。いつもならばリフト下を登ってゆくところも今日は南の尾根から姥ケ岳へ直登することにした。まもなく雲がひとつもなくなってしまい、澄み切った青空が広がった。こうなると日焼けが心配になるほどで、初冬というよりはまるで春山の雰囲気だ。新雪に抱かれたブナ林も美しく言葉も出てこない。やがて姥ケ岳の直下となると広い雪原となる。この辺りでは新雪が降り積もっていてとても雪が柔らかい。ここは下りのメインゲレンデに取っておこうと頭の隅に入れておく。
シュカブラが目立つようになるとまもなく姥ケ岳山頂だ。志津からは4時間近い時間がかかっている。あいかわらず遅いペースにがっかりしてしまった。リフト下を先行していたスノーボーダーも右手から登ってきて山頂で合流となった。
山頂からは見渡す限りの絶景が広がっていた。あいにく鳥海山は雲に隠れていたが視界は360度。月山の山頂は異様なほど近くにあって驚く。今日は文句なしのツアー日和にみんなも破顔一笑である。山頂は結構風が冷たく休憩するには場所を選ばなければならなかった。私たちは少し東側へと回り込んだところでツェルトを張ることにした。しばらく朝日連峰や遠く蔵王連峰などの山並みをながめながら昼食休憩となった。
山頂の冷たい風も休んでいる間に止んでしまい、ツェルトから出る頃には無風快晴となっていた。楽しい仲間たちとの昼食が終わればお待ちかねの滑降だ。姥ケ岳の山頂からはまるで大きなゲレンデに立っているかのようでもある。なにしろ広大な斜面が眼下なのだ。このどこをどう滑ってもかまわないと言うのがこの姥ケ岳の魅力だろうか。強い陽射しが降り注ぎ、雪のコンディションも全く問題なかった。メンバーの中には今日が初滑りのものもいて、見ているとなんとなくおっかなびっくりといった感じが面白い。それはまさしく先週の自分を見ているようでもある。いざ滑降となるとそれぞれが大斜面へと思い思いに飛び散っていった。途中からは上野氏のビデオ撮影や写真撮影などが始まり、それからはワイワイガヤガヤ、メチャメチャクチャクチャとお祭り騒ぎである。今日はこの広々とした斜面が5人の貸し切りであった。
私は帰宅時間が迫っていたのでリフト下駅付近でみんなと別れた。他のメンバーはまだまだ時間があるというので、結局登り返して姥ケ岳をもう一度楽しもうと決まったようである。こうして今シーズンの山スキーが幕開き、これから忙しい週末が始まりそうな予感を抱きながら、私はひとり姥沢を後にした。
久しぶりのシール登りに汗が流れる |
姥沢と姥ケ岳 |
姥ケ岳へと直登コース |
リフト上駅と月山が遠方に・・・ |
姥ケ岳山頂 |
湯殿山(姥ケ岳山頂から) |
安定感抜群の阿部さん |
革靴の名人芸、上野さん |
迫力の荒谷さん |
慎重派の神田さん |