11月中旬ともなるといつ降雪があってもおかしくはない時期である。今日は夕方から崩れる予報がでているので午前中が狙い目だろうか。週の後半からは強い冬型が予想されているので、このハイキングコースを楽しめるのは今年最後の機会だろうと、久しぶりに妻と出かけてみることにした。
県道からは草岡口、勧進代口、白兎口、そして高玉口と、葉山の登山口を次々と通過してゆく。さらに北上し、横峯コースへは上の台公園という標識から林道へと導かれる。下界は濃い霧のため薄暗さに包まれていたが、林道の途中から雲海の上に抜け出すと、雲ひとつ見当たらないほどの青空が現れた。この天候の変化を目にすると、下界はいくら悪天候でも雨雲の上は常に快晴なのだとあらためて思い至る。林道は結構距離があったが道路の状態は悪路というほどではなかった。道幅も割合に広いので特段不安を感じることなく林道終点へと到着した。そこは松林の中の広場のようなところで行き止まりとなっていた。
登山口の標識は特になかったが尾根の取り付きに赤テープがあって踏跡が続いていた。杉林に入ると陽射しは遮られてしまい、しばらく薄暗く感じる山道となる。さらに登山者も見あたらないとあって少し寂しい雰囲気が漂っていた。沢沿いの尾根道は途中から素堀の側溝があらわれる。昔から葉山からの沢水を利用して農業用水が引かれているようだった。右手下の渓流には滝らしきものも見えて、紅葉時期にはさぞかし見事な景観だろうと想像した。まもなく山道は沢沿いから離れて左手の尾根へと斜上する。稜線に出ると見事な雲海が広がっていた。手前に見える尾根にはテレビ等が見えるのでそこは高玉口からの葉山登山道のようだった。白鷹町や長井市の町並みは全て雲海に隠れていた。まだまだ下界は晴れそうな様子はなかった。
いくら平坦な山道とはいっても400mほどの高度差を登るので少しは勾配がきついところもある。しかし至って歩きやすい山道なことは確かである。落ち葉がクッションとなって足にも優しい道が続いた。まもなくすると高玉分岐点が現れて、ここからは懐かしい山道となる。さらに愛染峠への分岐からは昨年カミさんと歩いた道となる。しかしいくら尋ねてもカミさんはほとんど記憶に無い様子だった。
葉の落ち尽くしたブナ林から葉山湿原が望めるようになると長井葉山もまもなくだ。今回は葉山山荘には寄らずに奥ノ院へと直接向かった。まだまだ澄んだ青空が広がっていて、天候の崩れる様子はなかった。こんな好天にもかかわらず奥ノ院には誰も見当たらず、山頂は私達二人だけの貸し切りであった。どこからも文句の付けようもないほどの景観が広がっていた。横峯コースは予想外に距離があって、ここまでカミさんもかなり疲れた様子だったが、この奥ノ院からの風景を見ると、これまでの疲れをいっぺんに忘れてしまったかのようだった。
2週間前は冷たい風が終始止むことなく防寒着が手放せなかった。しかし、今日はここからいつまでも離れたくないような、まさしく山日和の穏やかな山頂だった。この大展望を眺めながら、熱い味噌汁やコーヒーを淹れたりして、のんびりとした時間を過ごした。誰かしら葉山山荘からやってきても良さそうなものなのに、結局訪れる人はなさそうだった。奥ノ院では終始小春日和のような陽射しが降り注いでいた。どこまでも優しく、そして柔らかい晩秋の陽の光であった。
林道終点(登山口) |
用水路と登山道 |
祝瓶山(奥ノ院から) |
下山時には雲海も晴れて田園風景が見渡せた |