当日は「はぎの湯」の駐車場に6時集合となった。今回は長井ダムの作業道を利用するらしく、主催者側からは「全区間が危険箇所の連続で落ちれば確実に死にます」などと説明され、一同からは一斉にざわめきが起こった。募集人員は50名。しかし予想以上の申込者が殺到したらしく市外者からの参加も多いようだった。65名の参加者にスタッフを加えて総勢100名もの団体となり、参加者は4つに班分けをされる。そして総宮神社のお守りを頂くと、用意された3台のマイクロバスにそれぞれ乗り込んだ。
登山口は野川第二発電所の裏手に作られていた。急坂のやせ尾根を登り作業道へと入ってゆく。頭上には新たに建設中の発電所があり、眼下には野川本流が深い谷底を流れている。谷底から作業道まではかなりの高さがあって、足元はすっぱりと切れている。よくこんなところに道を切ったものだと感心する。それだけに高所恐怖症の人などは身震いするだろうと思えるところだ。登りそのものはたいしたことはないが、高度感だけは第一級ともいえそうな登山道が連続する。踏み外したら一巻の終わりとなるのは間違いなさそうだった。軽いアップダウンの作業道が蛇行しながらしばらく続いた。足元を見ると震えそうだが、周りの景色は今が紅葉の盛りを見せていて、未知の世界に分け入るということもあり、次々と現れる光景には飽きることがなかった。
渓谷沿いに切られている作業道は全区間にロープが設置されていた。発電所が山陰に見えなくなった頃途中で一回小休止をとる。さらに一時間ほど歩くといよいよ三淵が目前となった。そこは布谷沢と野川本流が合流するところで、作業道から三淵までは急峻な崖をおりなければならないようだった。そして中州のような三淵へは野川の本流を横断しなければならないらしかった。本流は結構な勢いで流れている。スタッフ達がそのルート工作のために手間取っていて、参加者達はしばらくの間待っていなければならなかった。
長いロープを伝って下りた地点からはゴムボートに3〜4人ずつ乗り込み対岸へと渡った。当然ながら大勢の参加者が渡り終えるまではこの作業にかなり手間暇がかかった。早めに渡り終えた人達は杉林にひっそりと佇む三淵神社への参拝をかわるがわる行っている。その間にスタッフ達は大きな鍋で芋煮の準備をはじめている。一方では残ったサポート隊によるボートを使った三淵渓谷探検がはじまった。この探検も1台のゴムボートしかないので、参加者全員が往復するためには2時間ほどかかった。こうして多くのスタッフ達のおかげで私達は至れり尽くせりのツアーを楽しむことだできたのである。もちろん三淵渓谷の探検も心躍るもので、願わくば最奥までも足を踏み入れたかったと思ったのは私だけではないだろう。この言い尽くせないほどの魅力ある三淵渓谷が、もうまもなくダムの底に沈んでしまうこと考えると、文明の豊かさとはいったいなんなのだろうと思わずに入られない。早朝からの雨も予想された今日の探検ツアーは、昼過ぎまでも全く降り出す気配はなく、結局下山を始める頃になってようやくポツリポツリと小雨が落ち始めてきた。
野川渓谷 |
ヘツリ道を歩く |
三淵で対岸に渡る |
渡渉光景 |
布谷沢 |
三淵神社 |
三淵への急坂を下る |
三淵渓谷入口 |