山 行 記 録

【平成20年10月12日/朝日連峰 古寺鉱泉〜鳥原山〜小朝日岳〜古寺山(周回)



小朝日岳から古寺山

【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】朝日連峰
【山名と標高】鳥原山1,430m、小朝日岳1,647m、古寺山1,501m、
【地形図】(2.5万)朝日岳、羽前葉山、(20万)村上
【天候】晴れ時々曇り
【温泉】西村山郡朝日町「いもがわ温泉」150円
【参考タイム】
古寺鉱泉6:50〜ブナ峠分岐8:00〜田代清水8:25〜鳥原山9:45〜小朝日岳10:30-11:00〜古寺山11:30〜一服清水〜古寺鉱泉14:30

【概要】
 ほぼ4カ月振りの古寺鉱泉。3連休とあって駐車場はこれ以上の混み具合はないだろうというほどの大混雑ぶりを見せていた。何しろ駐車場のはるか手前から数え切れないほどの車が路肩に駐車中で、最初は全て釣り人のものだろうと思っていたくらいである。こんなに混み合うのを見るのは今までになく、まさしく立錐の余地がないほどの古寺鉱泉であった。

 久しぶりに訪れた古寺鉱泉はすでに秋の彩りにおおわれていた。風も爽やかで昨日の悪天候がまるでウソのような秋晴れが期待できそうだった。駐車場の混み具合では山にも大勢の人が押し掛けているのだろうと思うと気が重かったが、畑場峰コースへと入って行くとほとんど人の気配はなかった。あの駐車場に停めた人達の大部分は古寺山経由で大朝日岳へと向かったようである。登るに従って潅木の色付きがぐんぐんと増して行き、ブナ峠分岐では一休みをしたくなるような日射しが降り注いでいた。

 その後も人と出会うことはなく、このコース上を歩いているのは誰もいないように思えた。ここは朝日連峰でも特に静かなコースの部類に入るのかも知れなかった。おかげで誰にも気兼ねすることなく写真撮影に専念できるうえに、途中では何度も立ち止まり紅葉を愛でたりすることができたのはうれしいばかりだった。鳥原山が前方に見えると周辺はまさしく紅葉の最盛期を迎えているようであった。全身が色とりどりの紅葉に染まってしまいそうなほどの華やかさに包まれてもう何も言うことはなかった。

 畑場峰からの急坂を登り切ると鳥原湿原につく。1ヶ月前に訪れたときはまだ草紅葉には早かったが、その分だけまだ草花も多く残っていた。しかし、この時期になると湿原は黄金色と変わり、草花はほとんど姿を消してしまっていた。初夏の草花が咲き乱れる湿原の美しさも好きなのだが、輝くような草紅葉を目前にすると、これはこれでこの世のものとは思えないほどの光景にも思われてくるから不思議だった。さらに周りの潅木は赤や黄色に衣替えを終え、池塘は空の青さを写して吸い込まれそうな深い彩りを見せている。朝日連峰は1年で一番美しい季節を迎えているようだった。

 登山者と出会ったのは鳥原山の山頂にきてからだった。県外の人が3人休んでいるところで、朝日鉱泉を早朝出発してきたようであった。残念ながら見上げる小朝日岳は日射しを遮られているので輝きはみられない。さらに大朝日岳は分厚いガスに覆われていた。日射しがあるのは鳥原山までで、西側ではまだ低気圧の名残が居残っているようであった。小朝日岳への急坂に差し掛かると、徐々にだったがガスが切れ始めていた。上空では大きな雲が流れては消え、消えてはまた新たに雲が湧くといったことを繰り返していた。

 小朝日岳では冷たい風が吹いていた。今にも雪が舞ってきてもおかしくはないほどの気温の低さである。主稜は大きな雲におおわれていて先ほどまでの鳥原山の心地よさが信じられないほどだった。一方、古寺山はというと強い日射しが一面に降り注いでいて、まぶしいほどの輝きを放っている。絢爛と豪華さが同居しているような古寺山の光景はまさしく錦絵を眺めているようでもあった。わずかな場所の違いでも天候はかなりの違いを見せているようだった。

 小朝日岳山頂で休んでいると主稜線を覆っていた雲が少しづつ切れて、ほどなくすると大朝日岳の全容も見え始めてきた。気圧の谷がようやく通過を完了したようである。大朝日岳の避難小屋も見えていて上空には青空が広がり始めている。これから主稜線の天候も良くなる一方のようであった。私は山頂で早めの昼食を済ませて古寺山へと下ることにした。下るほどに気温は上昇しはじめてきて防寒着やカッパも不要となる。暑いくらいの日射しが降り注ぐまでになっていた。

 小春日和のような暖かさにつつまれると再び楽しい山歩きが戻った。古寺山周辺は自然界にもこんなに色があったのかと思えるほどの華やかさを見せていた。写真も撮りきれないほどでカメラを取り出すのももどかしいほどだった。

 山の紅葉は一日で200m下るとも言われる。この鮮やかな紅葉も来週には見られないと思うと急いで降りてしまうのは躊躇われるようだった。そんな人達も多いのだろう。古寺山への途中ではところどころで腰を下ろして休んでいる登山者が目立った。紅葉とは冬を目前にした山の最後の煌めきなのかも知れなかった。季節の移ろう早さには驚くばかりだ。華やかさの陰には厳しい冬が早くも見え隠れしているようだった。

 大勢の人達で賑わう古寺山を早々に後にして、私は古寺鉱泉へと降りて行く。これから登って行く人達もまだまだいるようである。明日はきっと今日よりも穏やかな一日が待っていることだろう。そう思うと大きなザックを背負った人達がたまらなくうらやましくなってしまった。


鳥原山


鳥原山近くの登山道


ブナ峠分岐


畑場峰付近から鳥原山


鳥原湿原


鳥原湿原


鳥原湿原


鳥原山への途上


古寺山西斜面


古寺山からの大朝日岳


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