山 行 記 録

【平成20年9月15日/朝日連峰 白滝〜鳥原山】



鳥原湿原で



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】朝日連峰
【山名と標高】鳥原山1,430m、
【地形図】(2.5万)朝日岳(20万)村上
【天候】曇り時々晴れ
【温泉】西村山郡朝日町「いもがわ温泉」150円
【参考タイム】
駐車地点(白滝口)720〜鳥原湿原930〜鳥原山950-1020〜駐車地点1230

【概要】
 一昨日の疲れもあるので今回は白滝口から鳥原山への軽いコースを選んでみた。調べてみるとここを歩くのは12年ぶりであった。駐車地点ではタクシーで来たという神奈川の夫婦連れがいて、一足早く登り始めていった。私は7時20分に歩き出す。

 すぐに吊橋があり、まもなくすると木橋を渡る。見上げれば爽やかな秋空が広がり、ぎらぎらとした夏空はすでに過ぎ去ったようだった。15分ほどで三つ目の木橋を渡ると急坂の始まりだった。久しぶりのコースだけに前回登ったときの記憶はほとんど無く、水場や豊かなブナ林などが妙に新鮮に映った。草露が多いところをみると昨日は雨だったのだろうか。しばらく沢沿いの坂道を登るとやがて七曲がりとなり、一気に急坂となって高度が上がってゆく。登山道にはギンリョウソウが意外と多く目立った。

 この急坂ではしたたかに汗が流れた。いつのまにか濃いガスが広がり始めていて、雲の中につっこんだようであった。快晴の空を期待していただけにこれには落胆した。1時間ほどすると規模は小さいものの美しい滑滝が現れる。周りは原生林のような太いブナ林が林立し、まるで夢の世界を歩いているような錯覚さえ覚えた。

 急坂は徐々になだらかとなり、見晴らしがきくようになると鳥原湿原の広々とした一角に飛びだした。前方遠くを見れば鳥原小屋が建っていた。鳥原湿原では高原と行っても良さそうな涼しい風がながれていた。正面に鳥原山がうっすらと見えたがガスのためにはっきりとは見えない。その中途半端さがかえって幻想的にも見えた。

 少し進むと木道が現れ、湿原では草紅葉が少しずつ始まろうとしていた。鳥原小屋の方角からは笑い声が聞こえ、まだ大勢の登山者で賑わっているようであった。池塘のある古寺鉱泉への分岐点を過ぎると鳥原山までは近い。今年2度目となる鳥原山には9時50分に到着した。ちょうど2時間30分かかったことになる。

 ここは大朝日岳や小朝日岳の大展望台なのだが、あいにくガスでほとんど視界はなかった。以東岳から縦走してきたという福島の団体とすれ違ったが、昨日も今日も天候は良くなかったというから、これには意外であった。また秋田の人ともであったが、その人の話では、昨日は朝からの雷と雨で鳥原小屋から一時引き返したパーティもあったらしかった。平地では暑い日差しが照りつける好天だっただけに、そんな悪天候だったとはとても信じられない思いだったが、やはり山の天候はわからないものなのだとあらためて思った。

 食事をしながら眺めていると、小朝日付近のガスが少しだけ流れて、美しい山肌が姿を現し始めた。そして南斜面に日射しが降り注ぐと、その部分だけがモノトーンの色調から青々とした鮮やかな世界へと変わった。北側は白い雲一色だが、南斜面の目まぐるしく変化する様を見ていると、ドラマチックな山岳光景に見えないこともなかった。

 鳥原山から小朝日岳への登山道はうねうねと途切れなく続いているのが見えた。膝の痛みこそ少しはあるものの、この程度の登りならば大分良いようである。今日はこのコースを選んでよかったのだとつくづく思った。朝日連峰の一角に座り、こうして雄大な光景をぼんやりと眺めていると時間を忘れそうであった。

 天候はいまひとつなのか小朝日岳から下ってくる人は他にはいないようだった。行程は短いので下りは少しも急ぐ必要はない。私は登り以上に時間をかけて元来た道を戻ることにした。樹林帯を抜け出すと、日射しと共に蝉のかまびすしい啼き声が頭上から一斉に降り注いだ。それは過ぎ行く夏を惜しむかのように、まるで蝉達が競い合っているようだった。涼しい川風と優しい日の光はまさしく夏が過ぎ去ろうとしているようにも見えた。


鳥原湿原で


inserted by FC2 system