二つのコースを周回するとなるとどちらから歩くにしても林道歩きが必要だった。ちょうど林道が二手に分かれる付近に車を置き、左の不動沢コースへと歩き出す。林道歩きは遮るものがないので頭上からはジリジリとした日射しが降り注いだ。コースそのものはところどころに案内標識があるので心配はなかったが、登山口まで結構砂利道の林道を歩かなければならなかった。
不動沢の登山口を示す道標は、背丈ほどの草が覆い被さっていて、うっかりすると見逃してしまいそうだった。登山道はしっかりとしていて不明なところはなかった。まもなく不動沢の渡渉地点に着いたが、橋などはないので降雨直後は要注意箇所のようだった
対岸に渡るとそこからは傾斜のきつい登りとなり、一気に高度を稼ぐようである。幸いに樹林帯のため、日射しはなかったものの、気温はどんどんと上昇しているようだった。
さらに進むと沢を横断する箇所があり、そこで大休止をとる。暑さも手伝ってほとほと疲れてしまっていた。まだ5合目くらいなのにもう取りやめようかとさえ思うほど今日の私は弱気になっていた。
体中に沢水を浴びると少しだけ元気が出てくるようだった。登りを再開すると急にブナ林が広がるようになる。ブナの木陰はそれだけで涼しく、細胞が隅々まで生き返るようだ。不動滝はそこからまもなくだった。結構足下が崩落しているところもあって、事故防止ためにロープが張られている。急な階段を登ればそこは不動滝の見晴台になっていた。観光客はここまで進んでこられるようになっているようだった。広場にはベンチが何台かあって休めるようになっていた。見晴台からドッコ沼まではおよそ1.2キロ。もう平坦地なのでたいしたことはないが、ここまでの登りでさえも結構疲れ果てていた。
ドッコ沼もほとんど人影はなく、観光客は数えるほどしか見あたらなかった。呼吸が落ち着いたところで五郎岳と三郎岳を登ってくることにする。こんな機会でもないと登れない山のような気がしたからだった。中央ゲレンデに進み、途中から案内標識に従って登山道にはいってゆく。この付近は中央高原散策路としてきれいに整備されていて、いたって歩きやすいが、本来の山登りとはほど遠いようでもある。
二つの山を登り終えて再びドッコ沼へと戻った。そこからは蔵王大権現の社殿を通り過ぎ、瀧山への登山道へと進む。この付近は何年か前に歩いているので特に不安はない。今日は土曜日にもかかわらず観光客も登山者もほとんど見あたらなかった。
暑さは次第に厳しさを増し始めていた。急いでもしょうがないので少し木陰を選んで小休止をとる。今日はこうしていったい何回休んだことだろう。両足の膝裏が少し痛み始めていたが、登ってきた以上は下るしかなかった。まあ無理をせずにのんびりと歩くしかないだろう。ここから瀧山までは小さなアップダウンを繰り返しながらの水平移動が続くところだ。登山口の辺りには瀧山トレッキングという大きな看板があるが、トレッキングよりも本来の登山という形態に近い区間なので甘くみてはいけない。
コエド越えコースへの下山口をいったん通り過ぎ、とりあえず瀧山の山頂をめざす。分岐点から山頂まではそれほどの距離はないが、疲れた両足には結構こたえた。よほど山頂は取りやめようかとも思ったのだが、最近はダイグラで痛めた足のため、消化不良のような山が続いている。今日は山頂をどうしても踏んでおきたかったのだ。
瀧山の山頂でも登山者は誰もいなかった。ガスが急に広がり始めて視界もほとんど無くなっていたが、日射しがないぶんだけ涼しいのがありがたかった。ここで昼食を兼ねて大休止とした。いつもならば何人かの登山者は必ず見かけるのだが、真夏の厳しい暑さのなかでは訪れる登山者もいないようだった。
コエド越えの分岐に戻って宝沢めざして下り始める。登山道の状態を心配していたのだが、予想外に道幅は広く、結構歩かれているのがわかった。さらに日射しはブナ林に遮られて暑くないのが助かった。もう体力も足の痛みも限界を感じていた。この周回コースは、標高差そのものはそれほどではないが、総距離は意外とあるようだった。下りのコエド越えコースは傾斜が緩やかな分だけ足には優しいようである。しばらくすると林道に飛び出して登山道は終わる。ここからわずかに砂利道を歩いてもとの駐車地点に戻った。
不動沢コースとコエドコース分岐点 |
不動沢コース登山口 |
良く踏まれた登山道 |
不動沢渡渉点 |
ウツボグサ(五郎岳) |
五郎岳山頂 |
三郎岳(五郎岳から) |
瀧山登山口 |
瀧山の三角点 |
コエド分岐で咲いていた山百合 |
明るいブナ林(コエド越えコースで) |
コエド越え登山口 |