登山口からはゴゼンタチバナ、アカモノ、ウラジロヨウラク、アズマシャクナゲなどを愛でながら歩いて行く。花の時期を歩くのは楽しいばかりだが、頻繁にカメラを取り出しながらなのでピッチがいくらも進まない。次々と登ってくる登山者に二人はたちまち追い越されてゆく。
前山、杉ケ峰と緩やかな上り下りを繰り返すとやがて芝草平の湿原だ。芝草平の入り口付近ではベンチに腰を下ろして休憩している登山者が目立った。さっそく芝草平の奥へと進んでゆくと、心地よい風が吹き抜けてゆく。チングルマはすでに花の時期の終わりを告げ果穂が湿原一帯を覆っている。池塘ではワタスゲが風に揺れ、わずかにイワイチョウが咲いているくらいでちょうど端境期のようであった。湿原は桃源郷を思わせる別世界。吹く風は爽やかで、下界の猛暑が信じられないほどだ。それは肌寒いほどでTシャツの上にカッターシャツを一枚羽織った。この芝草平の奥にあるベンチにザックをおろし、しばらく昼食休憩とした。
屏風岳までくると多くの登山者で賑わっていた。登山者は不忘山方面からも次々とやってきては刈田峠の方へと降りてゆく。多くの団体はマイクロバスや大型バスが下山口へと回してくれているようである。山頂からは水引入道や後烏帽子岳などの山々もすぐ近くにそびえている。この屏風岳では心ゆくまで展望を楽しみながら1時間近くのんびりとしてしまった。
屏風岳を後にすると今度は刈田岳や熊野岳を見渡すことができて少しも飽きることがなかった。カミさんも2回目のはずだったが前回の展望はあまり良くなかったのだろう。このコースがこんなに眺望がよいのだとは期待していなかったらしく、しきりに感嘆の声をあげている。今日は終始涼しい風が稜線を吹き渡っていて、山頂からの展望と県境稜線から眺める新鮮な景色に満足をしながら、あらためて蔵王連峰の良さを味わった一日であった。