山 行 記 録

【平成20年6月28日〜29日/朝日鉱泉〜鳥原山〜大朝日岳〜ナカツル尾根





大朝日岳とヒメサユリ



【メンバー】3名(清水、遠藤、蒲生)
【山行形態】夏山装備、避難小屋泊
【山域】朝日連峰
【山名と標高】鳥原山1,430m、小朝日岳1,647m、大朝日岳1,870m、
【地形図】(2.5万)朝日岳、羽前葉山、(20万)村上
【天候】(28日)晴れ時々曇り、(29日)曇り時々雨
【温泉】西村山郡朝日町「いもがわ温泉」150円
【参考タイム】
(28日)朝日鉱泉7:00〜金山沢9:10〜鳥原小屋11:00〜鳥原山11:50〜小朝日岳14:20〜大朝日避難小屋17:00(泊)
(29日)大朝日避難小屋5:00〜大朝日岳5:20〜長命水7:30〜二俣8:30〜朝日鉱泉11:00

【概要】
 今回は朝日連峰のヒメサユリを目的にした私的な山の会の山行だが、幹事の2名しか集まらないという、会山行としては少し寂しい事業となった。幸いゲストに遠藤さんという女性が加わり、この3名で大朝日岳をめざすことになったものである。

(6月28日)
 朝日町の立木地区から木川ダムへと続く道路は今年も通行止めだった。工期は11月までというから、朝日連峰のメインの登山口である朝日鉱泉は今年も遠い存在となっている。少々遠回りとなるが白倉からは林道を迂回して朝日鉱泉ナチュラリストの家に向かった。

 道路が通行止めのためか、朝日鉱泉の駐車場には数台止まっているだけで登山者は見当たらなかった。朝日鉱泉から仰ぐと、青空を背景に大朝日岳の山頂が見えた。この光景を眺めると登高意欲が沸々とわいてくるようだった。登山届けを朝日鉱泉に投函し、吊橋を渡って登山道を進んでゆく。この鳥原山経由での大朝日岳は思いのほか長丁場なので体調が万全の時に登りたいコースだ。私はまだ眠気が残っていてモチベーションはいまひとつだったが、先頭をゆく清水氏のゆったりした歩きがありがたい。怒濤のような急坂をジグザグに登って行き、尾根に上がると大量の汗が全身から噴き出した。汗が一通り流れると体調も落ち着いてくるようだった。しかし、梅雨のまっただ中のため想像以上の蒸し暑さである。雨の心配のないのはうれしいのだが、ザックが重いだけに熱射病が心配なのだ。時々薄雲に日射しが遮られると生き返るようだった。登山道にはタニウツギやギンリョウソウがいつもよりも多く目立った。

 ヤセ尾根の小さなアップダウンを繰り返し、金山沢には約2時間で降り立った。金山沢は降雨直後ともなると渡渉が困難となるところで要注意区間だが、今年は水量も少ないので難なく対岸に渡ることができた。ここから鳥原山までは急坂となる。登山道にはマイヅルソウやコイワカガミなどが目に飛び込んでくる。この辺りのコイワカガミはほとんどが白い花弁なのが珍しい。金山沢からは2時間ほどの登りで木道が現れる。一帯は朝日連峰でも有数の湿原地帯で、左手の高台には鳥原小屋が見えてくるところだ。ここまで来ると高山植物も増えて華やかさが一気に広がる。木道や池塘の片隅ではワタスゲが風に揺れていて、その奥ゆかしい佇まいには、眺めているだけで心が落ち着くようだ。木道の両側にはアカモノ、ミツバオウレン、ハクサンチドリ、ツマトリソウ、ノウゴウイチゴなど、種類をあげれば数え切れないほどで、まるで百花繚乱といった雰囲気に満ちている。その先の大きな池塘ではひときわ華やかなミツガシワがびっしりと広い水面を覆っていた。

 鳥原山の山頂からは大朝日岳や小朝日岳が正面となる。大展望が広がるこの山頂はとっておきの休憩地点でもある。ここにきて清水氏が体調不良を訴えるので大休止とした。久しぶりの重荷で少しバテ気味らしかった。しばらく横になったりしながら疲れた足を休ませることにした。鳥原山までは出会う登山者もなく、静かな山歩きが続いていたが、休んでいると早くも小朝日岳の山頂から下ってくる人も目立った。鳥原山と小朝日岳までの区間は遅くまで雪渓が残るところだが、今年はかなり雪解けが進んでいて通過はそれほど困難ではなかった。無事に雪渓の斜面を通過すれば小朝日岳はもう目の前である。この付近ではシラネアオイやハクサンチドリなどが盛りを迎えていた。

 小朝日岳山頂ではザックをデポして大朝日岳を往復してくる登山者も多かった。明日は大雨という天気予報が気にかかるところだが、今日はまだ天候の崩れる兆しはない。小朝日岳の山頂からは大きく下って熊越へと向かった。最低鞍部からはポツリポツリとヒメサユリが目立つようになった。それは銀玉水が近づくにつれて多くなり、稜線の華やかさも徐々に増して行く。今年は運良くヒメサユリの開花時期と重なったようである。大朝日岳を背景にして何枚も写真を撮ってみる。ここはいつもながらヒメサユリが咲き乱れていて、至福の稜線漫歩を心ゆくまで味わえる区間だった。

 銀玉水まで来ると大朝日避難小屋もまもなくだ。今年の銀玉水は手も切れるような冷たい伏流水が溢れるように流れていた。ここで明日の分も含め7リットルも汲んだためにザックがずっしりと重くなってしまった。銀玉水からは三分の一ほど階段が露出していたが、斜面にはまだ大量の雪渓が残っていた。雪渓を登り切ると辺り一帯にはチングルマやウスユキソウが一面となる。このお花畑を見ているだけでこれまでの疲れを忘れるようだった。

 大朝日岳の避難小屋に入ると佐藤さんと大場さんの管理人に迎え入れられる。みな早めに到着したのか小屋はほぼ満員状態で、ほとんどの人がアルコールが入って盛り上がっていた。足の踏み場もないような状況をみて私達は3階にザックを上げることにした。3階は貸し切り状態のため、他人に気を遣うこともなくゆったりと体を横たえることができた。少し落ち着いたところで私たちも冷えたビールで祝杯をあげた。小屋泊りで一番楽しい夕食の時間が早速始まった。ゲストで参加の遠藤さんは初めての小屋泊りというのに至って元気である。アルコールもすこぶる強く、私たち男2名は終始、彼女に煽られっぱなしであった。最後は野菜たっぷりのラーメンを作って夕食を締めくくり、明日の好天を祈りながらシュラフに入った。

(6月29日)
 
起床は午前3時30分。今日は昼前から雨が降り出す予報が出ているので小屋出発を午前5時と決めていた。階下ではまだみんな眠っているようだったが、窓の外は少しずつ明るみ始めていた。朝食は昨夜のうちにコッヘルで炊いたご飯とカレー。それに味噌汁を添えての至って質素なものだったが、カレーの辛みが疲れた体に食欲を誘った。外に出てみるとまだ雨の降る様子はなく、周りの山並みが全て見渡せるのがうれしかった。
 
 大朝日岳の山頂直下にコイワカガミやウスユキソウのお花畑がある。後方には祝瓶山もそびえていて、この時期のビューポイントだろうか。どこまでも広がりを見せる群落は圧巻である。大朝日岳の山頂には午前5時30分に到着した。ここでは少し寒いほどの風が吹いていた。しかし朝日連峰の最高峰だけあって展望は抜群だ。私にとっては今年3回目の大朝日岳だったが、この山頂に立つといつも感激をあらたにさせられる場所であった。

 西方を見ると雨雲が少しずつ近づいているようだった。ようやくたどり着いた山頂だったが長居は無用だった。雨が降り出す前に少しでも早めに下ろう。眼下に見える朝日鉱泉をめざし、棒尾根のようなナカツル尾根に一歩を踏み出した。

 山頂を後にすると尾根の途上からは左手に小朝日岳や鳥原山、右手には平岩山や御影森山を眺めながら快適に下ってゆく。縦走路とちがって花は極端に少なくなったが、ところどころに点在するミヤマキンバイやハクサンイチゲが単調な下りに彩りを添えてくれた。1時間ほどするとついに耐えきれなくなったのか、ポツリポツリと小雨が降り出した。さらに1時間近く下った付近で雨具を着た。長命水の水場まで下ればブナ林の樹林帯となり展望の楽しみはなくなる。水場から二俣まではこのナカツル尾根でも勾配が一番きついところで膝も痛めやすいところだ。

 二俣まで下りきるとようやく急坂も終わりとなる。二俣からは沢沿いの道を朝日鉱泉に向かうだけである。とはいっても小さなアップダウンが続くうえに、沢をいくつも横断しなければならない。ここも結構時間を要する区間だ。2時間あまりかけて鳥原山への分岐まで戻ると長かった周回コースもようやく終わりとなる。大朝日岳避難小屋を出てからすでに6時間になろうとしていた。雨は不思議と小降りとなり、薄曇りながら日射しさえ伺えるような穏やかな夏空が戻っていた。弘法水という水場で乾ききった喉を潤すと、朝日鉱泉までは残り10分の距離である。今回も花いっぱいに恵まれた朝日連峰の2日間が終わろうとしていた。


朝日鉱泉から大朝日岳を仰ぐ


鳥原湿原のワタスゲ


鳥原湿原 木道とワタスゲ


鳥原山のミズバショウ


銀玉水に向かう


大朝日岳避難小屋とチングルマ


大朝日岳直下のイワカガミとウスユキソウ


大朝日岳直下のミヤマキンバイ


チングルマ(大朝日の小屋周辺)


ギンリョウソウ(ナカツル尾根)


ミツバオウレン(鳥原山)


ハクサンチドリ(鳥原湿原)


ウスユキソウ(大朝日岳周辺)


ノウゴウイチゴ(鳥原山)


アカモノ(鳥原湿原)


ヒメサユリ(熊越付近)


大朝日岳山頂(二日目)


お疲れさまでした(朝日鉱泉到着)


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