【概要】
この時期になると山スキーのエリアも限られてくる。というわけで先週に続いて飯豊連峰である。先週末は天狗平への道路が開通した直後とあって、かなりの混雑だったらしいのだが、今日の飯豊山荘駐車場にはほとんど車が見当たらなかった。わずかに2、3台程度見られる程度である。今日集まったメンバーは5名。夕方からは下り坂という天気予報は気になるが、天候はなんとかもってくれるだろう。準備を整え温身平をのんびりと歩き出した。
温身平はブナの新緑がまぶしくすっかり初夏の装いを見せていた。雪が融けだしたところではカタクリ、キクザキイチリンソウなどが咲き始めている。一方ではシラネアオイ、サンカヨウなども目についた。また、ところどころに倒れているブナの大木が痛々しい。これらはみな大規模な雪崩によるものだろうか。異常なほどにブナの倒木が多いようだ。砂防ダムを過ぎてまもなくすると眼下に雪渓が現れる。うまい水に向かうずっと手前で雪渓に上がれるとは近年ではめずらしいのではないか。雪が多かったのか、融雪がほとんど進んでいないのかわからないが、どちらにしても山スキーにとってはありがたいことだった。さっそくシールを貼って雪渓に乗った。
今日の石転ビ沢はいたって静かな雰囲気に満ちていた。前後には一人、二人が見えるだけで登山者は数えるほど。滝沢出合を過ぎ、梶川の出合と順調に進み、下つぶて石からは45分ほどで石転ビの出合に到着した。右手は門内沢、左手は石転ビ沢である。どちらも残雪は豊富でスキーはまだまだ楽しめるように見える。見上げると澄み切った青空と真っ白い雪渓、そして新緑のコントラストが実に鮮やかだ。遠方を眺めると早朝出発したと思われる4、5人のグループが豆粒のように見えた。
本石転ビ沢を過ぎると斜度が徐々に増して行く。北股沢出合でようやく先行者に追い付くことができた。みなピッケルアイゼンの登山者達だった。ここから柴田氏と上野氏がクトーを装着しシールで登って行く。我々3名はスキーを引っ張りながらの坪足となる。梅花皮小屋までは気を抜けない急勾配の連続だが、幸いにステップがあるのでアイゼンも不要であった。残雪は豊富だったが中ノ島は一部露出している。最後の急坂を登り詰めると梅花皮小屋が突然目の前に現れた。
小屋の周りでは数人が休憩中だった。この頃になると快晴だった空模様も少しずつ薄雲が広がり始めている。梅花皮小屋での休憩は短時間で切り上げて北股岳へと向かった。途中まで登山道が露出していたが、上部にゆくに従って残雪が現れてくる。北股岳の山頂部分だけは雪がなかったものの、周りはすべて分厚い雪に覆われていた。山頂から北股沢をのぞいてみると雪庇の張り出しは全く見当たらず、滑り出しは至ってフラットだった。山頂での展望を楽しめば早速滑降開始となる。
初めての人ならば北股岳の山頂から体を乗り出すだけで、沢底へと真っ逆様に落下するような恐怖感に驚くことだろう。そんな垂直のような斜面に柴田氏は躊躇いもせず先頭を切って飛び込んで行く。他のメンバーも始めこそ恐る恐る降りていったが、コンディションがよいのでまもなくみんな思い思いに滑降を楽しんでゆく。さすがに下部付近はクラックが大きく口を開けているので、そこは注意深く通過しなければならなかった。滑っても滑っても北股沢は長く、慎重なスキー操作を求められたが、まもなく北股沢の出合まで降りてくるとようやく核心部が終わったのを実感する。右手の石転ビ沢も急斜面なのだが北股沢を滑り終えてみると、緩斜面に見えるから不思議である。ふっと気が和らぐと緊張感で喉がカラカラになっていることに気付く。安全地帯に降りてきたところで小休止をとることにした。北股沢の出合は落石も要注意だが、今年は雪庇が落ち尽くしているためそれほど危険というほどではなさそうだった。
北股沢ノ出合からは適度な緩斜面となりのんびりと下って行くだけだった。例年ならば石転ビノ出合で夏道に上がるところだが、今年ははるか下まで下って行けるのがありがたい。泥や木の枝が散乱するようになると下つぶて石もまもなくだ。小石なども散乱していてスキーが可哀想だったが、かまわずに夏道の合流点まで滑り降りた。スキーは泥に汚れ、ソールはみなガタガタに傷ついていることだろう。先週末のおむろノ沢に比較するとあまりにあっけないような石転ビ沢だったが、例年よりも長い距離を滑走して両足は結構疲れている。早めに温泉に入ろうと思いながら夏道を下り始めた。
いざ、出発 |
静かな温身平 |
梅花皮小屋直下 |
梅花皮小屋と北股岳 |
大日岳を背に北股岳の登り |
北股沢滑降! |
北股沢滑降! |
北股沢滑降! |
北股沢下部付近 |
北股沢滑降! |