山 行 記 録

【平成20年4月12日〜13日/月山〜肘折温泉】



月山(小岳への登りで)



【メンバー】西川山岳会13名(柴田、佐藤辰、遠藤、荒谷、草薙、上野、石川、阿部、布施、鳴海、荒木、大場、蒲生)
(ゲスト)斎藤+東京2名(平野 ※デナリ店主&岡田)+宮城県「朋友会」メンバー5名 (合計21名)
【山行形態】山スキーによる山行、避難小屋泊、冬山装備(シュラフ、スコップ等)
【山域】出羽三山
【山名と標高】月山 1980m
【地形図】(2.5万)月山、立谷沢、肘折(20万)仙台
【天候】(12日)風雪、(13日)晴れ
【温泉】肘折温泉「肘折いでゆ館」350円
【行程と参考コースタイム】
(12日)リフト上駅8:45〜月山11:50−12:10〜千本桜13:10(1490m)〜立谷沢橋14:30(930m)〜念仏ヶ原避難小屋(1080m)(泊)15:30
(13日)小屋8:00〜小岳8:50-9:10〜978m10:00〜ネコマタ沢10:10〜778m〜大森山12:00-12:50〜朝日台13:50
「肘折いでゆ館」=(車)=そば屋=大石田駅=西川町開発センター(解散)=(車)=自宅19:30

【概要】
 月山のツアーコースでは著名な「月山〜肘折温泉」。その滑走距離はゆうに全長20kmを超えるロングコースである。月山からの東斜面は大雪城とも呼ばれ、その広大さは言葉などではとても表せないほどのものがあり、その滑走は天候に恵まれれば終生忘れ得ないものとなるだろう。立谷沢川の沢底から少し登れば秘境、念仏ヶ原に出る。しかしその念仏ヶ原の奥に建つ二階建ての大きな避難小屋も、4月上旬には通常、大量の積雪に埋まり、まだ影も形も見られない。そして念仏ヶ原からは変化に富んだコースが続くので、山スキーに慣れた人々でさえもなかなか飽きさせないものがある。終点が大蔵村の肘折温泉というのもいい。滑り終えた後は古来からの鄙びた温泉に浸って帰宅の途につけるのだ。このルートは月山では最大最長のコースでもあり、山スキーの愛好家達を魅了してやまない。

(4月12日)
 この週末は恒例になっている山岳会主催の月山肘折だ。今回のメンバーは西川山岳会関係者が14名。そして宮城の朋友会メンバーが5名。さらに東京からのゲスト2名と、総勢21名という大人数の構成となった。姥沢駐車場はみぞれ混じりの小雪が舞う天候であった。この昨年と同様の天候を見て一同愕然とする。予報によれば昼頃から回復する模様なのだが、山の天候はあてにはならないから期待はしない方がよさそうだ。

 リフト終点では予想通りホワイトアウトであった。山スキーのグループも多くいたが、みんな二の足を踏んでいるようだった。シールを貼り終えると私たちは全員一列縦隊を組んで出発となった。天候次第ではどうなるかはわからないにしても一応牛首をめざすことにした。今回は金姥をめざすルートではなく、沢底に向かった。下るに従って風は弱くなってゆく。しかし気温はかなり低い。雪面は堅く凍っていて、シール登高の限界を感じながらの歩きだった。そのためもあってスキーアイゼンを持っている人は早めに装着し、またある者はブーツにアイゼンを装着した。もちろんアイゼンの無いものは坪足だが、キックステップは容易には効きそうもなかった。急斜面ではさらに厳しい登りとなった。視界はほとんどないので時々後方を確認しながらの行動が続く。鍛冶小屋付近まで登ると風はさらに激しさを増した。右往左往しながら鍛冶小屋を探すのだが見つからない。時々GPSで現在位置を確認するもののはっきりとした現在位置はなかなかわからなかった。

 月山山頂には3時間かかってようやく登りついた。通常は2時間もかからない行程だが、悪天候と大人数のために1時間以上も余計にかかっている。ミゾレ混じりの風雪に晒され続け、氷が全身に張り付いていた。山頂では小屋の陰に逃げ込んで風を避ける。楽しみの休憩もあまりに寒くて休んだ気分にはなれなかった。メンバーの中にはこの月山が初めての人もいるので、下る前に月山神社の山頂を踏むことにした。神社はほとんど雪に埋もれており、屋根の頭だけが出ている。それも氷詰めの状態であった。

 月山の山頂からは大雪城を大滑降の始まりのはずだった。しかし今日のように視界がない悪天候ではまたも坪足で下るしかない。昨年に続いて今年も大雪城を滑れないというのがなんとも悲しい。しばらく黙々と千本桜をめざして歩き続けた。千本桜が近づくにつれてようやく空が明るくなり始める。こうなると現金なものでメンバーからは笑顔が溢れ、大きな声で会話も飛び交うようになる。千本桜からは待ちに待ったスキー滑走も可能となった。しかし念仏ヶ原の避難小屋はこの時点ではいくら見渡しても見えなかった。積雪が多いだけに今年は雪に埋まっているのかもしれなかった。そんな様子が知らず知らず伝わったのかみんなの顔にも暗雲が広がり始める。今回は小屋は出ているだろうと、テントは持参していないのだ。小屋を掘り出せなければみんな野宿だぞ、というリーダーの説明をきいて、みんなから笑顔が消えたような気がした。この時点では小屋を掘り出せない場合雪洞泊も考えていた。

 千本桜の急斜面からはスキー滑走の始まりとなった。みんな水を得た魚のように弾け飛んで行く。雨で湿った雪面はときどきブレーキがかかったりしたが、もちろん坪足で歩くよりは遥かに快適である。びゅんびゅんと飛ばして行くとたちまちのうちに立谷沢川の沢底へと降り立った。立谷沢川はほとんど雪に埋まっていて、今年の大雪をあらためて再確認させられる。立谷沢川に架かるあの大きな橋でさえ姿形も見えなかった。それでも上流側で1カ所穴が開いているのを見つけた柴田氏と上野氏の二人は、さっそく釣り竿をザックから取り出してイワナ釣りを始める。残りのメンバーは小屋の掘り出しのために先を急がなければならなかった。時間はすでに3時近いのだ。シールを再び張って斜面を登ってゆく。まもなく飛びだした広大な雪原は秘境念仏ヶ原だ。この頃になると月山の姿こそ見えなかったものの、天候はかなり回復する兆しが見え始めていた。
 
 幸い念仏ヶ原の避難小屋は屋根の頭だけが出ていた。これをみてみんな胸をなでおろしたのはいうまでもない。入口こそ塞がってはいたものの、屋根さえ出ていれば掘り出すのはたやすかった。みんなでスコップを取り出し、30分ほど入口の掘り出し作業に精を出した。入口が掘り出されるとさっそく小屋の中に入った。そして落ちついたところでプレ乾杯となり宴会の始まりだ。小一時間ほどするとようやく待ちかねた上野氏と柴田氏の到着となりあらためて乾杯となった。みると上野さんは見事なイワナを抱えており、その大きな獲物にはみんな拍手喝采であった。さすが釣り師である。このイワナはたちまち網で焼かれてしまい、骨酒となってしまったのはもちろんである。この日のメニューは荒木料理長によるすいとん鍋だった。まるでお雑煮のような熱々としたすいとんに疲れた体も徐々にほぐれていった。私は例によって早めにシュラフにはいったが、宴会は夜遅くまで続いた。

(4月13日)
 
翌日は朝から晴れ渡った。昨日は全然見ることも出来なかった月山が朝霧のなかに浮かび上がっていた。まもなく日の出を迎えようとしていた。今日は願ってもないツアー日和に恵まれそうであった。朝食は餅入りラーメンで始まった。しかし、食い意地が張っていたのだろう。出来上がったコッヘルにみんなが手を突っ込んだためにテーブル一面に飛び散るという珍事件が発生する。それでもテーブルからかき集めた麺を摘んだり、餅を拾いあげては口に運んだ。何しろ食べなければ今日の行動は出来なくなるかもしれないのだ。

 小屋出発は8時。昨日の視界の悪さがまるでウソだったかのように今日はどこまでも見渡せた。すでに陽は登り月山は目を見張る程に輝いていた。小屋からはいつもの快適なシール登行が続いた。小岳には約50分で到着した。みんなの足並みが揃っているせいなのか、それとも天候がよいおかげなのかペースはかなり早い。2日間がんばってくれたシールはここでご用済みとなる。休憩が終われば快適な滑走の始まりだ。みんなの滑降シーンを撮影するために私は先に滑ってゆく。しかしみんなは待ちきれないのか合図もしないうちに次々と斜面に飛び出していった。小岳からは赤砂沢沿いに下ってゆき、鞍部からは978m峰への登り返しとなる。次はお待ちかね、本日のメインステージであるネコマタ沢だ。ここでの滑走は説明も無用だろう。早めに下った人から高みの見物となる。みんなで転べばなにも恐くはないのだ。ここは本日最大の見せ場でもあった。ネコマタ沢の末端からは778m峰へと登って行き、こんどは大森山直下まで長いトラバースとなる。ここは地形図をみてもよくわからない区間だろう。次々と変化するコースは何回経験しても飽きさせないものがある。あまりに快適すぎるのか足もほとんど疲れることがなかった。

 大森山直下からは本日最後の急登が待っている。積雪も適度にあるので登りの支障になるものはなかった。いつもは汗だくになるこの登りも今日はペースも遅いせいか、ほとんど汗はかかなかった。登り切れば早めに到着していた仲間特製の宴会用テーブルが早くも出来上がっていた。ここは一年に一度だけ開店する”レストラン大森山”だ。乾杯とともに残りの食材やアルコールなどが雪のテーブルに広げられ、しばしの歓談に一同盛り上がった。

 大森山山頂からは最後の滑走となる。ブナ林を縫って行くこの区間は急斜面ながらもツリーランが楽しめるところだ。アルコールの勢いもあってみんな大胆な滑りを繰り広げる。そんな写真をバチバチと撮影するのは楽しいものであった。林道に降り立てば今回のツアーも終盤だ。林道をショートカットで滑って行くと肘折温泉の朝日台に飛び出す。前方にはすでに私達を待ちかねていたマイクロバスが見えた。このマイクロバスは我が山岳会の会長自らが、西川町から遠路はるばると運転してきてくれたものである。感謝、感謝、大感謝だった。

 下山後、私達は「肘折いでゆ館」のしっとりとした湯に浸ってこの二日間の汗を流した。その後は舟形町「重作」の美味しい蕎麦に舌づつみを打ち、東京からの特別ゲスト2名を大石田駅まで送り届けると一路、西川町の開発センターへと向かった。


月山山頂


朝の念仏小屋


小屋前のモルゲンロート


小岳へ向かう


小岳への登り


レストラン”大森山”開店!


大森山からの滑降


大森山からの滑降


月山をバックに西川山岳会総勢16名(念仏小屋前)

inserted by FC2 system