山 行 記 録

【平成20年3月9日(日)/柳ノ沢〜村山葉山〜大増森沢



大増森沢の滑降シーン



【メンバー】8名(柴田、山中、丹野、荒谷、上野、工藤、蒲生、大場)※1名途中撤退
【山行形態】日帰り
【山域】月山
【山名と標高】 大滑山953.5m、村山葉山1461.7m
【地形図】(2.5万)葉山、海味、(20万)仙台
【天候】快晴
【参考タイム】
柳ノ沢7:10〜尾根取付8:00〜大滑山9:20〜1019m峰〜村山葉山12:00-12:40〜大僧森13:00〜 大僧森沢沢底13:20〜林道合流点〜駐車地点15:40(353m)

【概要】
 積雪期の村山葉山へは、例年4月下旬頃の除雪完了を待って、畑集落から往復するコースが一般的である。というよりもこのコースしか無いといった方がいいだろう。そういう意味で、寒河江市幸生の柳ノ沢集落から尾根に直接取り付く今回のルートは、夏道などどこにもない全くのバリエーションルートであり、積雪期限定のコースである。ここは昨年に続いて二回目となる。

 まるで初夏を思わせるような快晴の空が朝から広がっていた。そして今日はかなりの気温の上昇が予想されている。ハードなコースだがなかなかゆけないコースとあって今日は9名ものメンバーが集まった。天候にはなんの不安もないツアー日和だが、それだけに日焼けのほうが心配になるようだった。出発前にはみんな念入りにお化粧を行った。

 除雪終了地点である柳ノ沢集落からシール登高となる。陽射しは強いものの気温はまだまだ低く、雪はカリカリに凍っている。いわゆる堅雪のためにラッセルなど全く必要はなく、みんなルンルン気分で歩いて行く。小一時間の林道歩きが終わると右手の斜面への取り付きだ。すでに林道沿いにはワカンのトレースが一人分あったが、途中で私たちは尾根へと上がり、このトレースとは離れてゆく。尾根に上がると陽射しはますます強くなってくるようだった。途中でみんなアウターを脱ぎ、終いには冬シャツまでも不要となり、下着一枚となる。もちろん手袋も不要で素手でも十分だった。あまりの気温の高さに下りの雪質が心配になるほどであった。

 快適な尾根歩きを楽しんでいると、まもなく左手からは月山が大きく見えてくるようになる。月山の左手には以東岳や大朝日岳へと連なる長い稜線が続いている。前方に葉山の稜線が見えてくるとまもなく大滑山の直下となる。ここまで約2時間。今日のトップはハイペースなのでみんなについて行くのがやっとだ。この大滑山の直下で小休止をとりながら疲れた足を休めた。遅れていたメンバーもぞくぞくと登ってきたが、JTX氏だけがなかなかやってこない。その後JTX氏からは足の調子がいまひとつだという無線が入り、結局リタイヤすることになった。JTX氏は昨日の月山足慣らしで逆に足をつぶしてしまったらしかった。

 大滑山からは1019m峰を卷いて行くとちょうど前方の高台との鞍部に出る。この最後の急坂を登り切ると別世界が広がっているのである。ここからはどうしても力が入り、したたかに汗も流れた。登るに従い見晴らしも良くなってくるばかりだ。今登ってきたばかりの大滑山や1019m峰ははるかに遠ざかっていた。そしてようやく高台に登り切ると前方には驚くような葉山山頂と稜線が目に飛び込んでくる。そこは見渡す限りの雪原が広がっており、この光景を初めて目にしたときは昨年も驚いたものだが、その感動は今回も変わりがなかった。まるで桃源郷のような場所のようでにわかには信じられないほどである。これを見ただけで長い登りの疲れなど全て吹っ飛びそうなほどであった。

 小休止をとってからこの雪原を歩いて行くと葉山の直下に着く。見た目ほどの高度差はなく、はるか遠くに思えた村山葉山はもう目前であった。標識の立つ山頂は冷たい風が吹いていた。北には鳥海山の白い頭の部分だけが雲海に浮かび、月山の山頂はというと雪煙が舞っている。たぶん強烈な風が吹いているのだろう。山頂からは船形山や蔵王連峰、吾妻連峰をはじめてとして、遠く秋田県や岩手県の山並みまで見えるようである。どこを見渡しても雲ひとつ無い快晴は、この時期としては滅多になく、それだけに写真は撮り放題だった。

 風が和らぐ場所を選んで、山頂で昼食を取ることにした。しかしその楽しい筈の昼食もあまりに寒く、30分ほどで切り上げなければならなかった。大僧森まではシールをつけたままで稜線をたどってゆく。稜線の東側に張り出した雪庇が大きいので、慎重に端から10mほども離れて歩いていく。それにもかかわらず私は雪庇を踏み抜いてしまい、危うくクレパスに落ちそうになったほどだった。幸いに丹野氏に腕を確保してもらったが、この付近はさすがに要注意区間だ。

 山頂を離れると先ほどまでの寒さがウソのように薄れてゆく。強烈な風はピンポイントで流れているようだった。大僧森への大きな登り返しが終わればいよいよ滑降の開始だ。大僧森から南の尾根には雪庇が張り出していて、一部では崩壊しブロック雪崩が発生していたが、沢底を滑ってゆくぶんには問題なさそうだった。シールをはがしたメンバーから次々斜面に飛び込んでゆく。

 大僧森沢は南斜面だけに雪は重くなっていたが、春の息吹を体に感じながらの滑降は実に快適だった。いろんな雪質があってこその山スキーでもある。どこをどう滑っても良いような一枚バーンが大きく広がっているのだ。滑っていると雪質が突然変わり、急斜面では華麗なターンを決めても、平坦部分のなんの変哲もないところで転倒するものが続出したりしたがそれもまた楽しい。雪崩の危険を感じるような箇所は慎重に通過してゆき、まもなく林道との合流点につくとそこで大休止となる。ここからは正面に大僧森沢が下っていて、左手方向に道形が伸びているところだ。昨年はこの道型に沿って林道を下ったのだが、今回は予定どおり大僧森沢沿いに進むかどうか悩むところだった。

 結局、積雪が多いので沢は下流まで塞がっているだろうと、大僧森沢をこのまま下ることになった。もちろん全員が初めてのコースである。こんなところをスキーで滑走する者などはいない。いったん下ればエスケープルートが全くないのでリスクも大きいといえば大きいのだが、今年のように恵まれた機会はそうそうないだろうと、地形図をにらみながら決行することにした。

 大僧森沢を下り始めるとまもなくデブリが至る所に点在しているのが目についた。まさしく雪崩の巣のようなところで、冷や汗のでる思いがするようだったが、幸いにみな崩れた後だった。しかしデブリの通過はさすがに気分の良いものではないので慎重に下ってゆく。

 標高が600m前後まで下ってくると、沢も狭くなりコース取りも複雑になって行く。杉林が目立つようになると、下界が確実に近づいているようだった。厳しいと思われた大僧森沢も今回はこの大雪にだいぶ救われたようである。想像した以上の滑りを楽しむことができて、またバリエーションルートらしい雰囲気を十分に味わうことができて、私は気持ちがおおいに高揚していた。ひとつひとつ難所を越えて行くと、まもなく前方に砂防堰堤が見えてくる。この付近まで来ると林道の道型も明瞭になり、最後は広々とした雪原に飛び出して大僧森沢コースも終了となる。柳ノ沢集落がもう目前に迫っていた。みんなの顔には疲労の色が濃くなっていたが、それ以上に充実感に満たされているように見えた。


柳ノ沢の登り始め


気持ちの良い尾根歩き


桃源郷


葉山が目前


大僧森山で


大僧森沢滑降


大僧森沢滑降


大僧森沢滑降


柳ノ沢〜村山葉山〜大増森沢の周辺MAP


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