山 行 記 録

【平成20年2月9日(土)/朝日連峰 白太郎山】



山頂から祝瓶山をバックに



【メンバー】2名(上野、蒲生)
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】朝日連峰周辺
【山名と標高】 白太郎山 1,002,8m
【地形図】(2.5万)徳網、(20万)村上
【天候】快晴
【装備】ジルブレッタ404 登山靴(上野)、テレマークスキー(蒲生)
【参考タイム】
駐車地点(325m)8:15〜766mピーク11:00〜白太郎山12:30-13:10〜駐車地点14:10
  
【概要】
 白太郎山は徳網山と祝瓶山のちょうど中間付近に位置しており、荒川の左岸に聳える山である。朝日連峰とはいっても祝瓶山からなんとか尾根がつながっている程度だから、どちらかというと朝日連峰周辺の山ということになるだろうか。この山には夏道はないので、雪のあるこの時期にしか登れない。徳網山と比較すると標高は120mほど高く、1000mをちょっと超える。登り口で325mほどだから標高差は約700mで、夏であれば2時間程度というところだろうが、冬は豪雪地帯のために倍以上の時間を要する山となる。

 快晴の予報が出ているというのに今日のメンバーは須賀川から駆け付けた上野氏一名であった。この白太郎山ほど山スキーに向いている山はなかなかないだろうと知ってから、訪れるのは3年連続となる。昨年は残念ながら少雪のため思うような滑降は望めなかったが、今年はすでに3m前後の積雪はあるだろうと見込んでいた。例によって小国山岳会の関氏に挨拶をしてから登り始める。関氏によると明日は高橋金雄氏のグループが7、8名ほどこの白太郎山を計画しているのだという。驚くばかりだがこの白太郎山もメジャーな山になりつつあるということだろうか。

 県道からは見上げるほどの積雪があって道路から直接登ることはできない。そのため関氏宅の前から歩かせてもらうことにした。昨日のものと思われるカンジキの踏跡があったが、それでも凄い積雪量である。いつも登っている正面の急斜面はとても登れそうもないので左手から斜面を卷くようにしながら登って行く。杉林にはいるといくらかラッセルは楽になったもののそれでも膝ほどスキーは沈んだ。まもなく杉林を抜けると、ミズナラやブナの混じる樹林帯の尾根歩きになる。樹林といっても疎林帯で、いまからスキー滑降が楽しみなところだ。付近には兎の踏跡があるだけで森閑とした雪原には物音ひとつ聞こえない。明瞭な尾根になるとさらに厳しいラッセルとなる。まもなく背後に聳える徳網山が眼下となり関氏の家がマッチ箱のようだ。この光景はまるでメルヘンの世界を思わせた。

 春のような陽射しが降り注ぐ中、気持ちの良いラッセルが続いた。少しでもトラバースを試みると腰上から胸までも雪に埋まってしまいそうだった。とめどなく汗が流れるため途中でウールのシャツを脱ぎ、ついには下着一枚となる。喉が乾くと手当たりしだいに周りの雪を食べた。765mピークを過ぎると白太郎山から派生する尾根や名もないピークなどが前方に見えてくるようになる。振り返ると飯豊連峰が陽射しを浴びて白く輝いていた。昨年は潅木が埋まりきっておらず、登るにも一苦労したのだが、今年の積雪は昨年とは雲泥の差である。ヤブは全て埋まっているので、スキーで下るにはなんの支障もなさそうである。疎林帯には手つかずのバージンスノーがどこまでも続いていた。徳網山が木立に隠れるようになると、今度はそれに反比例するかのように五味沢の集落や飯豊連峰がよく見えるようになった。

 やがて木立が少なくなり疎林帯となるとようやく白太郎山の山頂に到着する。ここまでほとんど休憩らしい休憩をとらなかったにも拘わらず4時間以上を要していた。山頂に登り着いた瞬間、前方には朝日連峰の山並み、そして祝瓶山が突然目に飛び込んでくる。この感激はいつ来ても新鮮であり驚愕でさえある。この展望を眺めることができただけでこれまでの苦労は全て忘れるほどだった。GPSによる標高は地形図よりも10mほど高い。上野氏も全く同様というのだから間違いないのだろう。ということは山頂付近での積雪は10mあるということである。それを裏付けるように大量の積雪がこの山頂付近一帯を覆っていて、その光景にはただただ唖然とするばかりだ。山頂では無風快晴。その穏やかさは恐くなるほどである。ツェルトも出す必要もなく、ザックを下ろしてここでしばらく大休止とした。昼食の合間にも手当たり次第に写真を撮った。昼食はいつものカップ麺だったが、ここではどんな御馳走よりもこの大展望がメインディッシュのようであった。

 休んでいる間に西の空から少しずつ薄雲が広がり始めていた。空模様が少し変わってきたのを機会に滑降に移ることにした。下りはもう何も云うことが無いだろう。腰までも埋まるほどの深雪は、斜度もあるのでスキーは驚くほど良く走った。上野氏はこの深雪の上を飛ぶようにショートターンで降りて行く。登山靴でこの滑りはまさしく名人というしかない。背後から眺めているとまさしく雪の上をふわふわと飛んでいるようにさえ見えるのだ。この快適さはちょっと筆舌に尽し難いといったほうがよさそうである。登り返しがひとつも無いというのもいい。さらにブナ林となると底なしのようなフカフカのパウダーとなる。この浮遊感漂う滑降は西大巓の東斜面を思い出すようだった。

 登りで4時間以上かかったところもスキーだとたちまちである。県道近くの杉林が目前となったところで北側の斜面に降りて行き、トラバース気味に滑走してゆく。前方には関氏邸が見えてくるとツアーのエンディングもまもなくとなる。結局、今日の白太郎山は私達だけの貸し切りだったようである。たった1000m程度の山でありながら、これほど山スキーに向いている山もかなり珍しいのではないか。それもこれもこの徳網地区の豪雪のおかげなのは間違いなさそうである。あまり他人には教えたくないほどの快適さを今年も味わった一日が終わった。



快適なラッセル


飯豊連峰も眼下に


山頂直下


朝日連峰が一望


祝瓶山をバックに


大展望!祝瓶山


下部付近を滑る上野氏


駐車地点


ルートマップ

inserted by FC2 system