山 行 記 録

【平成20年1月26日(土)/吾妻連峰 土湯〜高山下り】



青空が映える高山山頂と巨大な反射板



【メンバー】3名(上野、荒谷、蒲生)※西川山岳会
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】吾妻連峰
【山名と標高】高山1804.8m
【地形図】(2.5万)土湯温泉、(20万)福島
【天候】晴れ後雪
【参考タイム】
土湯温泉男沼駐車スペース7:45〜高山登山口9:00〜1250m尾根10:30〜高山13:30-14:00〜1250m尾根(休憩)〜登山口15:50〜男沼駐車スペース16:45

【概要】
 高山下りは高湯温泉からの縦走が定番のルートだったが、あづまスキー場が閉鎖された今では少々困難なツアーコースとなってしまった。今回のコースは登山口までの林道歩きに加え、また登りの標高差が1150mと結構あるためか、冬山としてはほとんど登られてはいないようである。このルートは途中までだが先週にも登っている。しかしコースミスと単独ラッセルに時間をとられすぎてしまい、全行程16kmも歩いたにもかかわらず山頂には届かなかった。

 昨日、一昨日と東北や北陸では大雪、暴風雪の天候が続いたが、その荒れ模様もこの週末になりようやく終息した。土湯温泉から林道を進み、男沼駐車スペースに着いてみるとすでに10台ほども車が停まっていた。しかし、林道に続くトレースは全く見当たらず、みんなワカサギ釣り目的のようであった。今日は駐車場でさえも結構な積雪がある。歩き出してみるとラッセルというほどではないものの、風雪に晒され続けた雪が異様に重く、ジワジワと両足にきいてくるようだ。この1週間で想像以上の積雪があったと思われるものの、しかし今日は二人の頼もしい同行者がいる。前回間違って直進した林道を今度は注意深く右折した。すると見慣れた景観がすぐに甦ってきて、前回は単純な間違いだったとわかる。気付いてみれば何と云うこともないコースなのだが、うっかりミスとはつくづく恐いものだとあらためて思った。林道は適当にショートカットをして登って行くと1時間ちょっとで高山の登山口に到着し、あまりのあっけなさにいささか拍子抜けのする思いだった。

 登山口の標識を見れば1週間前よりもずっと積雪が増しているのがわかった。ここからのラッセルはいよいよ本格的となる。1025mピークをトラバースしてゆくと雑木林の疎林帯で、林間に陽射しが降り注ぐとまぶしいほどに雪面が煌めいた。ここはラッセルしていても実に気持ちの良い区間だ。1250m尾根には高山登山口から1時間30分で到着した。先週は2時間30分かかっているところも今日は1時間も短縮している。当然ながらそれは3人のラッセルと単独行の違いである。この分だと山頂は楽勝に思えた。このヤセ尾根が五合目とすれば昼頃には山頂を踏めそうだと算段した。ヤセ尾根からもほとんど休まずに交代でラッセルを続けて行く。コースは尾根に沿って真っ直ぐに登って行くだけなので単調といえば単調である。しかし今回の深雪は簡単ではなかった。膝ほどのラッセルなのだが徐々に斜度が増すと直登は困難となり電光形に登って行く。高度が1500mを過ぎるとさらに傾斜が増した。雪はパウダーなのだが一歩一歩がきつく、疲れたらすぐに交代するといった要領で少しずつ高度を稼いだ。

 歩き始めておよそ6時間。ようやく巨大な反射板の立つ高山の山頂に着いたときには予定していた時間を大幅に過ぎていた。時間がかかったとはいえ、今回の大雪直後としては、順調に山頂を踏んだと思うべきなのだろう。途中では小雪もちらついたりしたのだが、着いてみれば山頂は青空に覆われている。さすがに稜線だけあって風の強さは半端ではなかったが、この好天は文句無しにうれしい。

 遅い昼食は山頂から少し下がったところでとることにした。私達がザックを下ろした場所はまるで春のような日だまりの空間だった。スキーをはずすと体が胸までも沈んだ。反射板が立つ山頂付近は強風に地肌が半分露出していたが、その分だけ東斜面や南斜面は膨大な吹き溜まりとなり、恐ろしいほどの積雪となっているようだった。あまりの雪の深さに思わずバランスを崩してしまうと、ストックだけでは容易に抜け出せそうもなく焦った。2本のスキーを手がかりにしながら、なんとか雪穴から這い出さなければならなかった。ここではカンジキはおろか、スノーシューでさえも行動は困難だろうと思われた。足場を固めて落ちつけば、軟水やコーラでさっそく乾杯だ。乾ききった喉を潤すと疲れた体に生気がみなぎってくるようであった。

 昼食も終わればお待ちかねの滑降だ。このコースは登り返しがないのでもうシールの出番はない。ここまでがんばってくれたシールはザックの重石にしてしまおう。山頂からはいつもであれば南西に少し進み大斜面を下って樹林帯に入るのが高山下りの正規ルートだが、今回は登ってきた直登ルートを下った。ひとつには時間が予定よりも遅れていることと、予想外にも直登ルートは滑降に適した斜面が続いているのを登りで確認していたからである。樹林は少し混んでいるとはいえ、恐ろしいほどの深雪はいたるところに切り開きがあって、どこでも下れるから快適そのものだった。みんな雄叫びをあげながら粉雪を舞い上げて行く。まさしく波乗りのような浮遊感をしばらく味わいながら下った。急斜面が終わり平坦部になっても自分たちのトレースをたどるとスキーはよく走ってくれた。これがトレースもない縦走だったら、下りのラッセルにかなりの時間をとられただろう。そう思うとこの往復コースももっと登られてよいのかもしれなかった。すいすいと下っていると、たちまち1250mのヤセ尾根となる。いくら快適とはいっても一気に下ってきて両足はかなり疲れていた。ここで骨休めと称して小休止をとった。

 この頃になると薄暗さも感じるほどの小雪が舞いはじめていた。ヤセ尾根から下り始めると新しいトレースがあるのに気付いた。どうやらヤセ尾根までは我々以外にも登ってきた人がいるようだったが、すでに下ったのか姿はなかった。途中から登りのコースをはずして真東に開けている急斜面に出た。ここも短いながらも激パウダーを楽しみながらのショートカットである。道無き道を自在に下れるスキーの機動力のすごさをあらためて感じていた。どこでも歩ける、登れる、滑れるという雪とスキーによるマジックである。林道に合流するとあとは登山口までまっしぐらだった。登山口からはおとなしく林道を下るはずだったが、私の不注意から落とし物探しにと、再びショートカットのルートをたどった。

 まもなく日没が迫っていた。男沼の駐車スペースには人の姿はなく、車が数台残っているだけだった。新雪がうっすらと車を覆っていて、遠くの景色がほとんど見えないほど、本格的に雪が降り始めていた。往復17.6km(往路9.0km、復路8.6km、いずれもGPS計測)。そしてちょうど9時間という長い一日が終わった。

 


気持ちの良い疎林帯のラッセルが続く

深雪と静寂の山頂付近


ようやく高山山頂に到着です


高山山頂で


山頂直下でご機嫌な二人


今日の深雪は転んだら最後、自分で起きあがれません


パウダー満喫!


駐車場でも新雪が5センチ積もっていました


今回のルートマップ

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