山 行 記 録

【平成20年1月3日(木)/蔵王連峰 澄川スキー場から刈田岳



避難小屋の筆者(上野氏撮影)



【メンバー】2名(上野、蒲生)※山頂付近で山中さんと合流
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】蔵王連峰
【山名と標高】刈田岳 1,758m
【地形図】(2.5万)蔵王山、(20万)仙台
【天候】風雪
【行程と参考コースタイム】
リフト終点10:15〜(中央コース)〜刈田岳12:20-13:00〜すみかわスノーパーク駐車場14:30
  
【概要】
 年末から新年にかけて連日降り続いた雪もようやく小康状態になったようである。山形県内は久しぶりに大雪注意報などが解除され、山形市内を走っていると空の一角には青空ものぞいて、山スキー日和が巡ってきたように見えた。快晴になるだろとういう宮城県の天気予報を見て、久しぶりに澄川スキー場に向かった。約2週間ぶりの山だが、この正月休みで体はすっかり弛んでしまい、今日のモチベーションはいつになく高いようである。遠刈田温泉からエコーラインに入ると、蛾々温泉の分岐付近で山岳会の上野氏と合流する。しかし、好天だったのは下界だけだったらしく、すでに車を揺らすほどの強風が吹いていた。近くのえぼしスキー場も、ゲレンデ付近は見渡せたものの中腹から上は薄黒い雪雲に覆われていて、山頂付近は全く見えなかった。

 スキーセンターからは3本のリフトを乗り継いでリフトトップへ。しかし、リフトに乗っていても強風のためにときどき運転が停止した。山の天候はやはりあてにはならないものである。寒気がまだ抜けきらずに、季節風が蔵王連峰を越えて吹きおろして来るようだった。リフト終点では私たちの他に2名が準備中で、シールを貼り終えるとみな雪上車の跡を歩き出していった。

 スキー場の係員からは山頂をめざしていった登山者が数名いるのを聞いていたのだが、樹林帯にはトレースがひとつもなかった。みんな観光道路に沿って歩いていったのかも知れなかった。このスキー場では雪上車による刈田岳までの観光ツアーを毎日実施している。荒れたときにはこの雪上車の踏跡をたどることができるので、少々の悪天候でもそれほど心配のないコースではある。しかし今日のようなブリザードでははじめから目出帽をかぶらなければならないほどだった。

 私達はノントレースの樹林帯へと踏み出していったが、樹林帯に入ってみると意外とスキーは沈まず、少し拍子抜けのような感じだ。潜ってもせいぜい20cm程度なのでラッセルというほどではない。これならばどこでも登って行けるようだった。方角も確認せずに登ったため変な沢状の場所に出てしまい、ルートを少しずつ西側にとりながら本来の中央コースに軌道修正してゆく。途中、再び観光道路に飛び出したところで埼玉からきたという単独行と合流する。しばらく雪上車の踏跡をたどるものの、途中から尾根に取り付いたところで埼玉氏とは別行動となった。樹林帯を抜けると強烈な風が吹き付けてくるようになった。今日の風の強さはハンパではない。自然の猛威が私達に容赦なく襲いかかってくるという感じで、ほどなく目の前が見えないほどのブリザードとなった。

 先行していた単独行2名ほどが途中で休んでいたが、追い越すときに声をかけてみると、あまりの悪天候にこのまま引き返すようだった。私たちは中央コースのポールを頼りにしながら登って行くが、それさえも次第にわからなくなる。頂上直下の急斜面となるとクラストしたアイスバーンとなった。目出帽はバリバリに凍り付いている。サングラスも表面が凍ってしまい、雪面の凹凸が全然わからなかった。やがて斜度が落ちてくると頂上が近いのがわかった。しかし視界がないために肝心の避難小屋がわからない。風雪の中を右往左往していると凍り付いた避難小屋が突然目の前に現れた。

 山小屋では単独の人が一人休んでいるところだった。しばらく話をしているうちにその人が宮城の荒井さんだとわかってお互いに苦笑する。昨年か一昨年にもこんな悪天候をついて登ってきた時、この山小屋で二人きりになったことがあった。その荒井さんはリフトを使わずに登ってきたというのだがら、この人は並の体力の持ち主ではない。我々とは山の次元が全く違うのである。両手は凍ってしまったように感覚が麻痺していたが、荒井さんから熱いお茶をいただいたりしているうちに感覚が戻ってくる。落ち着いたところでようやく昼食をとる気分となった。天候の荒れやすい冬の蔵王連峰にあって、この山小屋があるだけでなんとありがたいことか。それにストーブまであるのだから、ここは外の天候から見れば天国のようなところであった。

 風は相変わらずだったが、休んでいる間にわずかばかり視界が効くようになった。シールをはがして早々に下山することとする。尾根沿いは滑りにはならないので井戸沢の源頭部を滑ってゆく。雪質は願ってもないパウダーなのだが、今日は視界がないので滑っているのかとまっているのかさえわからない。いくら慎重に滑っていても時々転倒を繰り返した。こんな時に限って雪質が良いのが恨めしかった。

 エコーラインに下りきったところで先ほどの埼玉氏と再び出会った。途中で引き返してきたらしかったが、我々を捜しているメンバーがいるらしく、どうやら山中さんのようである。さっそく無線で呼出をかける。何回か繰り返している内にようやく連絡がとれて、しばらく山中氏の下ってくるのを待った。山中氏と合流してからは樹林帯を縫うようにスキー場に下ってゆく。雪質は快適なパウダーだったが、あいにく斜度がないのでそれほどスキーは滑らない。下れば下るほどまだ埋まりきっていないブッシュが邪魔をするので、結局最後は観光道路を下らなければならなかった。この頃になると太陽こそ見えないものの、空は幾分明るさを取り戻していた。山スキーはやはり天候が一番だなあ、などと当たり前のことをぼやきながら私達はゲレンデに向かった。


今回のルート

避難小屋から滑り出す


中央コースのツアー標識が左手に見える


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