山 行 記 録

【平成19年12月22日(土)/吾妻連峰 デコ平から西大巓】



西大巓東面を滑る筆者(阿部さん撮影)



【メンバー】4名(柴田、上野、阿部、蒲生)※西川山岳会
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】吾妻連峰
【山名と標高】 西大巓1981m、
【地形図】(2.5万)吾妻山、(20万)福島
【天候】晴れ
【参考タイム】
グランデコスキー場リフト終点10:00〜西大巓11:10〜東面滑降〜西大巓直下(昼食)14:00〜リフト終点14:20〜グランデコスキー場15:30

【概要】
 2週続けての西大巓である。こんなことはほとんど無いのだが、それだけに先週末の激パウダーの感激が大きかったということでもある。今日は前回のメンバーに山岳会のスキーの名人2名を新たに加えての山行だ。冬型の荒れ模様だった先週と比べれば、今日は移動性高気圧が張り出し、東北地方はどこも快晴の山日和といううれしい予報がでている。平地では雨や雪が降ったり止んだりの1週間が、高山ではどう影響しただろうかという期待感に胸が膨らんだ。前回、グランデコスキー場は異常なほどの混雑ぶりだったが、人も車も今日はいたってスムーズに流れていた。ところがグランデコ駐車場まで来たところで阿部さんが突然転倒してしまい、足を捻ってしまうというアクシデントが発生する。もちろん凍結した路面が原因である。このアクシデントは阿部さんにとって後々まで尾を引いてしまうこととなった。

 リフト終点からはすでに先行者のトレースが樹林帯へと伸びていた。しかし先週の膝ラッセルとは比較にならないほどの浅いラッセルである。この1週間で雪がしっかりと締まったようであり、腰までのパウダーはすでに無くなっている。逆にこの靴高程度のラッセルは、ツリーランには最適なパウダーともいえるようである。下りの滑降を楽しみにしながらのんびりと先人のトレースを追った。今日は予報通りの無風快晴。まるで春スキーのような天候である。ルンルン気分で小一時間ほど歩けば、樹林帯を抜け出て山頂手前の小ピークが目前となる。小休止してからひと山を越えると西大巓まではまもなくだ。ラッセルがないというのはこんなにも楽なのかと、ごくごく当たり前のことがありがたい。前回は2〜3mほど進むことさえ喘ぎながらの登りだったのだ。小ピークへの急斜面で振り返ると磐梯山の荒々しい姿が徐々に競り上がってくる。桧原湖や秋元湖、そして小野川湖などの湖沼群も全て見渡せるまでになった。猫魔スキー場の右手には氷結した雄国沼が見える。桧原湖などは凍結する気配さえ伺えないので、こんなところにも標高の違いが歴然とするようだった。

 西大巓の山頂からは、左手に飯豊連峰の白い巨体が横たわり右手の朝日連峰へと連なっている。すぐ側には西吾妻山があり、その直下には赤いドーム屋根の西吾妻小屋がくっきりと鮮やかだ。ほとんど視界の無かった先週からみれば天と地ほども違う様相に唖然とするようだった。この素晴らしい光景にただただ写真を撮りまくる。山頂ではすでに2パーティ6、7人ほどいたのだが、先客達はまだ滑り出す気配もなく休憩しているだけだった。当然ながら東斜面はバージンスノーが手つかずの状態なのだからたまらない。なぜみんなは滑らないのだろうかという疑問はよそに置いておこう。我々は手早くシールを剥がして滑走の準備だ。雪崩ビーコンを確認し、あとはそれぞれ斜面に飛び込んでゆく。前回の腰胸パウダーとは違って今日はスキーを滑るうえでは極上ともいえるほどのパウダーだった。この白い粉の魔力にはまったら一生抜けられないよ、とは柴田さんの弁。もうすっかり心を鷲掴みにされた上野さんも歓声をあげながらシュプールを深雪に刻んでゆく。柴田さんはスピード違反さながらにかっ飛ばして降りて行く。私はメンバーが途中で立ち止まっているのを横目にみながら中ノ沢源頭の最下部まで一気に降りていった。ここまで降りてくると山頂部分しか見えなくなるのでまるで別世界だ。伸び上がって眺めてみると、こんな我々に刺激されたのか、先客達も恐る恐る滑り降りてくるのが見えた。しかしこの源頭部の樹林帯まで降りてきたのは私達だけであった。

 ここで昼食休憩となったのだが、心配していた阿部さんの足の具合は私達が想像していた以上に痛むらしく、写真を撮りながらスキーセンターで待っていることになった。この極上パウダーを目前にして、スキーの達人が引き返さなければならなくなる思いはかなり辛いものがあるはずである。まるでめったに味わえない素晴らしい御馳走を目の前にして、突然激しい腹痛を起こしたようなものなのだ。残念だが阿部さんはここでリタイヤとなった。

 昼食後はこの東面をしばらく楽しむことになった。スキーヤーは数えるほどしかいないので、雪面はまだまだ手つかずの状態だ。結局私達は4回ほど登り返しをしながらパウダーを楽しんだ。まさしく御馳走を食べ尽くしたという思いで下山にとりかかる。

 ここで埼玉から来たという人が、一緒に来たはずの連れ合いとはぐれてしまうというアクシデントが発生。取り残された形となったこの埼玉氏を山頂にひとり残して置くわけにはいかないだろうと、柴田さんと上野さんが山頂まで迎えにゆく。結局、埼玉氏の連れ合いは早めにスキーセンターへと降りていったことが後で判明して事なきを得たのだが、樹林帯ではこの埼玉氏がはぐれてしまうなどで時間がかかってしまった。とはいえ、ここの樹林帯は快適そのものだった。先週の深雪が適度に締まり、厳冬期におけるツアースキーのようなツリーランを楽しみながらスキー場まで下った。

 リフト終点からは疲れ切った太股を庇いながらただゲレンデを下るだけである。スキーセンターに戻ると、埼玉氏の連れ合い氏と阿部さんが我々の到着をいまだ遅しとばかり、首を長くして一緒に待っていた。お気軽ツアーとはいえ、今日の最高ともいえる上質パウダーの感触は、後々まで長くみんなの記憶に残りそうである。二匹目のドジョウなどいないだろうという予想に反し、期待を裏切られなかった極上の一日が終わった。


まもなく西大巓。正面には西吾妻山(阿部さん撮影)


飛ばし屋のスキー達人、柴田さん

紐締の登山靴で滑る上野さんはスキーの名人である


西大巓から飯豊連峰


山頂(背後に猫魔スキー場と凍結した雄国沼が見える)


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