山 行 記 録

【平成19年9月22日(土)/朝日連峰 愛染峠〜葉山神社 〜奥ノ院】


途上にある標識(奥の稜線は小朝日岳と鳥原山)


【メンバー】2名(妻)
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】朝日連峰
【山名と標高】長井葉山1,210m
【地形図】(2.5万)羽前葉山、(20万)村上
【天候】晴れ時々曇り
【温泉】白鷹町「パレス松風」300円
【参考タイム】愛染峠登山口(1060m)10:00〜高玉口分岐12:20〜葉山山荘13:15-13:40〜奥ノ院13:50〜高玉口分岐14: 40〜愛染峠16:20
  
【概要】
 葉山連綾の主峰、長井葉山には様々な登山口がある。草岡口、勧進代口、白兎口、高玉口、そして大朝日岳からのルートとこれだけでもたくさ んなのだが、たったひとつ残っていたのが黒鴨林道の最高地点、愛染峠からのコースだった。愛染峠の標高は1060mほどで、葉山までの往復ならばほとんど 登りらしい登りがないと聞いていた。いわゆるハイキングコースともいえそうだが、秋晴れになるだろうという朝の予報を聞いて、カミさんと歩いてみることに した。

 白鷹町の黒鴨地区に入ると、林道黒鴨線の入口には「朝日連峰表登山口」と書かれた、見上げるほどの大きな標柱が立っている。黒鴨林道は土砂崩れなどで時 々通行止めになるから要注意の区間だが、中間地点の愛染峠まででさえも18kmとかなりの距離がある。狭い上に悪路の連続だときいていたので、登山コース よりはこの林道の方がよほど気がかりだった。

 林道は幸いに通行止めの箇所もなく、小一時間ほどかかって愛染峠に到着した。そして、突然目の前にりっぱな舗装道路が現れたのを見て、二人ともびっくり した。これは数年前に工事が中止された大規模林道のようであった。天候も良いし、展望を目的にしたマイカーがあっても良さそうなものなのに、車は一台も見 当たらなかった。

 峠の最高地点には葉山登山口を示す標識が立っていた。すでに10時近くになっていたが、準備を整えて予定どおり山道に入っていった。最初の急坂を登ると すぐに平坦な歩きとなったが、風もないのですぐに全身から汗が噴き出した。登山道はきれいに整備されていて、コース上には特に何の問題もなさそうだった。 意外とこのコースには山菜採りなどの人達も多く入山しているのかも知れなかった。

 地形図にある1235mピークを回り込んで行くとりっばな標識が立っている。ちょうど右手にも広く刈り払いがされていて、T字路のような分岐となってい るところだ。もしかしたらヌルマタ沢の源流である、涸沢からの遡行地点だろうかとも思ったのだが、特に確認せずに通過する。地形図を見るとこの辺りは三本 楢という地点のようだった。しかし、楢の木は3本以上もあって、それほど特徴のあるところには見えなかった。まもなく樹林帯から抜け出すと急に視界が広 がった。左手に禿げ山のようなピークが見えるところだ。ここは見晴らしもよく休憩場所には最適のようである。西には大朝日岳から小朝日岳、そして鳥原山へ と連なる朝日の稜線が目前だった。

 まるで原生林を思わせるような、深閑としたブナ林がしばらく続いた。高玉口との分岐点までがやけに遠く感じていた。途中で正午を回ったため、昼食を軽く 取りながら小休止をとることにした。コースは緩いアップダウンもあって意外と時間がかっていた。その高玉口へは1238mピークの東側を卷きながら、大き く沢に向かって降りて行かなければならなかった。そして対岸を登り返して、またひと下りしたところが高玉コースとの分岐点であった。ここは2年前に通過し ている箇所だが、いつのまにか標識がりっぱなものに立て替えられていた。分岐点からは記憶に新しいので懐かしい思いを抱きながら登って行く。高玉コースは 葉山への最短ルートでもあり、地元の岳人には何度も歩かれている筈なのに、意外と草が生い茂っていて、半分道に被さっているところも多かった。ここは大き な上り下りもあって、かなり疲れも感じてくるところだった。

 見上げると爽やかな秋空が広がっていた。午後から下り坂という天気予報も心配ではあったが、置賜側には白い入道雲も大きく張り出していて、まるで真夏を 思わせるような青空である。しかし、大朝日岳の上空には早くも薄黒い雲が覆っていて、庄内ではすでに雨が降り出しているようであった。まもなく葉山湿原を 2カ所ほど通過する。湿地帯は早くも草紅葉に染まっていたが、潅木類の紅葉はまだまだのようであった。大朝日岳からのコースが右から合わさると、奥ノ院と の分岐点まではまもなくだ。葉山山荘はすぐ目の前であった。

 時間はすでに1時半近いということもあり、登山者は見当たらず予想外に静かな葉山山荘だった。私達は葉山神社に参拝をしてから大休止とする。残念ながら 大朝日岳は雲に隠れていて一部分しかみえなかったが、山頂を吹く風は爽やかで、汗をかいた体が生き返るようであった。

 カミさんはこの葉山が初めてなので、食後は奥ノ院に立ち寄ってゆくことにした。長井葉山の魅力はこの奥ノ院にこそあるのだと説明すると、疲れていたカミ さんも興味を示したようだった。しかし、奥ノ院から見えるはずの“東北のマッターホルン“祝瓶山は残念ながら雲に隠れて半分しか見えなかった。祝瓶山から 柴倉山、そして三体山へと連なる三体連山だけはすっきりと見えているのがせめてもの慰めになった。カミさんは見渡す限り、山また山が連なっているのを見 て、朝日連峰の奥深さにあらためて驚いていた。

 奥ノ院を後にすると急に両足が重くなる。なだらかな登りとはいえ、往路で疲れた足には結構こたえた。高玉分岐点から愛染峠へと折り返す区間も、結構な登 りが続くので、喘ぎ声が漏れるようだった。水場で汗だらけの顔を洗い、沢水を何度も何度も飲み干した。ここは大鮎貝川の源流地点らしく、雪解け水のように 冷たい沢水はまさしく命の水のようだった。

 その後はダラダラとした平坦な山道が続いた。太陽はいつのまにかすっかり西に傾き始めてしまい、薄雲に遮られるとあたりは夕暮れのような薄暗さに包まれ た。この愛染峠からの長井葉山はハイキングの軽いつもりだったが、往復の歩行距離は15kmほどもあって、意外と時間がかかるコースだった。私はいつにな い疲労感を覚えてしまい、日頃の体力不足をあらためて感じてしまった一日であった。

 アプローチである黒鴨林道は、白鷹側よりも朝日町側の方で道路の損壊がよく起きているところで、全区間を通行できる機会はそうそうあるものではない。下 山後は少々遠回りでも黒鴨林道を朝日鉱泉へと降りて行き、朝日町経由で帰路につくことにした。ちなみに黒鴨林道とは白鷹町側の呼び名であって、朝日町側は 西五百川林道という名前がついている。今日は初めての登山コースに胸が踊り、念願だった黒鴨林道の走破も楽しむことができて、長年の宿題を一度に片づけた ような気分に浸った。



周辺マップ

愛染峠の登山口

途上から望む大朝日岳や小朝日岳

爽やかな秋空が広がる
奥ノ院から祝瓶山

inserted by FC2 system