山 行 記 録

【平成19年9月2日(日)/朝日連峰 山毛欅峠から鳥原山



雲の中の鳥原山



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】朝日連峰
【山名と標高】鳥原山、1430m 
【地形図】(2.5万)太郎、朝日岳(20万)仙台、村上
【天候】曇り
【温泉】西村山郡朝日町 五百川温泉 150円
【参考タイム】
山毛欅峠駐車場出発8:20(標高700m)〜畑場峰(標高1130m )9:50〜田代清水10:25〜鳥原湿原11:00〜鳥原山山頂11:30(標高1430m)〜畑場峰12:50〜山毛欅峠14:00
  
【概要】
 山毛欅峠は、朝日町木川地区と大江町の古寺地区に結ぶ大規模林道の途中にある登山口である。コースは畑場峰で古寺鉱泉からの道と合流するのだが、距離は山毛欅峠からのほうが長い。古寺鉱泉からよりも30分ほどよけいに登らなければならないが、登山口が近いこともあって今日はこのルートから久しぶりに登ることにした。調べてみたら2年ぶりであった。

 この週末は寒冷前線の通過により、曇り時々雨といったとパッとしない予報で、見上げても厚い雲が空全体を覆っていた。低い山でさえも雲が多く、山頂付近はどこも見えなかった。湿度もかなり高く、霧のため車の窓ガラスも濡れるほどだった。

 山毛欅峠には朝日連峰の登山口を示す標柱が立っている。しかし、刈り払いがされていないのか、半分以上草で見えなくなっていて、登山道もわからなくしていた。昨日は終日雨だったのだろうか。草をかき分けてゆくとズボンもシャツも草の雫にたちまち濡れてゆき、あわててスパッツを装着した。沢沿いの平坦な山道をしばらく進み、何度も小沢を横切ると、ようやく尾根の取付となる。そこからはまるで飯豊の梶川尾根を思わせるような、胸突き八丁の急登がしばらく続く。まるで今まで忘れていた高度差を一気に取り戻すかのような急坂だ。道の傍らには早くもいろんなキノコが目に付いたが、あいにくよくわからないので、それを横目に眺めながら登ってゆく。辺りはすっかり雲の中に入ったのか、視界はほとんどなく、ブナ林も幻想的な風景に包まれていた。

 汗を搾り取られながら1時間半ほどで畑場峰に到達し、畑場峰からは左へと折れて鳥原山へ向かった。なだらかな上り下りがしばらく続いた。まもなくすると右手からはときどき朝日の主稜や小朝日岳がチラホラと見えてくるところだが、今日は全く展望が得られず、楽しみは何もなかった。途中の「田代清水」で乾いた喉を潤し、さらに緩斜面を登るとまもなく傾斜がなくなり鳥原湿原に着く。湿原に沿って鳥原小屋へと木道が伸びており、ここはいつ訪れても心が癒されるようだ。湿原にはワタスゲがまだ残っていて、畔にはオヤマリンドウが盛りだった。

 汗と草の雫で半袖のシャツはすでにびしょぬれだったが、シャツを取り替えるとさっぱりとして、今まで塞いでいた気分が晴れてくるようだった。畑場峰からシャリバテを感じていたので、木道に腰をおろして早めの昼食をとることにした。いなり寿司が3個入っただけの簡素な食事だが、水気のあるこのいなりがことのほか美味しい。

 鳥原湿原からは石畳の道となる。ここは数年前に整備されたところで、以前は深くえぐられた登路でとても歩きにくかったのを思い出す。湿地帯を眺めながら傾斜の緩い坂道をひと登りすると鳥原山の山頂であった。鳥原山には当然ながら誰もいなかった。見えるものも何もなかったが、一応山頂を踏んだと云う小さな達成感を味わいながらの小休止とする。濃霧は相変わらずだったが、吹き渡る風は思いのほか乾いていて、これまでの湿気の多い空気とは微妙に違っていた。

 乾燥した風とともに晴れ間が出るのかもしれないと、淡い期待をしたのだがその兆しはなかった。鳥原山を後にすると足下に注意しながら下った。石畳の周辺にはハクサンイチゲやウメバチソウ、イワショウブが少し咲いているだけで予想したよりも花は少なかった。ほとんど彩りのない中にあって、ナナカマドの鮮やかな赤い実だけが目につき、早くも秋の到来を告げているようである。この時期はちょうど端境期なのかもしれなかった。畑場峰からは単調な下りとなったが、体はいつになく疲れ切っていた。雨が降らないだけありがたかったが、着替えた上着は再び濡れ始めていた。汗に濡れるというよりも、濃い霧のためにいつのまにかじっとりと湿ってくるといった具合で、終始、鬱陶しさがつきまとった。今日は誰とも出会わず、こんな朝日連峰は久しぶりのような気がした。それだけに静かな山歩きをひとり楽しんだ一日でもあった。


オヤマリンドウ(鳥原湿原)


イワショウブ(鳥原湿原)


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