屏風岳までくるとようやく登山者が目立ち始めてくる。団体もいたのだが入れ替わりに南屏風岳へと向かっていった。ここで村田町から来たというOさんと、少し立ち話をしているうちに、ここからの行程を一緒に歩くことになった。屏風岳から南屏風岳までは割合平坦な歩きなので痛めた足にも優しい道であった。南屏風岳では多くの登山者が休憩中だった。残念ながら雲の中に入ってしまい展望はなかったものの、強い陽射しがないのが何よりもありがたい。周囲を見渡してもすっかり秋の雰囲気に包まれているようにも見えた。
南屏風岳からは元の道を引き返し、屏風岳の先にある分岐点からろうずめ平までは大下りとなる。標高差450mも下るからまさしくこのコースは普通の山登りとは違い、山を大きく下って、また出発点に登り返すという、変則的なコースでもある。垂直のような壁の斜面を電光形に下ってゆくとまもなくろうずめ平の平坦地に出る。この付近は昨年も歩いた道で、正面には後烏帽子岳があるはずだったが、濃霧が立ちこめていて、山の様子はほとんど望めなかった。ここからはしばらく展望のない樹林の道が続いた。
南屏風岳から泣き出しそうな空模様が続いていたが、股窪十字路で一休みをしていると、ついに耐えきれなくなって小雨が落ち始めてきた。しかし、思ったほどの大降りにはならず、雨具を着るほどではなかった。十字路からは澄川の源頭部を目指してトラバース気味の道となる。結構下刈りがなされているので歩きやすい山道だった。あまり整備もされていない道だろうという予想に反して、結構しっかりした山道で、変化に富んでいるので飽きることがない。途中には朽ちかけた標識などもあって、昔から歩かれている登山道のようだった。
地図には現れない小さな沢が無数にあってそれらをいくつも横断してゆくと、間もなく大きな流れにでる。ここが澄川の源頭部、本流であった。ここには橋などはないので飛び石伝いに渡って行く。降雨直後はかなりの流れになるものと思われるので注意を要する区間だろう。対岸からは七曲がりのような急坂となり、徐々に高度があがったところで、金吹沢を通過する。ここは涸れ沢のようで特に問題はなかった。
沢を渡るとなだらかな登りから徐々に急坂となり、頭上からは車の走る音が聞こえてくるようだった。エコーラインはまもなくだったが、登るに従い再び厚い雲の中にすっかり入ってしまったらしく、まるで日が落ちてしまったような薄暗さに包まれていた。その薄暗い樹林帯からようやくエコーラインに飛び出すと、そこは刈田峠から少し下ったところで、登山者はほとんど見あたらない。通り過ぎる自動車もみな濃霧の中をヘッドランプを灯しながら行き交っていて、すでに日没が迫っているようだった。今日の全行程は7時間と予想外に時間がかかってしまったが、長い距離を歩き通すことができた満足感と久しぶりの充実感を味わった一日だった。
オヤマリンドウ |
芝草平 |
登山者で賑わう南屏風岳 |
澄川源頭部 |
イワショウブ |
ミヤマシャジン |