山 行 記 録

【平成19年8月12日(日)/刈田峠〜刈田岳〜五色岳〜熊野岳



五色岳からの馬ノ背とお釜



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】蔵王連峰
【山名と標高】刈田岳1,758m、五色岳(ごしきだけ) 1674m、熊野岳1841m
【地形図】(2.5万)蔵王山、(20万)仙台
【天候】晴れ
【参考タイム】
刈田峠9:50〜刈田岳10:20〜五色岳11:30-50〜馬ノ背12:40〜熊野岳13:10-14:10〜刈田岳15:00〜刈田峠15:20
  
【概要】
 このところ異常気象ともいえるような猛暑日が続いている。夏バテのためか体調もいまひとつで、ましてやすでに30℃近い気温になってしまった時間帯では、へたな山に登る気にもなれなかった。しかし、一気に蔵王連峰の刈田峠まで上がればと、今日は最初から避暑地をもとめてのお手軽山登りである。刈田峠から五色岳を登るという短いコースだが、リハビリの身にとってはほどよいコースのような気もしないではない。状況によっては熊野岳も往復できればと出かけてみることにした。

 蔵王はほとんどのコースを歩いてしまい、残っているところとなると今回の五色岳と残りは数えるくらいしかない。五色岳は蔵王の御釜を取り囲む火口丘の一番高い箇所で、地図にはないがその火口をぐるりと一周することも出来るようになっている。また山形県と宮城県の両県南部の県境に位置し、蔵王連峰の一角を担っている山でもある。冬に氷結したお釜の中を山スキーで歩いたことはあるのだが、この五色岳はまだ登ったことがなかった。いつもは馬ノ背から眺めるばかりのお釜を、ちょうど反対側から眺めることを想像すると胸が躍るような期待感がある。また2000m近い熊野岳山頂は天然の涼風を味わえることだろうと、先週に続いてしばし猛暑の下界から逃れてみることにした。

 刈田峠の登山口はちょうどエコーラインの最高地点にある。刈田岳の反対側に向かえば屏風岳や不忘山への南蔵王連峰の縦走路が続いている。お盆の前日ということもあって、刈田峠のエコーライン路上には数え切れないほどの車が止まっていた。ほとんど南蔵王に向かった登山者のものだろうと思われた。刈田峠からは有料道路である蔵王ハイラインを横切る形で登ってゆく。尾根を直登すると樹林帯が多いので、暑い日射しが遮られ、とても歩きやすい道だった。ハイラインを4回ほど横断すると、まもなく刈田神社の目の前に出る。右手には冬山で見慣れた避難小屋が立っている地点である。山頂では多くの観光客で混雑を極めていて、登山者はよく探さないと見あたらないほどだった。大きなザックを背負っていると、場違いな所にきたようで、なんとなく肩身が狭い思いもしないではない。刈田岳のレストハウスも馬ノ背も、唖然とするばかりの人達で溢れかえっていた。1800mも近いというのにそれほど涼しくないのがちょっと残念だったが、連日の熱線に焼かれ続けて地表も冷える暇がないのだろうと思った。

 馬ノ背から立入禁止を示すロープの柵を越えてお釜への道を降りてゆく。この辺りは山スキーで下っているので、不安は感じられない。刈田岳からお釜の淵まではちょうど200mほどの高度を下る。意外と大下りでもある。お釜の畔にでる少し前がちょうど分岐点だが特に標識はなかった。まっすぐに進む時計回りでもかまわないのだが、右手の岩場は登りの方がより安全というわけで、今回は反時計回りにコースをとることにした。右手へのルートはよくわからなかったが、特に危険な個所はないようなので、歩きやすいルートを選んでゆく。登山道というよりも、砂地を歩いてゆくといった感じで、歩くたびにスリップして足場が崩れてゆくようだった。

 急斜面の岩場のようなところを登り切るとそこからは勾配が緩やかになり、目前は五色岳の稜線だ。付近には盛りをすぎたコマクサの群落があり、写真を撮っていると登山者が二人降りてくるところだった。出会ったのはこの二人だけで、刈田岳や馬ノ背の喧噪とは別世界のような静けさだった。また、吹き渡る風が涼しく、刈田岳の山頂より低いにもかかわらず、五色岳とお釜一帯付近は風の通り道になっているようだった。

 稜線にはケルンが二つあり、ちょうど分岐点の標注のような役目をしている。五色岳の山頂は左へと進んだ一際高いピークのようだった。右手の端は不帰ノ滝の上部付近だったが、雲が次々とわき上がってきて、壮絶な懸崖といった光景は見ることができなかった。ふたたび五色岳へと向かうと熊野岳が正面で、上空は澄み渡るような青空である。このカルデラ付近は風が不規則に巻いていて、宮城県側では雲が湧いたり消えたりを繰り返しているようだった。

 五色岳の山頂からは火口壁の大迫力が圧巻であった。人口に膾炙しすぎた感じもするお釜だが、こうして一人もいない五色岳山頂から眺める大パノラマにはあらためて感激した。ここにもケルンが立っていて、近くには花が終わったコマクサも残っていた。先週はコバルトブルーに彩られていたお釜も、今日は鮮やかなエメラルドグリーンの神秘的な湖面をたたえている。馬ノ背を歩いている人はあまりに小さくて目をよく凝らしてもよくわからないほどだった。多くの人で賑わっているであろう馬の背や刈田駐車場も、ここまではその喧噪が少しも聞こえず、五色岳はまさしく別世界である。しばらくこの絶景を楽しみながら腹ごしらえをすることにした。

 五色岳からはお釜の淵をたどるように下ってゆく。あまり端を歩くと崩れる恐れもあり、ここは注意する必要があるようである。右手を見ると、今は通行禁止となっているロバの耳コースが見えたが、当然ながら人の姿はなかった。お釜の水辺まで降りてゆくと、熊野岳から小沢が数本お釜へと流れ込んでいた。この水を飲んでみたが少しも冷たくはなくがっかりした。

 水辺の標高は1550mほどだから熊野岳まではおよそ300m上らなければならない。今回のコース自体は短いのだが、上り下りが多いせいなのか、痛めた足首が少し痛み始めていた。ここからは夏道といってもよさそうな踏跡がお釜の畔を回り込むように続いていた。お釜の水辺までは意外と多くの人達が降りてくるのかもしれなかった。

 馬ノ背に戻ると、降りてきたとき以上の観光客であふれていた。登山リフトを使って上ってくる人達も多く、眺めているだけで疲れてくるような混雑ぶりである。しかし、風があるので熊野岳までは快適な稜線歩きが続いた。

 熊野岳では避難小屋の近くにザックおろして、しばらく昼寝をすることにした。早めに下っても、猛暑、酷暑の下界にはまだまだ戻りたくはなかった。山頂とはいえ、日射しはそれなりにあるのだが、やはり高山を渡る風は心地よいばかりである。大朝日岳とほぼ同じ標高だけに、この蔵王連峰も下界の猛暑を忘れさせるような爽やかな風を心ゆくまで味わった。刈田岳と違ってこの熊野岳まで足を延ばす観光客は少なく、ここでは登山者の方が多く目立つようだった。疲れもあったのか、私はいつのまにか1時間近く眠ってしまった。

 熊野神社では参拝をしながら山での安全を祈った。そして馬ノ背は人混みをかき分けるようにして刈田岳へと戻った。山頂神社は相変わらずの大賑わいを呈していた。この山頂ではやはり風は弱々しかった。私は最後まで残しておいた果物の缶詰をザックから取り出し、少し一休みしてから、刈田峠への登山道を下り始めることにした。


今回のコースマップ


ロバの耳(五色岳より)


お釜の畔から刈田岳を仰ぎ見る


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