山 行 記 録

【平成19年6月2日(土)/古寺鉱泉から大朝日岳】



ムラサキヤシオと大朝日岳(古寺山から)



【日程】平成19年6月2日(土)
【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】朝日連峰
【山名と標高】古寺山1,501m、小朝日岳1647m、大朝日岳1870.3mm
【地形図】(2.5万)朝日岳、(20万)村上
【天候】晴れ
【行程と参考コースタイム】
古寺鉱泉8:00〜一服清水8:25〜古寺山10:15〜小朝日岳10:50〜大朝日小屋12:00〜大朝日岳12:15-12:30発
〜小朝日岳13:40〜古寺山〜古寺鉱泉16:50 

【概要】
 山スキーのシーズンを先週で終えて、今日は久しぶりの登山靴である。予定では飯豊連峰のはずだったが、寝坊をしてしまい歩き慣れた古寺鉱泉に向かった。自宅から古寺鉱泉までは1時間ほどの距離なので、いわば困ったときの古寺鉱泉というわけである。駐車場付近では古寺川が奔流となって大きな音をたてており、その渓谷を彩っている木々の新緑も鮮やかであった。スキーで明け暮れているうち、いつのまにか季節はすっかり初夏の装いに変わっているようだった。駐車場には乗用車が数台留まっていたがそれほど混んでいる様子はなかった。

 尾根に取り付くとブナの新緑というよりは瑞々しい初夏の深緑という雰囲気に溢れていた。タムシバはほとんど散りはじめていたものの、一方ではムラサキヤシオが盛りで、登るに従って蕾状態のムラサキヤシオが目立つようになってゆく。登りだしが遅かったために頭上からは夏日を思わせるような日差しが降り注ぎ、今日は雲ひとつないような快晴の空が広がっていた。

 弘法清水を過ぎるとまもなく雪の斜面が現れる。雪はちょうどハナヌキ峰分岐まで続いていて、冷え込んだ朝方などはまだアイゼンも必要なほどの積雪と斜面が、今日はすでに気温が高いために特に危険というほどではない。ハナヌキ峰分岐からもほとんど雪上の歩きが続いた。先人の踏跡がちょうどよいステップとなっていて、途中で何人かの登山者を追い越しながら快調に登って行く。今日の登山者は日帰り半分、小屋泊り半分といったところか。前方に大きな雪壁が現れるとそこはもう古寺山への稜線だった。ここも残雪の豊富な急斜面だが、雪面は柔らかく、滑落する心配はほとんどなかった。

 稜線に上がると爽やかな初夏の風が吹いていた。振り返れば月山や障子ケ岳、そして以東岳から大朝日岳まで続く朝日連峰の主稜線が一望だった。豊富な雪上を歩く快適さはこの時期ならではのもので、朝日連峰は残雪期の一番楽しい季節を迎えているようだった。

 古寺山からは小朝日岳や大朝日岳、そして西朝日岳へと続く残雪を抱いた山並みが素晴らしい。ミネザクラの向こう側には豊富な雪をまとった朝日の主稜線が映えて、その美しさにしばし感激しながら佇んで眺めていた。残雪の状況は例年よりもいくらか少な目に見えるものの、それでもたっぷりと積雪があって、短いスキーでも持ってくればちょっとした滑りがまだまだ楽しめそうでもあった。

 小朝日岳から熊越に向かう途中で早くも下りの登山者と出会った。あまりに早いので出発時間を尋ねたところ、早朝4時には古寺鉱泉を出たのだという。4時でもすでに明るいので歩くには全然支障がないらしかった。6月といえばまもなく夏至も近く、いまが一年で一番日が長い時期を迎えていることにあらためて気づいた。
 
 熊越から稜線に上がると大朝日岳が目前となる。ここまでくれば山頂まではまもなくであり、稜線を吹く風はさらに爽やかさを増し、あらためて春山の快適さを思った。この付近ではカタクリの群落が見事で、ミネザクラと瑞々しい灌木、そして残雪の取り合わせの美しさはちょっと言葉にはでてこない。大朝日岳避難小屋まではなだらかな尾根歩きが続く、いつもの楽しい稜線漫歩を楽しんだ。

 朝日連峰随一の名水、銀玉水もこの時期はまだまだ分厚い積雪に覆われていて、残念ながら水は当分汲めそうもないようである。銀玉水からは最後の急斜面をひと登りすれば山小屋だ。ここも冷え込んだ早朝などは、滑落の心配もある要注意区間だが、今日のように気温が高いと危険という感じはなかった。かえって下りのグリセードが楽しみでもあった。
 
 大朝日岳の小屋入口はしっかりと閉じられていて登山者のいる気配はなかった。小屋までは途中で6人ほどの登山者を追い越してきたので今日の小屋泊まりは割合にすいている方なのかもしれなかった。

 大朝日岳には登り始めてから4時間15分で到着した。そこには登山者が一人いるだけの静かな山頂だった。その人は祝瓶山荘から中沢峰経由で登ってきたという新潟の人であった。当然小屋泊まりだろうと思ったら、日帰りだというのだからあらためて驚いた。これから祝瓶山をめざしてゆくらしかったが、その健脚ぶりには、お主、ただ者ではないな、という雰囲気が漂っていた。

 山頂では昼食用のラーメンやカップラーメンを楽しみにしていた。しかし、いざザックを開けてみると、入れてきたはずのテルモスやガスコンロも見あたらなかった。ザックをひっくり返してみたものの見つからない。出かける前に山スキー用のザックからほとんど入れ替えたはずなのに本当に忘れてきたらしかった。いつもは両方とも入っていることも多い必携の山用品なのだが、そのどちらも無いとはがっかりするばかりだったが、自分の間抜けさ加減を笑うしかない。たまたま残っていた行動食の団子を一本だけ食べて、早々と下山するしかなかった。

 山頂を後にすると西朝日岳から縦走してきたと思われる登山者が中岳付近を歩いてくるのが見えた。大きなザックを背負ったこの人は、今日はこのまま小屋泊まりなのだろうと思った。しばらく雨の心配もない好天が続きそうなので、こうしてのんびりと縦走しながらの小屋泊まりも悪くはないなあ、などとうらやましく眺めた。

 小屋から下るとまもなくして、急に膝が痛み出してあわててしまった。久しぶりの登山らしい登山で膝も慌ててしまったようだった。山登りではスキーと違って下りで使う筋肉が全然違うのだから当然といえば当然なのだが、筋肉の衰えを思わないわけにはゆかなかった。膝が痛み出したのは銀玉水付近で、古寺鉱泉まではまだまだ距離が残っている。今日はこの膝をダマシダマシ下るしかないだろうとあきらめるしかなかった。考えてみれば普通の山登りは約半年ぶりなのだ。膝が慌てたとしてもしょうがないと思うしかなかった。結局、古寺鉱泉到着は夕刻も迫った午後5時近くだった。登りよりも下りのほうが時間がかかるという長い一日が終わった。


新緑の登山道


カタクリソウと大朝日岳(熊越上部付近)


ミネザクラと以東岳(小朝日岳から)


夕刻迫る古寺鉱泉


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