山 行 記 録

【平成19年5月27日(日)/百宅口から鳥海山】



百宅登山道、タッチラ坂付近を登る



【日程】平成19年5月27日(日)
【メンバー】西川山岳会7名(柴田、上野、くさなぎ、丹野、阿部、蒲生)ゲスト(伊藤)
【山行形態】テレマークスキーによる山行、春山装備、日帰り
【山域】鳥海山
【山名と標高】鳥海山(七高山2,230m)※唐獅子平避難小屋まで
【地形図】(2.5万)鳥海山、(20万)仙台
【天候】雨のち晴れ時々曇り
【温泉】秋田県由利郡鳥海町「ホテルフォレスタ鳥海」500円
【行程と参考コースタイム】
(前日)自宅=鳥海町「道の駅」にて車中泊
大清水避難小屋8:20(838m)〜タッチラ坂(1319m)唐獅子平避難小屋1045-11:45〜大清水避難小屋〜駐車場13:40
  
【概要】
 板治めとしては定番コースとなった感のある百宅口からの鳥海山。5月の最終週末ともなればようやく林道の除雪も終わり、誰でも手軽に百宅コースを楽しめるようになる。私はこの2シーズンほど、祓川からの往復をしていたため、百宅集落から大清水山荘まで向かうのは3年ぶりであった。

 今回は前日から大清水山荘に入って、山岳会のメンバーと前夜祭に加わる予定でいた。しかし、自宅を出るのが遅くなってしまい、鳥海町の入口までたどり着くのがやっとで、久しぶりに「道の駅」での車中泊となった。天気予報はあまり芳しくはなかったが、天候の崩れは意外と早くやってきた。「道の駅」では未明から雨が降り出し、大清水山荘までくると大降りまでになっていた。

 大清水山荘には5時半頃到着した。小屋に入ると山岳会のメンバーは3人だけで、朝のコーヒーを飲みながら朝食の準備中だった。当然ながら3人ともこの雨では山は無理だろうと最初からあきらめムードが漂っていた。それもそのはずで、柴田氏と阿部氏は今日の悪天候を予想して、唐獅子小屋までだが昨日のうちにひと滑りしてきたらしかった。集合時間としていた7時半になると、須賀川から長距離運転を終えた上野氏も小屋に入ってきた。そしてくだんの二人がすでに昨日滑ってきた話に及ぶと、ひとしきり上野氏の詰問責めにあう。いつもは見事な統率振りを発揮するリーダーも、こういうときには平身低頭に徹しているばかりなのが可笑しい。まもなく丹野氏、伊藤氏も加わり、今日のメンバーが全員揃ったものの、雨は相変わらず大きな音を立てて降りやむ気配はなかった。これくらいの大降りであれば迷う必要もなく、かえってあきらめがつくようでもあった。

 8時になっても降り止まない空を眺めながら、解散もやむなしといったムードとなり、私はあきらめて山菜採りでもしてから帰ろうした。ところが天候とは本当にわからないものである。我々の行動を見透かしたように雨は急速に小降りとなり、見る間に青空まで広がる空模様へと回復したのである。

 スキーは全員ザックに担いだ。小屋周辺の湿地帯にはミズバショウがびっしりで、タムシバは今が盛りと咲き始めている。新緑のブナ林に取り付くと残雪にはブナの花芽で一面だった。私はこういったいつもの百宅コースの風景がとても懐かしかった。雪面はところどころで切れているので夏道沿いに登ってゆく。まもなく木道が現れるとタッチラ坂付近で小休止をとる。この付近はちょうど五合目あたりだろうか。ここからは積雪も豊富になり、ようやくシール登高が可能となる。山頂付近は雲で見えないものの、上空は澄み切った青空が広がっていた。

 雨はすっかりあがっていたものの、風が徐々に強まっていた。まもなく唐獅子小屋も近くとなると、急速に視界がなくなってゆく。時々ホワイトアウトの状態までになると、山頂への直登コースはとりあえず回避したほうがよさそうだった。どうやら雲の中にはいったらしく、早めに唐獅子避難小屋に逃げ込むことにした。天候の回復待ちというわけだったが、小屋から窓の外を伺うものの視界は一向に回復する気配はなく、強風もますます激しさを増してゆくばかりだった。

 しばらく停滞となると各人のザックからは軟水が次々と出てくる出てくる。こうなればすっかり宴会モードである。今回でほとんどのメンバーは板治めのつもりなので、できれば山頂は踏みたいところだが、一方では悪天候の中では全然楽しくもないので、無理をしてまで登りたいという気持もそれほどないのも事実。これがシーズンの最盛期ならば計器、知力、経験などを総動員しながら、無理してでも決行するところだが、誰もそんな気持は微塵もなく、すでにスキーシーズンの終焉を感じないわけにはゆかなかった。

 1時間ほどの休憩を終えて外に出てみると、視界の悪さと強風は変わりがなかったものの、少し下れば風は和らいできそうだった。シールを早々とはがしたリーダーは、撮影のためと称していち早く斜面を滑り降りていった。そして準備を終えるのを確認すると、メンバーもつぎつぎと滑降を開始してゆく。雪面はほどよいザラメ雪ということもあって、例年よりもいたって快適だ。いわゆるクラックもないので危険箇所も見当たらない。この時期であればスキー技術などなにも必要がないようでもある。今年の鳥海山はコースさえ選べばまだまだ楽しめそうでもあった。

 いつもの赤沢川のトラバースを終え、夏道を横切ってそのまま尾根の左斜面を降りてゆく。この辺りも雪面は狭いながらも藪らしい藪はなく、快適に高度を下げてゆくことができた。このスキーの機動力にはいまさらながら感心することしきりだった。そして大清水園地の標高まで下ってしまえばスキー滑走も終了となる。

 そこからは沢を一カ所渡渉しなければならなかったが、深さは予想したほどではなく、靴の中を濡らすことはなかった。沢水でスキーをジャブジャブと洗うと、今シーズンのスキーの汚れもすっかり取れた気分になり、名ばかりではない、本当の板洗いとなったのは幸いだった。これで今年のスキーに思い残したことは何もなくなったような気がした。対岸に渡って10数mほどの藪を抜けると、ミズバショウが咲き乱れる大清水山荘は目の前であった。


ブナの新緑を歩く


北海道仕込みの豪快な滑り(伊藤さん)


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