山 行 記 録

【平成19年4月1日(日)/寒河江市幸生〜村山葉山】



葉山の稜線をめざして大雪原を歩く



【日程】平成19年4月1日(日)
【メンバー】5名(柴田、山中、丹野、荒谷、蒲生)他1名途中撤退
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】月山
【山名と標高】 大滑山953.5m、村山葉山1461.7m
【地形図】(2.5万)葉山、海味、(20万)仙台
【天候】曇り後晴れ
【行程と参考コースタイム】
柳ノ沢7:40〜尾根取付8:00〜大滑山10:40〜1019m峰〜村山葉山12:20-13:00〜大僧森13:20〜小僧森沢(仮称)沢底13:40〜林道合流点〜柳ノ沢(353m)15:00〜駐車地点15:30
  
【概要】
 積雪期の村山葉山へは、例年4月下旬頃の除雪完了を待って、畑集落から往復するコースが一般的である。というよりもこのコースしか無いといった方がいいだろう。しかし、今日の行程が寒河江市幸生の柳ノ沢集落付近から、尾根に直接取り付く未踏のルートということを聞き、まるで未知の世界に分け入る期待感に胸が躍るようだった。初めてのコースというものはそれだけで魅力的である。そしてコース自体が相当に長いというのもさらに人を惹きつけるものがある。世の中には通常のコースで満足できない人というのはいるもので、このコースを途中までだが2週間前に単独で行っているのが今日のメンバーにいるというのだから驚く。その人は時間切れのために途中で撤退したというのだが、誰も考えつかないコースに取り付くこと自体、それだけでも賞賛に値する。

 今日は朝から雨模様が続いていたが、除雪終了地点までくるとようやく雨が上がり始め、予報どおり快晴の天候に恵まれそうであった。アプローチは寒河江市幸生の柳ノ沢。ここは最終集落でもあり、寒河江市幸生から十部一峠を通って大蔵村肘折温泉に抜ける国道458号線の除雪終了地点に車を止め、そこからはシール登行が可能だ。天候は回復したものの風が強い日だった。杉林が強風に煽られると大量の花粉が舞い、くしゃみが止まらなかった。さらに遠方を見上げると黄色く霞み、今日は朝から大量の黄砂が西風に乗って流れてきているようだった。

 小さな橋を二つ渡ったところで右の尾根に取り付くと、雪は半分以上消えていたものの、僅かに残った雪面を拾いながら狭い尾根を登って行く。しかし、次第にヤブ漕ぎのような状態となり、雪もところどころで切れているところがあって、結構苦労を強いられる時間帯が続いた。2週間前に登ったというメンバーの一人は、その時はまだかなりの積雪があってシール登高にはいささかも支障がなかったというのだが、この時期の2週間の違いは大きい。厳冬期も終わり、信じられないくらいのスピードで融雪が進んでいるようだった。

 しかし、まもなくすると積雪が増して行き、徐々にシール登高への支障はなくなってゆく。周りにブナ林が広がると大滑山の肩という箇所を通過する。右手には遠く葉山の稜線が見えたが、はたして今日中にあの葉山まで到着できるのだろうか、と不安になるほど、途方もないような距離感があって唖然とする。ここから村山葉山まではまだまだ遥かかなたという印象しかなかった。

 大きな雪庇が狭い稜線に覆い被さっていたが、もうわずかに登れば大滑山というところで大休止をとる。しかし、ここで一名が撤退となりメンバーが一名減となったのは少し寂しかった。このコースはアップダウンが多いうえに行程が長く、たしかに登りがかなり辛いコースだった。私も体力が落ちたのか、最後尾をやっとの思いでついてきていた。

 大滑山からはスキーで下れる箇所も多くなってゆき、はるかに見えていた村山葉山もぐんぐんと近づいていた。大きなピークである1019m峰は左側から大きく卷いて行く。そして雪庇の張り出した稜線を登って行くと、そこからは別世界の風景となった。まるで朝日連峰、赤見堂岳の馬場平を髣髴とさせるような大雪原が広がっているのだった。あまりに素晴らしい風景に出会って私はただ呆然として佇んでいた。そして前方には葉山の稜線が青空にくっきりと浮かんでいた。なにはともあれここまでくれば大休止だった。歩き出したときには、遥かに遠かった村山葉山はもう目前にまで迫っていた。

 一方では、途中から現れだしたスノーモービルのトレースには落胆させられてもいた。それが葉山の山頂どころか、奥ノ院までも続いているのを見て、怒りを通り越し、唖然とするしかなかった。スノーモービルの功罪はいろいろあるだろうが、まるで新築したばかりの家の中を、土足のまま踏み荒らされたような憤りさえ感じるようだった。

 やがて目前に迫った葉山の山塊は大きくて迫力に満ちていた。最後の急斜面をジグザグに切って行くと、ほどなく見慣れた葉山の山頂へと登り着く。標識は半分雪に埋まっていて、前方には奥ノ院に建つ神社が見えた。スノーモービルの連中は奥ノ院で休んでいるようだった。我々は大きな潅木の陰で風を避けながら、腰を下ろして大休止とした。葉山の山頂付近は強風のために潅木が剥きだしとなっていて、通常は積雪などないのだが、今年は意外と雪が多くて驚く。まだ4月の初めといえばそれまでなのだが、このところの季節外れのような降雪が影響しているのかもしれなかった。

 大休止をとっている間に、十分な燃料とエネルギーを補給した我々は、再び元気を取り戻し、取りあえず大僧森をめざすことにした。大僧森まではシールを貼ったままでゆくことにし、下りのコースは大僧森のピークであらためて判断することにした。一気に葉山の山頂を下り、大きく雪庇の張り出した大僧森に登り返す。大僧森からは様々なスキールートが考えられたが、結局、これまで滑ることなど思いもつかなかった、小僧森との間を沢底まで下って行くことに決定した。地形図には沢名はなかったが、強いて名付ければ大僧森沢か小僧森沢であろうか。木立のない大きな大斜面は自然が作り出した大ゲレンデで、まさしく垂涎ものである。みんなが思い思いに滑走してゆくと、そこらじゅうから歓声があがった。雪面はいたって滑りやすかったが、ところどころで黄砂に覆われたような雪面が現れると、何でもないところで急ブレーキがかかって転倒したりしたが、そんなことも今日の好天であれば楽しいアクシデントだった。

 沢底が近づく付近から斜面を大きくトラバースして行く。この付近は雪崩が心配なので、かなり慎重な行動が要求されるところだったが、ようやく雪崩の心配のない地点まで下ったところで、再び休憩をとることにした。快晴の空を見上げればこのまま下って行くのがあまりにもったいなかったのだ。

 左手に見える尾根の向こう側は畑集落のキャンプ場のようであった。ここでは山頂付近の風がウソのように穏やかだった。雪がなければ密林のようなヤブ地帯なのだろうが、今は全て雪に埋まっていて、まるで桃源郷に遊んでいるような気分だった。スキーで下れば長いコースもあっというまである。遠方の斜面には滑ってきたばかりの私達のシュプールが何本も刻まれていて、眺めていると何ともいえない満足感に満たされてくるようだった。

 沢底からしばらく進むと、付近は牧場らしい大雪原が広がっていた。スノーモービルの跡を少したどってゆくと林道らしきところにでた。山頂から一気に滑ってきて、もう下界の雰囲気が漂う箇所まで下ってきたのだった。ここからもさらに沢沿いに行こうとしたところで、リーダーからはトラバースは危険なので林道コースを行くと指示される。この辺りの地形は初めてだけに、リーダーの判断に任せるしかなかった。すこし高みに登るとそこからはスキーがよく走り、それほど苦労することもなく林道を下って行くことができた。そして夏には観光ワラビ園となっているという広い地点に出ると、そこもまたゲレンデのような大斜面となっていて、大滑降を楽しみながら下って行く。

 まもなくすると道路の分岐点のような場所に飛び出した。ここはまだ除雪の始まっていない畑集落への舗装道路のようだった。このまま道路を下れば幸生の集落だが、右手に分かれている細い山道をたどってゆけば出発点である、柳ノ沢集落に出るルートのようだった。周辺の山の斜面にはほとんど雪はなかったが、この細い林道にはなんとか雪が残っていて、柳ノ沢集落まで下って行くことができたのは幸いだった。

 登りの雪の少なさと今日の林道の積雪を考えると、今回がこのコースのタイムリミットだったようである。かろうじて未踏のコースをたどることが出来た我々は幸運といわなければならなかった。私は登りの程良い長さや、夢のような山頂付近のロケーション、そして滑降コースの快適さも含めて、今年一番の山スキーを味わったような思いに浸っていた。道路に出でからはスキーを30分ほど担いで駐車地点まで戻り、長かった幸福な今日の行程が終わった。


林道を歩き始める


尾根への取付


大雪原で大休止


葉山と奥ノ院(左奥)


葉山山頂直下


葉山山頂


大僧森


大僧森からの滑走


テレマークカー


滑ってきた小僧森沢を振り返る


今回の周辺マップ


inserted by FC2 system