山 行 記 録

【平成19年2月17日(土)/志津温泉から湯殿山(南東尾根から南斜面滑降)



湯殿山直下



【日程】平成19年2月17日(土)
【メンバー】3名(菊池、山下、蒲生)
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】月山
【山名と標高】 湯殿山 1500m
【地形図】(2.5万)月山、(20万)村上
【天候】晴れ
【行程と参考コースタイム】
 志津温泉8:10〜湯殿山11:40-12:10〜ブシ沼12:40〜志津温泉14:50
  
【概要】
 
今日は日本全体が高気圧の中心にすっぽりと入ったため、朝から快晴の空が広がった。もう異常過ぎるとしかいいようのないような今年の冬だが、山スキーにとっては天候が良いのに越したことはない。駐車場に来てみると車は数えるほどしかなく、二週間前には猛吹雪の悪天候でも30数台車があったのが信じられないようである。今日は吾妻連峰にでものんびりと出かける予定をしていたのだが、単独もなんとなくつまらなく思えて、山岳会の菊池氏の呼びかけに応じてきてみたところ、総勢3名のニワカパーティができあがり、今日は湯殿山を登ってみることにしたものである。

 早速シールをはって誰も歩いていない湯殿山に向けて歩き出すと、ここ月山界隈は2週間前よりもさらに積雪が加わっていて、下界の雪の少なさがまるで嘘のようでもあった。春のような日差しが朝から降り注ぎ、歩き出すとすぐに汗が流れ出してくる。日差しの強さには驚くばかりだったが、まずアウターを脱ぎ、さらに帽子や手袋までが不要となった。つまり厳冬期なのに素手ででも平気なのである。こんなに朝から暑くては午後から雪が腐らないかどうかを心配しなければならないほどだった。

 降雪があった割合にはスキーは思ったほどには沈まず、今日のラッセルはかなり楽な方だった。雪質は程良く締まりその上パウダーなので、下りの滑走を楽しみながら登り続けた。石跳沢の右岸沿いに登って行き、尾根に上がると徐々にブナの疎林帯となる。湯殿山の南東尾根のすばらしさは知る人ぞしる、この太いブナ林の美しさにあるのだ。適度な斜度のこの尾根はテレマークスキーにこそふさわしく、初心者でもらくに楽しめる区間でもある。物足りない人には南斜面や東斜面があるが、どちらも斜度がかなりあるので今度は雪崩が要注意となる。2、3日前には八甲田山で雪崩遭難事故があったばかりなので、特に今日は慎重さが求められるようだった。

 樹林が切れると、一点の染みもないような湯殿山が驚くほどの白さで目前に現れる。いつみてもこの湯殿山の姿には感動するばかりであった。隣に大きく迫る姥ケ岳も全山真っ白の新雪に覆われていて、人の姿はどこを見渡しても見あたらなかった。まもなくすると石跳川を登ってきたらしい、単独のスキーヤーが一足違いに尾根に上がってきた。そのまま山頂までゆくのかと思っていたら、斜面の途中に三脚を据えて滑走の開始をうかがっている。その様子からすると、滑走シーンのビデオ撮影のため、わざわざこの東斜面までやってきたようであった。

 その後も後ろを追ってくるものは見当たらなかった。やがて斜度ががくんと落ちると湯殿山の山頂は目前となる。この付近はアイゼンも必用なほどアイスバーンになっているところもあり少し緊張感が走るところだ。しかし滑落するほどではなく、3人とも快調に登って湯殿山の山頂に到着した。少しガスが広がったりしたものの山頂はほとんど風もなく、春の山そのものであった。

 山頂までの所要時間は3時間30分。ラッセルに苦しめられることもなく、いたって平均的なペースで登ってきたようである。前方には品倉尾根が美しい稜線を輝かせている。そしてまもなくすると鳥海山が雲海から頭を出し、その後は感動的なシーンの連続となった。この素晴らしい展望を眺めながらの昼食兼休憩はまさしく至福の時間だった。反対側には雲海の上から大朝日岳のようなピークが見えたが、それはどう見ても赤見堂岳のようである。雲海からピークの部分だけを出している赤見堂岳は、まるで朝日連峰の盟主のような風格を見せながら堂々と聳え立っていた。無風快晴の山頂ではツェルトも不要で、今日は厳冬期の湯殿山ではなかった。

 食事も終えて写真もあらかた撮り終えると、いよいよ待ちに待ったパウダーランの開始だ。山頂からはいろんなコースをとれるのだが、今回は登ってきた尾根は下らずに、南斜面を下ることになった。尾根を快適に飛ばしてゆき、適当なところから南斜面にそれぞれ飛び込んで行く。気温はかなり上昇しているはずなのに、南斜面は信じられないほどの快適なパウダーであった。その心地よさには感激の雄叫びしか出てこない。一気に下るのがあまりにもったいないのでお互いに写真を撮ったりしながら時間をつぶしてゆく。

 ブシ沼まで下ってきたところで、のんびりとティータイムをとることになった。菊池氏からいただいたハーブティがことのほか美味しく、気分はほとんどスノーハイキングである。湯殿山の南斜面には滑ってきたばかりの我々のシュプールが見えていて、3人ともなんともいえない満足感に浸った。このブシ沼では春のような日差しを浴びながら、心地よい時間をしばらく過ごした。誰も登ってくる人もなく、またここまで散策にくるスノーシューの人達も見当たらない。山頂ばかりかこの湯殿山一帯が我々3人だけの貸切のようだった。

 ブシ沼からもほとんど樹林がない緩やかな斜面を快適に飛ばして行く。普段ならばほとんどスキーが走らないような緩斜面なのだが、ネィーチャーセンターのインストラクターをしている菊池氏のコース取りが良くて、ほとんど登り返す必要もなく滑って行くことができたのはありがたかった。ここも信じられないほどのスピードに乗りながら滑って行くことができたのである。

 こんな日はそんなにないだろうと思い、途中で何回か立ち止まり、惜しみながら滑走して行く。燦々と頭上から降り注ぐ日差しはすでに早春を感じさせ、頬をなでてゆく風もすでに冬のものではなくなっていた。途中からは我々が登ってきたトレースを拾いながら下って行くともう終点の志津温泉が近づいていた。


春のような日差しが朝から降り注ぐ


尾根の取り付き


湯殿山と姥ケ岳


湯殿山への登り


湯殿山への登り


湯殿山への登り


湯殿山目前


品倉尾根(右)と湯殿山の雪庇


湯殿山山頂(姥ケ岳をバックに)


鳥海山が頭をだす


湯殿山の西尾根


南斜面を滑降する


南斜面を滑降する


南斜面を滑降する


湯殿山の南斜面


ブシ沼からの湯殿山


終点付近も快適なツリーラン


お疲れさまでした


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