山 行 記 録

【平成19年2月12日(月)/横向温泉〜箕輪山】



パウダーを満喫する山中さん



【日程】平成19年2月12日(月)
【メンバー】西川山岳会8名(安達、山中、荒谷、上野、阿部、阿部(兄)、丹野、蒲生)
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、幕営(山行は日帰り)
【山域】安達太良連峰
【山名と標高】 箕輪山 1718.4m 
【地形図 2.5万、20万】安達太良山、福島
【天候】晴れ時々曇り
【温泉】耶麻郡猪苗代町横向温泉マウント磐梯 600円
【行程と参考コースタイム】
横向温泉8:10〜リフト終点付近通過〜箕輪山11:00〜1400m地点(休憩)11:40-12:30〜横向温泉13:20
  
【概要】
 横向温泉は古来の伝説によれば八幡太郎義家一行が奥羽征討の時に発見したと言われている歴史ある温泉場である。一説には女人が横を向いている姿に似ていた所から横向温泉となったとの言い伝えもある。ここは奥州三名湯のひとつとしても有名で、この温泉の先には野地・新野地・鷲倉・赤湯・幕川と、まさに秘湯と呼ばれる温泉が目白押しである。

 箕輪山は安達太良連峰の北に位置する連峰の最高峰で、山頂からの雄大な眺望で県民から親しまれている山でもある。今回の箕輪山には夏山では経験があるものの、冬山としては2年ほど前にスキー場のリフトを利用して登ろうとしたことがある。しかし、その時は台風並みの強風のために山頂直下で撤退していた。今日の天気予報では好天が予想されていたが、前回もこの予報に裏切られているので、山の天気予報はあまり当てにしてはいない。前回は山頂への半分も行けなかったがゲレンデは快晴だったのである。安達太良山も同様だがこの箕輪山も風の通り道になっているらしく、絶えず強風に見舞われる山のようであった。

 同じ轍を踏むわけにはゆかないので、今回は樹林帯を歩いて登ろうと横向温泉から箕輪山に登ることにした。樹林帯ならば悪天候でもなんとかゆけるだろうということもあり、最悪、山頂が無理でも途中のブナ林のツリーランを楽しめるからである。前回訪れた時、山頂直下から横向温泉への斜面にはブナの疎林帯があるのを確認している。私はこの昔からあるクラシックルートを滑りたくて機会を伺っていたところだった。

 前夜は土湯温泉近くに幕営するつもりだったが、土湯峠の道の駅付近では猛吹雪のため、早々に退散し、福島市内まで下ってテントを張った。
翌日になると降雪も治まり、上空には青空が広がっていた。土湯峠を通過する頃には朝日に輝く箕輪山が正面にみえて心が弾んだ。横向温泉は隣り合っている箕輪スキー場とは違って、初級者用の斜面とリフトが一基あるだけの静かなスキー場だった。しかし、連休を利用しての宿泊者が多いのか、道路には溢れそうなほどの車が列をなしていて、私たちは除雪終了地点の最奥に車を停めなければならなかった。

 横向スキー場のリフトは8時半に動き出した。それと同時に私たちもシール登高を開始したが、ゲレンデは避けて左手の樹林帯の中を歩いて行くことにした。この付近は木々が混んでいるのだが、下ってくるときはゲレンデを滑ればとくに問題はなさそうだった。ゲレンデは斜度がほとんどないのでいかにもファミリー向けにふさわしいような感じがした。しかし、リフトが動き出してもスキーヤーは一人も見あたらなかった。

 ゲレンデトップを過ぎると本格的な登りとなった。林の中は結構混んではいたのだが、作業道のような切り開きが四方にあって、思わずそちらに誘われそうになる。高度が上がるに従って林間も徐々に広がって行き、この辺りは帰りには快適に滑ってこられそうであった。だが斜度が増すとラッセルは苦しくなる一方となり、一歩一歩スキーの上げ下げがつらくなる。短時間のコースとはいっても、急斜面の登りではみんな喘ぎ喘ぎの登りが続いた。ようやく急坂を登り切ると向こう側は箕輪スキー場のゲレンデになっていた。ブナ林の間からはリフトに乗ったスキーヤーが時々見えた。パウダーの雪質のせいなのか私のシールトラブルもあって、ここの平坦地で小休止をとることにした。

 リフト終点付近は見事なブナ林が広がっていた。そのブナの木に降り積もった雪が、まるで白い花が一面に咲いたようにも見えて、朝日を浴びて煌めいている。吹雪いた後の樹林帯の美しさは特筆もので、いまから下りのツリーランが楽しみな場所であった。

 リフト乗り場を過ぎるといよいよ箕輪山への登りとなる。上空は冬の澄んだ青空が広がっていたが、山頂付近には雪雲がかかっていてほとんどわからない。ここからは距離は短いながらも2時間ほど要する距離があり、今日はとくに山頂が見えないだけに、なおさら遠いようにも感じるところだった。登るに従って風が強まって行ったが、私は前回の時に台風並みの風を体験しているので、それほどの厳しさは感じなかったが、一緒に後ろをついてきていたスノーシューの夫婦などはあまりの風の強さに途中から引き返していった。波打つようなシュカブラが広がる荒涼とした斜面を、縫うように登って行くと風雪はさらに激しさを増して行く。

 箕輪山への山頂には横向温泉から3時間ほどかかってようやく到着した。ブリザードが吹き荒れる山頂には予想外にも登山者が3名ほどもいて、大きな岩の陰に身を隠すようにしながらカップラーメンを食べている。ツェルトも張らずに食べている姿はまるで耐寒訓練をしているようだった。

 私達は山頂で記念写真を撮ると、すぐさま往路を引き返してゆくことにした。厳しい風雪のため視界はほとんど無く、シールは貼ったまま下ることにしたが、結果的にそれは正解だったようだ。シールのおかげで適度にブレーキがかかって、登ってきたトレースに沿ってゆけばそれほど苦労することもなく高度を下げて行くことができたからだ。山頂から少し下ると風はウソのように弱まったため、適当な場所でシールをはがした。そして一気に深雪の滑走を楽しみながらリフト終点付近をめざして下った。

 リフト終点付近の樹林帯まで下ったところで、ツェルトを張りここで昼食をとることにした。一枚のツェルトに5人全員入ると、それだけで体が温まるようだった。みんなそれぞれに飲み物を手に持って早速乾杯をする。ここからは少々天候が荒れても樹林帯なので特に問題はないはずだ。あとは快適なツリーランが待っているだけに、みんなの顔には笑顔があふれていた。

 休憩地点からはブナの疎林帯に広がるパウダー斜面を快適に滑って行く。途中からは高森川をめがけて滑って行こうと山中氏と偵察してみたが、いまにも雪崩れそうな急斜面のため、そこは断念した。安全最優先である。私たちは少しトラバースをしながら元のコースに戻った。その間も結構深雪斜面があって、何回か雪だるまになりながらも滑降を楽しんでゆく。まもなくすると、尾根伝いに下っていたメンバー達が、我々がいる地点めがけて滑り降りてくるところだった。

 急な斜面が終わるとまもなく横向スキー場のゲレンデも近い。高森川に沿って強めの風が吹いていたが、もう気持ちは温泉に入ることしか念頭にはなかった。昨日は高湯温泉や土湯温泉も大混雑のために入り損ねていたので、今日は二日間の汗を流さなければと思いながら、人の姿のない静かなゲレンデを横向温泉に向かって下りていった。


ブナ林に雪の花咲く(1)


ブナ林に雪の花咲く(2)


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