山 行 記 録

【平成18年12月16日(土)/吾妻連峰 天元台〜中大巓



かもしか展望台直下で



【日程】平成18年12月16日(土)
【メンバー】単独
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】吾妻連峰
【山名と標高】中大巓1,964m、(カモシカ展望台まで)
【地形図 1/25000】天元台
【天候】曇り時々雪
【温泉】アルブ天元台 300円
【行程と参考コースタイム】
 第2リフト終点11:00〜北望台12:10〜中大巓(カモシカ展望台)13:10〜ゴンドラ乗り場上駅14:00
  
【概要】
 12月も中旬というのに雪も降らず、このところ雨模様の日々ばかりが続いている。今日も平地では鉛色のような曇り空が一面に広がっていた。日本海側特有の初冬の光景といえばそれまでだが、こんな日には自宅から出るのも億劫で、いっそ根雪にでもなって、早く冬景色になってくれればと願うばかりだった。

 天元台スキー場では3基あるリフトのうち、まだ下の2基しか動いてはいなかった。スキーで滑る分にはなんとか可能なものの、積雪は先週末の蔵王よりも少なく、ゲレンデのところどころには地肌が見えていた。今日は2基のリフトを乗り継ぎ、そこからはシールで登って行くことにしたが、考えてみれば全く昨年と同じ事をやっていることに気付いた。私にとっては本格的な冬の到来前の、いつもの儀式のようなものを行っているようで、苦笑するばかりだった。

 第3リフトからはツボ足でも登っている人はなく、手つかずのバージンスノーが広がっていた。シール登高を開始すると、スキー靴程度しか沈まず、それに風がない分だけ心地よいスノーハイキングである。兎の足跡が雪面をいくつも横切っていて、そんな光景を眺めていると、なんとなく楽しい気分になるようだった。しかし、視界は100mほどしかなく、リフトの支柱もはっきりと見えるのは2〜3本ぐらいであった。

 なだらかなリフト下を歩き終え、北望台直下の急斜面に出る頃には、天候はますます悪くなっていた。急坂を一気に登って北望台のリフト終点に到着すると、今度は密林のような樹林帯に入って行く。西吾妻名物の樹氷はまだ中途半端な状態だったが、それでもこの懐かしい風景には感慨深いものを感じた。

 雪さえあればコースはどこでもとれるのだが、この時期は雪の重みで枝が倒されているので、迷路にようにところどころで進めなくなってしまう。まるでパズルを解くようなもどかしさがあった。そのためになるべく夏道をたどるように心がけるものの、それでも右往左往しなければならなかった。

 カモシカ展望台直下も倒れた枝が混んでいてひどい状態だった。ここは思いっきり左手から回り込んで森林限界に飛びだした。ここからは樹林帯と比べようもないほどの吹きさらし状態だったが、冬の西吾妻山では今日の風などそよ風みたいなものなのだろう。しかし、相変わらず視界がないので、さすがにそこでは休憩する気分になれなかった。

 休憩は展望台直下の樹林帯でとることにして元のルートを戻ってゆき、樹氷に囲まれたような箇所でツェルトを張ることにした。スキー靴を脱ぐと膝頭が隠れるほどに体が沈み、今更ながらスキーの有り難さを思った。先週末は冬山に慣れない恐怖感に襲われたりしたが、今日は特に不安感のようなものはなかった。視界がないのは同じでも、やはり風が穏やかだというのは気持ちに余裕のようなものが生まれるようであった。誰も登ってくる人もなく、ツェルトの中で一人だけの静寂な世界に包まれていると、山と一体になっているような不思議な安らぎを覚えた。

 いつもはここからゲレンデに飛び出すまでの区間はとっても難儀するのだが、今日の深雪は適度に制動がかかるのでそれほど苦労もせずに滑って行くことができた。北望台では係員がひとり上がってきていて、第3リフトの稼働に向けて除雪作業中であった。北望台からは誰も観客のいない舞台を、ひとり踊るように滑りながら急斜面を降りて行く。昨年は快適なパウダーにもう一回登り返したりしたのだが、今日の視界の悪さではそんな気分になれなかった。

 リフト下も最初は適度な斜度があるので、小回りターンで滑り降りて行く。一気に降りて行こうとしたら、中間地点で山スキーを利用して登ってくる、5〜6人のグループと出会った。聞いてみるとみんなは米沢山の会の人達のようだった。この時間ではせいぜい北望台までだろうが、やはりこんな天候でも登ってくる人はいるものだなあとあらためて思った。

 天候は悪くなるばかりなので、一気にゴンドラ乗り場まで下ろうかと思ったのだが、いつにない筋肉痛のために途中で何回か休まなければならなかった。スキーでは夏山とは使う筋肉が全然違うようだった。

 ゴンドラ乗り場付近も濃い霧に包まれていた。今日は悪天候ながらもシール登高とスキー滑走をそれなりに楽しんだからだろうか。ワンディツアーを終えたような充実感を感じていた。私は久しぶりにアルブ天元台の温泉に浸かってゆこうと思いながら、スキー客もまばらな最後のゲレンデをのんびりと下っていった。


リフト下を快適に下る


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