山 行 記 録

【平成18年9月24日(日)/蔵王連峰 硯石から不忘山】



不忘山山頂直下



【日程】平成18年9月24日(日)
【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】蔵王連峰
【山名と標高】 不忘山 1705.3m
【地形図 1/25000】 不忘山
【天候】晴れのち時々曇り
【データ】 移動距離:9.2km 登高高度:約1000m
【行程と参考コースタイム】
硯石10:00〜不忘の碑12:15〜不忘山12:35-12:45〜硯石14:30

【概要】 
 一昨日の朝日連峰で少し膝を痛めてしまったために、今日はなるべく短時間で登れるコースということで、以前から気になっていた硯石の登山口から不忘山に登ってみることにした。不忘山は一般的には山形県の刈田峠や、白石スキー場から登られているが、ここは七ケ宿町から登る唯一のコースで、南蔵王キャンプ場が登山口になっているところだった。近くには長老湖があり、夏場には大勢の観光客でにぎわうところでもあった。

 南蔵王キャンプ場には特に駐車場はなく、路肩に先客の車が一台あるだけだった。私はその後ろに停めさせてもらい、さっそく登る準備を始めた。風光も明媚な場所にあって、また林間もきれいに整備されていたが、人影もなく何となく寂しい雰囲気が漂っている。登山道に入って行くとすぐに立て看板があり、その内容を読むとこのキャンプ場はすでに昨年から閉鎖されていたのを知った。

 登山口から不忘山の山頂までは、登高高度が約1000m。三つあるコースのなかでも高度差は一番ある方なのだろうか。登山口には詳細な案内板もあって、登山道も広くて歩きやすかったが、このコースを登る登山者は意外と少ないようであった。

 今日は特に気温が高くなっていて、出だしはすでに10時になっていた。山登りとしては遅い時間だったが、幸いにしばらく薄暗い樹林帯が続くので、この時期になると真夏のような暑さに苦しめられることはなさそうだった。最初は杉林が続いたが、途中からミズナラやブナなどの雑木林となり、高度が上がるに従って次第に太いダケカンバが目立つようになった。

 このルートは不忘山への直登コースで、最初からきつい勾配が続いたものの、大きな石がゴロゴロした区間を過ぎると、徐々に道は緩やかになり、1100mを越える頃からはしばらく平坦な道が続くようになった。一気に山頂まで登るのだろうと思っていただけに、この平坦地はちょうどよい息抜きのような区間となり、膝が少し痛む私にとってはありがたいものだった。

 やがて周囲に灌木が目立つようになると、見晴らしがよくなり、視界が急に開けてくる。紅葉の盛りにはまだ早かったが、灌木はかなり色づき始めていて、季節の移り変わりを感じさせた。振り返ると長老湖や七ケ宿の町並みが広がっていた。しばらく進むと今度は赤茶けた火山特有のガレ場が続くようになった。同時に標識なども現れるようになり、コースが間違っていないことを知り、ひと安心する。ここでは早くも山頂から下ってくる人がいて、その単独行の男性としばらく立ち話をした。その人は地元の人らしく、何回も登っているのだが、人と出会うのはかなり珍しいのだという。このコースは静かな雰囲気が味わえるので、よく登っているのだといいながら、話が一段落すると硯石に向かって下っていった。

 この時期になると花はほとんど終わっていたが、ところどころにオヤマリンドウやハクサンイチゲ、ママコナなどがまだ咲いていた。高度が上がるに従って、いつのまにか冷たい風が吹き付けるようになっていた。ふと気づくと吹き上がってくるガスのため、山頂付近はほとんど見えなくなっていた。まもなく不忘ノ碑が現れると山頂まではまもなくである。不忘ノ碑は白石スキー場への分岐点でもあり、登山道を追ってみると、何人かの登山者が下ってゆくのがみえた。ここまでくれば不忘山の山頂まではひと登りで、早くも山頂から下ってくる多くの登山者と行き交った。

 不忘山の山頂には約2時間半かかって到着した。予定していたよりも30分もよけいに時間がかかっているのを知ってちょっとがっかりする。時間などはどうでもよいようなものだが、自分にとっては体調のバロメータなので、やはり少しは気になった。もしかしたら一昨日の朝日連峰の疲れがまだ残っているのかもしれなかった。あいにくの濃霧の中ではあったが、見慣れた山頂の標識が現れると、意外と周囲には登山者がまだまだ休んでいるのがわかった。

 山頂はまるで冬山にでも登っているような視界の悪さに包まれていた。気温は低く、動かずにいるとたちまち体温が冷えてくるようであった。私はそそくさと昼食を済ませると、早々に下山にとりかかった。大勢いた登山者達は、私が横になっている間に白石コースを下っていったのか、気づいたときには誰もいなくなっていた。

 今までこの不忘山には刈田峠と白石スキー場からしか登ったことがなかったが、この硯石コースは道も歩きやすく、静かな山歩きが好きな人にはお勧めのコースのようである。北蔵王、中央蔵王、そしてここの南蔵王は、いつきても大勢の登山者であふれているが、このコースだけは例外のようであった。森林限界を超えた付近から眺める展望は素晴らしく、今日はこのコースを知っただけでも良かったと思った。今回は山頂からの展望は楽しめなかったものの、私は満足した思いで不忘山の山頂を後にした。


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