山 行 記 録

【平成18年9月2日(土)/前滝コース〜瀧山〜姥神コース



瀧山山頂に立つ斎藤茂吉の歌碑(左奥は雁戸山)



【日程】平成18年9月2日(土)
【メンバー】2名(妻)
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】蔵王連峰
【山名と標高】瀧山(りゅうざん)1,362m
【地形図 1/25000】山形南部・笹谷峠
【天候】晴れ
【温泉】南陽市宮内 ハイジアパーク南陽700円
【行程と参考コースタイム】
登山口10:30〜垢離かけ場10:52〜長峰コース分岐11:14〜霊山神社分岐11:24〜蔵王温泉分岐(昼食)12:55-13:15〜瀧山山頂13:30-13:50〜姥神地蔵14:25〜うがい場14:55〜登山口15:20
  
【概要】
 瀧山は蔵王連峰の一番西方に聳える山で、山形市からはちょうど南東に位置している。妻との瀧山は2年ぶりで、前回は蔵王温泉から登って、ドッコ沼を巡りながら中央高原散策路をたどり、鳥兜山から大釈山を経由してのミニ縦走だったのだが、全く同じコースではつまらないので、今回は瀧山の西側に広がる西蔵王高原から歩いてみることにした。蔵王温泉の裏側がちょうど西蔵王高原であり、一帯は山形市が経営しているのどかな西蔵王放牧場となっている。ここから瀧山までの登りの標高差は約600m程度と、蔵王の中でも手軽に楽しめるコースが昔からひらかれていて、数百に及ぶという麓の宿坊をいにしえから支えてきたという歴史のある山でもある。

 9月に入ったとはいえ、まだまだ残暑が厳しい毎日が続いていて、今日も気温がかなり上がる予報がでていた。今は営業をしていない西蔵王山荘からさらに奥に進むとまもなく登山口に着く。すぐ近くには三百坊のペンションがあり、また西蔵王放牧場の入口にもなっていて、登山口には周辺の案内図や放牧場の広い駐車場もある。ここには登山者のものと思われる車も2台〜3台ほど駐車中で、見るからにのどかな雰囲気が漂っているところだった。

 西蔵王高原からは前瀧、姥神、大滝とそれぞれ三本のコースがあって、うち大滝コースが落石のため通行禁止となっていた。そして急斜面が連続する前瀧コースは、下山が禁止となっているコースで登りにしか利用できないようであった。ここはガイドブックに従って、前瀧コースを登って、姥神コースを下る無難な行程をとることにした。

 緑の放牧場には乳牛が樹木の下で休んでおり、いかにも牧歌的な風景が広がっている。登山道のすぐ側では杉の伐採作業を行っていて、建設機械などの音が響き渡っていた。はじめは放牧場を眺めながら登ってゆき、やがて杉林の樹林帯に入ってゆく。しばらくは日差しも遮られ、勾配も緩やかで快適な山道が続いた。多くの人に歩かれているのか登山道は明瞭であり、またコース標識なども整備が行き届いていて、とくに迷うような心配はなかった。

 長峰コースへの分岐標識からさらに進むと、前瀧コースと霊山神社への分岐がある。ここは龍山川の源流になっているらしく、りっばな石標も分岐点に設置されていた。なだらかだった山道はここで終わりとなり、分岐からはいよいよ本格的な急坂が始まる。急斜面にはほとんどフィックスロープがあるが、半分は木の根につかまりながら登るようなところもあって、まさしく息をもつかせないほどの急登の連続となった。

 稜線が近くになるとハクサンイチゲがチラホラと咲いていて、ふっと緊張した心が和んでくるようであった。妻はここの急坂の連続でかなり足が疲れたらしく、私が少し上で待っている時間も多くなっていた。右手を見上げると、すでに瀧山の山頂が見えているのになかなか稜線にたどり着けないのがもどかしい。それでもときどき立ち止まりながら振り返ると、眼下には山形市街地が俯瞰できて、展望が楽しめるのが嬉しい。また吹き上げてくる涼風は、疲れた体を癒してくれるようであった。山頂付近からは大勢の笑い声や話し声などが私達まで聞こえるほど稜線は目前に迫っていた。

 ようやく縦走路の分岐点である稜線の一角に着いたのは午後も1時近くになってからだった。ここは蔵王スキー場のゲレンデが見おろせる格好の休憩場所でもあり、左手遠方には雁戸山への縦走路も見えている。もう瀧山の山頂は目前だったが、ここで昼食をとってから山頂に向かうことにした。妻は2年前も休憩をとったこの地点を全く忘れているようであったが、それだけ疲れ果てていたのかも知れなかった。登りはじめてからすでに2時間30分が経っていた。

 妻はシャリバテもあったのだろう。おにぎりや果物などで十分に腹を満たすと、見違えるほどに元気を取り戻し、30分も休まないうちに、早く山頂へ向かおうと、私が煽られるほどまでに快復したようだった。そうはいっても足の疲れが心配だったが、もうほとんど登りらしい箇所はないので、私達はあとかたずけを簡単に済ませて山頂へと歩き出した。

 瀧山では単独の人が二人ほど休んでいるだけで静かな山頂だった。先ほどまで聞こえていた団体らしい人たちはとっくに下ったようであった。山頂は遮るものがない360度の展望が広がっていて、眺めているだけで疲れが吹き飛ぶようでもある。ここでは乾いた涼風も流れていて、周りにはススキの穂も風に揺れ、すっかり秋の風情が漂っている。妻は文庫本を読むからと腰をおろし、私はザックを背にして昼寝をとることにした。横になりながら空を見上げていると、雲ひとつ無い青空の中を赤トンボが大きな群れとなって飛び交っていた。

 山頂の神社の陰に回ると蔵王温泉と姥神コースの分岐の標識が立っている。この姥神コースは最初こそ少し急な斜面があるものの、コースは広く、また至ってなだらかな登山道であった。危険と思われる箇所などはほとんどなく、登りの急斜面を思えば、比較にならないほどの快適さである。その分だけ距離は長く時間がかかりそうだったが、疲れていた妻には程良い勾配だったようである。

 大滝コースへの下山禁止の標識を左手にみて、まもなくすると前瀧コースでもみかけた乳母神像があり、ここでは二人で手を合わせてゆく。さらにどんどんと下ってゆくと、樹林帯の間からは明るい放牧場が透けて見えてきて、やがて樹林が切れると目の前には放牧場がいっぱいに広がった。その放牧場の縁を回るようにしながら左手に下りてゆくとまもなく「うがい場」だった。

 「うがい場」まで下ると登山道は終了となり、あとは放牧場内の舗装道路を30分程度歩いて行くだけである。日差しは再びジリジリと降り注ぐようになっていたが、反面、秋を思わせるような爽やかな風が吹いていて、そこからは季節の移り変わりを感じながら、のんびりと二人で駐車場まで下っていった。


登山口


急登


姥神地蔵


のどかな放牧場


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