山 行 記 録

【平成18年2月19日(日)/坊平高原〜熊野岳〜中丸山〜猿倉】



ライザスキー場から中丸山を仰ぐ(右最奥は熊野岳)


【メンバー】西川山岳会(柴田、安達、荒谷、蒲生)+上野
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】蔵王連峰
【山名と標高】熊野岳1841m、中丸山 1562m
【天候】晴れ
【行程と参考コースタイム】
リフト終点9:40〜お田ノ神避難小屋〜馬ノ背〜熊野岳避難小屋11:20-12:10〜熊野岳12:20〜コル13:10-13:40〜中丸山14:00〜1246m地点1425-14:40〜猿倉駐車地点15:40(718m)
猿倉駐車地点=(車)=ライザスキー場駐車場

【概要】
昨夜は所属山岳会による知人のエベレスト登山壮行会が寒河江市内であり、夜はそのホテルの駐車場で車中泊をした。翌日のスキーツアーはホテル宿泊者の参加者もいるので、出発は少しも急ぐ必要はなく、私は夜が明けてから坊平高原に向かった。今日は久しぶりに雲ひとつ見あたらない快晴の空が広がり、早朝からワクワクするような期待感で胸が高鳴る思いがした。今日のツアーの下山口である猿倉スキー場付近に車1台をデポして、集合場所のライザスキー場まで上がると、すでに大勢のスキーヤーやカンジキツアーの登山者達で溢れていた。第2リフト乗り場で登山届けを提出し、さらにリフトトップへと向かうと、リフト終点にはたくさんの登山者や山スキーの人たちがいて、むしろゲレンデのスキーヤーが少ないような感じさえするほどに見えた。

シール登高を開始するとまもなく周囲の風景がすべて見渡せるほどになる。樹氷原から振り返れば、安達太良山から吾妻連峰、飯豊連峰、そして朝日連峰から月山、村山葉山などの白い山並みが市街地の奥に連なっている。蔵王の名物である樹氷は、先日の気温上昇で融け出してしまい、本来の姿にはほど遠かったが、最近の降雪で再び形ができつつあるようである。もちろん今日の目的である中丸山や熊野岳は朝の強い日差しを受けて神々しいまでに輝いていた。春を思わせるような日差しは、日焼け止めクリームが必要なほどで、私達は山シャツ一枚で登ってゆく。それでも頭や背中からは汗が流れるようであった。途中で、50人ほどもいるだろうと思われるほどの、スノーシューやカンジキの集団を追い越してゆく。昨年もこの中丸山ツアーでは天候に恵まれたが、今年も同様の好天には感謝するばかりだった。

馬の背方面を見上げるとリフト直下を大勢の人たちが登っているのが見えた。廃線リフト小屋で小休止を終え、私達は一路、熊野岳へとショートカットしながら直登してゆく。刈田岳も今日は宮城県側からの人たちも加わり、かなりにぎやかなことだろう。馬の背からは風が強まり、アウターを羽織った。快晴とはいえ、蔵王の稜線はさすがに風が冷たい。私たちはお釜の縁をたどるようにして、途中、お釜へのドロップ地点を確認したりしながら、熊野岳避難小屋へと向かう。下界は晴れていても、めったに晴れることのない蔵王の山頂ではあるが、今日だけは特別の日のようで、北蔵王から南蔵王まですべて見渡すことができるのは極めてめずらしい。氷結したお釜を見られるのも久しぶりであった。見渡せばいくら眺めていても飽きない風景が四方に広がっていた。

避難小屋に登り着けばすぐ裏手はもう熊野岳の山頂である。そこからは遮るものがない、360度の展望が楽しめる。北蔵王連峰の主峰、雁戸山はまだまだ白い頂を抱いて、北蔵王の盟主を誇示しているかのようだ。鳥海山は残念ながら雲に隠れて見えなかったが、他の山々はすべて見渡すことができ、山名もほとんど同定できるようであった。避難小屋に入ると早速缶ビールが空けられ、みんなで回し飲みをする。私たちは熊野岳から滑降開始となるだけなので、昼食を兼ねた大休止とし、のんびりムードだったが、その間にも小屋には入れ替わり立ち替わり、登山者やスキーヤーが出入りを繰り返していた。

熊野岳の三角点はまだ雪の下に埋まっていて見えない。山頂神社でシールをはがした私達は、前方にみえる中丸山をめざして滑降を開始した。しかし、はじめはクラスとした斜面にかなり難儀して、とても華麗な滑降というわけにはゆかず、いたるところで転んだ。今日は以前使用していたスキーを持ってきたのだが、なんとなく違和感があって、自分のスキーなのに慣れるまで時間がかかった。それでも少しずつ雪は柔らかくなってゆき、快適なツアーコースとなってゆくのは時間の問題だった。左手には仙人沢をはさんでライザスキー場がみえている。それはまるで箱庭を眺めているような、不思議な光景でもあった。中丸山の直下まで下るとそこではまたビール休憩となる。そこから山頂まではわずかだが、シールを貼って登らなければならないのでちょうどよい休憩場所でもある。そのコルは風もなく穏やかで、春のような穏やかな日差しが降り注ぎ、時間の経つのも忘れる程だった。今日は珍しく先行者が二人、早くも下ったトレースがあったが、他には人影も見あたらず、自分たちだけの静かな時間を楽しんだ。

中丸山山頂までの登りは約10分。山頂まではいくらもかからず、すぐにシールを外して再び滑降開始となる。左手の仙人沢を見下ろすと、氷柱の高さが40mもあるという、アイスクライミングに使われる右又沢が見えたが、特に人影は見あたらない。朝からヘリコプターが盛んに飛んでいたのだが、今日はこの付近でテレビ放映のための撮影が行われているらしかった。

中丸山の山頂からは雪質も安定して、快適なツリーランが楽しめるところだ。昨年はこんな斜面ならばずっと続いて欲しいと願いながら下ったことを思い出した。今年は例年にない大雪の後、高温が続いたり雨が降ったりしたおかげで、雪質は様々に変化して、そのたびに転倒したりしたのだが、それもまた今日の好天では楽しいばかりであった。1246m地点の広々としたところは見晴らしもよく、ちょうどよい休憩地点ともいえそうなところだ。左手には番城山が意外な近さに聳えていて、飯豊や朝日連峰も眺められる素敵な展望箇所でもあった。15分ほどの休憩を終えてなおも尾根を滑ってゆくと、やがてブッシュのような木立が混んできて右手には沢沿いに登山道が現れる。その登山道に降りれば、あとはその道形を伝って滑走をしてゆくだけである。まもなくすると前方に蔵王温泉へと続く県道が現れて、今日のスキーツアーが終わろうとしていた。今回は事情があって参加できなかった西川山岳会の山中氏が、終了地点まで出迎えにきてくれていた。


今回のコース


熊野岳への登り


熊野岳避難小屋からのお釜


中丸山山頂


中丸山山頂の上野さん(後方は熊野岳)


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