山 行 記 録

【平成18年1月7日(土)/滝野〜白鷹山



山頂の虚空蔵神社


【メンバー】単独
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】白鷹丘陵
【山名と標高】白鷹山994m
【天候】晴れ時々曇り
【行程と参考コースタイム】
国道348号駐車地点10:00〜稜線(休憩)13:30〜白鷹山(虚空蔵神社)14:20〜白鷹トンネル(小滝側入口)15:20〜白鷹トンネル(白鷹側入口)15:40〜駐車地点15:50
  
【概要】
白鷹山は朝日連峰からわずか東に離れた、白鷹町、山辺町と南陽市との境界地点に位置し、白鷹丘陵の中心をなしている山である。山頂には虚空蔵神社が建ち、四方から登山口もあって、標高が1000mに満たないことから、多くの参拝者、登山者が訪れているが、もちろん冬には登る人もまれで、山スキーとしての記録もあまり聞かない山である。

天気予報によれば県内の天候はどこもよくなさそうなので今日は山の予定はなかった。しかし、正月も山にゆけず、それほどの悪天候でもなさそうなので、近くにどこか良さそうな山がないかと考えてみた。そこで白鷹山に行ってみようかと思ったのだが、昨年と同じ中山スキー場からではつまらないので、今回は白鷹町の滝野地区から登ってみることにした。国道348号線を通行するたびに山頂付近の無木立の白い斜面がいつも気にかかっていたこともあって、たいした標高差もなさそうなので、いつかカミさんとでも行ってみるつもりでいるルートであった。

登り口はどこにしようか迷ったものの、白鷹トンネルの手前の白鷹側にある小さなパーキングに車を止め、適当なところから尾根を登ってゆくことにした。パーキングとはいっても今年の大雪で除雪が追いつかず、わずか1台分程の駐車スペースしかない。一応、どこから登るかわからなかったのでGPSには白鷹山の山頂の位置だけは入力してきている。心配した天候は予想外に良くなり、一面に青空が広がるほどで、あの天気予報は何だったのだろうと、この時点では訝しく思えるほど回復基調に思えた。尾根に上がるまでは急な斜面をジグザグに登ってゆくと広々としたところに出た。さらに進んでゆくと、雪面から頭だけを出しているカーブミラーがあり、どうやらそこには林道が続いているらしかった。ここは夏にも来たことはないところで、新鮮な驚きとともに何となく楽しい気分になる。しかし、林道をたどれば時間だけがかかりそうなので、斜面を直登してゆくことにした。周りは杉や赤松、そして手入れされていない雑木林の密林である。登るにはそれほど支障はなさそうだが、とてもスキーで下ってくるところではないな、と思いながらシール登高を続ける。尾根は割合にはっきりしているので忠実にたどってみるが、小さなアップダウンがあって意外に時間がかかった。また新雪のラッセルも結構きつく、汗が噴き出してきて首に巻いていたタオルはびっしょりと濡れていた。

1時間ほど登ると、当分持ちそうだと思われた好天はいつの間にか失われ、薄暗い感じさえ漂っていた。空全体に雪雲が広がり、気付いてみれば小雪が舞い始めている。高度を確認するためにGPSを見ると、いつのまにか表示が消えていて焦った。今日は最初から新しい電池を入れてきたばかりなのでバッテリー切れではないはずである。よく確認してみると電源が落ちていたわけではなく、上下に細い線が数本あって、液晶に不具合が発生したようであった。この現象は以前にも何回か経験しているので、もう耐用年数を超えてしまったのだろうか。トラックのログが取れるかどうかわからなかったが、一応電源だけは入れておくことにしたものの、とりあえず地形図とコンパスを頼りに行動するしかない。しかし、天候さえよければGPSなど必要もない山なのだが、天候が悪化してきただけに、少し不安感が出てきたのは確かだった。しょうがないので胸にぶら下げているプロトレックで高度を確認し地形図を見ると、目の前の急斜面は最後のピークに至る南斜面のようであった。新調したばかりの太板ではあるが、シールは従来の物の使い回しなので、スキーのソール面が少し出ているために、急斜面ではスリップして後ずさりばかりする。さらに風雪模様となってきたために、樹林帯に入って小枝をつかみながらでもこの急斜面を乗り切ろうとするが、かえってスリップしてしまい、密林ではスキーの取り回しにかえって苦労しなければならなかった。

時間が経過するたびに風雪が強さを増してゆく。たいした山ではないのに引き返すのも悔しいという思いがある一方で、いつでもこれる山なので潔く撤退しようかという思いが交錯する。しかし、高度計ではまもなく山頂の高さを示しているだけに、ストックに力をこめて無木立の急斜面を登り続けた。雪面はフカフカとしたパウダーなので下りが楽しみな斜面なのだが、南斜面だけに弱層があるのか、20cmほどの新雪がところどころで崩れてゆくのが気にかかる。今日は単独なので無理はできないと思いながら慎重に気を配り稜線に登り切った。稜線はすでにホワイトアウト状態で、視界は20mほどもなかった。もうここで引き返してもよい気持ちになっていたが、稜線の反対側はブナ林なので、取りあえずそこにツェルトを張って小休止をとることにした。

ツェルトをかぶると気持ちが落ちついてくる。地形図を見ると距離的には昨年の中山口とそう違わないので、山頂までは2時間ほどの登りを考えていたのだが、ここまででさえもすでに3時間半もかかっている。地形図ではよくわからない小さなアップダウンがあって、意外と距離があるのかもしれなかった。高度はもう山頂に近い数値を示しており、今回はここからもう引き返しても悔いはなかった。しかし、暖かいカップラーメンを腹に入れて、蜜柑を一個食べると元気が少し戻ってくる。この位置からは両側にもピークが有りそうな感じで登り着いた場所がよくわからなかったが、何となく左側が高そうな感じがするので、地形図を広げてコンパスをセットする。ツェルトで休んでいるうちに、ここまできたらやはり冬の虚空蔵神社を確認してみたいという欲がでてきていた。いざとなれば下る方角ははっきりしており、どこを下っても国道にでるはずなのでそれほど不安はなかった。

ツェルトを抜け出すと視界は相変わらずなかったものの、先ほどからみれば空が幾分明るさを取り戻しており、天候は少し回復しているようであった。後かたづけを終えて稜線を左手に進むと少しずつ高みに登ってゆく。休憩地点からは800mほどで、杉林に囲まれた見覚えのある虚空蔵神社が木立の間から見えてきた。山頂到着は登り始めてから4時間以上もかかっていた。この山頂は実に久しぶりで、10数年振りにもなるのだろうか。虚空蔵神社の隣にはいつのまにかりっぱな休憩所までできていて驚いた。その休憩所も今年の大雪ですっぽりと埋まり、入口のドアが半分ほどしか見えない。屋根にも大量の雪が積もっていて、あたりは森閑とした静けさにつつまれていた。神社の前までは今日登ってきたらしい、かんじきの踏跡が残っていたが、すでに下ってしまった後らしく、反対側には深々としたトレースが続いていた。

今回も無事に登ってこられたことに感謝をして神社に手を合わせる。山頂さえ確認できれば長居は無用であった。神社の前で風を避けながらシールをはがし、早速下り始める。最初こそ元の樹林帯を戻ったが、途中から立木のない右手の支尾根に下ってゆくと広々とした斜面に出た。そこからは距離は短いものの快適なパウダーの急斜面を下って行く。下るほどに風は弱まり、まもなく急斜面直下の杉林に出た。ちょうど登ってきた自分のトレースが残っていたが、もとの密林地帯を下るのは楽しみがなさそうなので、左手の沢にそって滑ってゆく。登りで4時間以上かかったところも、スキーで下ればあっという間である。山頂からは300mほどの標高差だが20分もかからずに平坦地に出た。スキーの機動力をあらためて思うばかりだった。

やがて広々とした雪原に飛び出すと、登ってきた尾根が右側に見えた。真っ直ぐに進めばどこに出るのかは判らなかったが、どちらにしても国道にでるのは間違いはないはずである。しかし、できれば登ってきた白鷹側のトンネルの入り口付近に出たいと思っていたが、心地よい滑走を味わっているとどこに出ようとどうでもよくなっていた。西の山並みを見ると空が赤味を帯び始めていて夕暮れが迫っていた。雪原をまっすぐに進んでゆくと、まもなく沢があらわれて、その沢にそって林道らしきところに出た。時間をみるととっくに国道に出てもよいような距離を滑ってきたのだが、なかなか国道が見えてこない。かなり昔のことだが白鷹トンネルの小滝側から白鷹山への林道を終点まで走ったことがあり、現在歩いている林道はその時の感じによく似ていることを思い出していた。林道には倒木が横たわっていたりして快適な滑走とはゆかなかったものの、前方からは車の走る音が聞こえ、まもなくするとようやく国道に出た。半分以上予想していたこととはいえ、やはり白鷹トンネルの小滝側に出たのだった。

ヘッドランプをザックから取り出し、スキーを担いで白鷹トンネルに入ってゆく。ここを歩くのは初めてであったが、予想以上にトンネル内は暗く、歩くためにはヘッドランプが必携なのをあらためて知った。白鷹トンネルは歩くと意外に長く、抜け出すまで20分近くかかったものの、出口に出れば駐車地点まではまもなくだった。すでに夕暮れが迫っていて、3時までは自宅に戻れるだろうとカミさんに告げてきただけにそれだけが気がかりになっている。ここでは携帯は通じないので、急いで下界まで下りなければならないようであった。



林道終点(白鷹山表参道)


白鷹トンネルの山形側に降りてきてしまった


白鷹トンネル(小滝側)


今回のコース(GPSの液晶は故障していたがログは残っていた)縮尺約 1/30,000


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