山 行 記 録

【平成17年12月17日(土)/小野川温泉〜月山】



ゲレンデトップ


【メンバー】単独
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】吾妻連峰周辺
【山名と標高】 月山 529.1m
【天候】快晴
【行程と参考コースタイム】
小野川温泉駐車場9:50〜スキー場10:00〜ゲレンデトップ10:25〜月山山頂11:05〜ゲレンデトップ11:40〜小野川温泉駐車場13:00
  
【概要】
 今日は発達した低気圧と日本上空に流れ込んだ非常に強い寒気のため、全国的に大荒れが予想されていた。自宅付近も濃霧に覆われていて、天候の悪化を覚悟していたのだが、川西町を抜けると信じられないほどの晴れ間が広がっていて、飯豊連峰や吾妻連峰にも雲ひとつ見当たらなかった。いったいあの天気予報はなんだったのだろうと、半分訝しみながら天元台に向かったが、もちろんこんな望外の好天はうれしいばかりだった。

小野川温泉を抜けて白布街道に出ると、正面にはまばゆいばかりの斜面が朝日に反射して輝いているのが見えた。ここは知る人ぞ知る、スキー初心者には有名な小野川温泉スキー場であった。スキー場はもちろんまだオープンはしていなかったが、私は上部まで全くゆがみのない、そして朝日に弾けるような一枚バーンを見て、天元台へ向いていた気持ちが不意に変わった。ただこのスキー場はあまりに小規模で、ゲレンデをただ登るだけではつまらないのもわかっていた。しかしものは考えようである。長い滑降を楽しむには向かないが、その時は何回か往復すればいいのだし、近くに山があればそのピークまで足を延ばせばよいのである。ちなみにスキー場の左手にはちょうど手頃なピークがあり、地形図をみるとそこにはなんと月山という山名が記載されていた。たぶん地元の人以外には知る人もいない山だろうが、こんな機会はめったにないだろうと、このいささか大袈裟な名前の山まで往復することにして、スキー場を少し行き過ぎたところから車をUターンした。今日は他に人の姿が見当たらないので、きっと手つかずのバージンスノーを心ゆくまで一人で楽しめるだろうと思うとなんとなくウキウキしてくるようであった。車の上にスキーを載せたスキー客が、白布街道を何台も天元台へと車を飛ばしていった。

 スキー場の駐車場はまだ除雪さえされていないので温泉街近くの駐車場に車を止めた。あらかじめシールを貼っておいたスキーを履き、早速手つかずの斜面を登ってゆく。信じられないくらいの上天気は、まるで春山のようでもある。動物の踏み跡さえない斜面は、ただ眺めているだけでも別世界を思わせるようであった。アウターもなにも必要がなく、シャツ一枚になってゲレンデを登ってゆく。それでも朝のうちは気温が低いので雪面はモナカ状態だったが、徐々に気温が上がってくればすぐにも柔らかくなるだろう。せめて湿雪になるまえに一本は滑りたいものだと思いながらシール登高を続けた。予想外にも汗が止めどなく流れ続けて、途中でポカリスエットを一本飲み干した。

 リフトは一本分だけなのでゲレンデトップまではそんなに時間を要せずに到着した。ゲレンデのトップからは左手の木立の中に入って行く。杉や松、ナラやクヌギなどの樹林帯で、いささか込み入っているのが少しわずらわしい。コース的には尾根伝いだが、方向は小野川温泉側に戻る形になるので少々妙なコース取りであった。樹林帯の中は日影のためにサラサラとしたパウダーで、木々が混みあっていなければ快適な滑りが楽しめるかも知れなかったが、あいにくヤブのような密林地帯ではそうもゆかない。ヤセ尾根のような登りが続いたが、最後の短い急坂を登ると月山の山頂に到着した。そこには月山神社と彫られた2本の石柱と小さな祠が建ってあった。標高こそ出羽三山の月山から見れば四分の一程度しかないが、雪さえあればこんな山でも楽しい山スキーの対象となるのだから不思議なものである。向こう側には白布温泉への道路が見えていて、真っ直ぐに向かえば温泉街へとすぐにも降りて行けそうである。なんとなくゲレンデを一回りしてきた格好になったが、もしかしたら反対側には夏道があるのかもしれなかった。

 一応安全祈願として参拝をしたあと、シールをはずして元のコースを戻ってゆく。山頂の急坂さえしのげば後は割合に快適に滑ってゆくことができて、スキーのありがたさにしみじみとする。そしてほどなくゲレンデの上部に着いてしまい、滑降を残すのみとなったが、せっかくの日本晴れでもあり、ここでのんびりと休憩時間をとって小休止とする。白布温泉の方角をみれば中大顛がすっきりとみえていて、吾妻連峰も最高の天気に恵まれているようであった。しかし不思議と羨ましさなどは感じなかった。スキー場のリフトが動いていないというのがこんなにいいものだとはなかなか他人にはわからないだろうな・・・。そんなことを考えるのはなんとなく楽しかった。悪天候を予想していたのに、一転して春のようなスノーハイキングとなるのだから冬山はわからないものだ。写真を撮ったりして、のんびりとした気分にしばらく浸りながら、静かな山でのひとときを楽しんだ。

 下りは快適な滑降であった。モナカだった雪面も手頃な雪質に変わっていて何の問題もなかったが、日陰の部分は粉雪が舞い上がるほどのパウダーで、せめてもっとコースが長ければと思わずにいられなかった。道路が見えてきたところで途中で立ち止まり、自分だけのシュプールがうれしくて何枚も写真を撮った。しかしあっという間に下まで降りてしまうとなんとなく物足りなくて、もう一本登ることにした。いくら時間がたっても誰もやってくる気配はなく、今日はこの素敵な斜面が独り占めであったが、さすがにそう何回も往復するという気持ちにはなれず、2本滑っただけで終わりにした。しかし、この大雪では明日からでもこのスキー場はオープンするのかもしれず、そう思うとたまたま偶然に巡り会ったこの雪景色がとても愛しくもあり、今日はちょっとした嬉しい一日となった。


今回のコース


バージンスノー


山頂の月山神社


快晴の空に天女が舞う


ひとり、シュプールを刻む


誰もいないゲレンデ


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