山 行 記 録

【平成17年9月24日(土)/朝日連峰 ナカツル尾根〜大朝日岳



ガスの中、大朝日岳山頂に立つ伊藤さん


【メンバー】2名(伊藤孝、蒲生)
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】朝日連峰
【山名と標高】大朝日岳1,870m
【天候】曇り時々雨
【温泉】西村山郡朝日町「いもがわ温泉」150円
【行程と参考コースタイム】
  朝日鉱泉7:35〜出合8:55〜長命水9:47〜大朝日岳11:35着/1200発〜長命水13:00〜出合〜朝日鉱泉15:10
 
【概要】
例年ならば今頃は何回も飯豊や朝日に足を踏み入れている時期だが、今年は体調不良でほとんど登る気持ちにはなれないでいた。でもハイキング程度のトレッキングを続けているうちに、なんとか行けるところまでいってみようか、という気持ちに少しずつ変わりつつある自分を感じてもいた。しかし単独ではまだすごく不安があるので、今回は山仲間の伊藤さんを誘い、一緒に大朝日岳に登ってもらうことにした。

予報によれば今日は晴天が期待されていた一日であった。しかし朝日町に入っても陽射しはなく、上空は薄雲に覆われて夕暮れのような薄暗さに包まれている。久しぶりに朝日鉱泉に着いてみると、
天候はいまひとつでもさすがにこの時期は連休ということもあり、県内外から多くの登山者が入山しているようであった。当然ながら駐車場はすでに満杯で、空いているスペースはなく、林道の路肩に駐車しなければならなかった。「朝日鉱泉ナチュラリストの家」で登山届けを記入し、ナカツル尾根をめざして歩き出す。予想外の曇天に気分は沈みがちだったが、陽射しがないぶんだけ涼しく、今日のような長丁場の場合にはちょうど良い天候ともいえそうであった。

しばらく沢音を聞きながら朝日川の沢沿いの山道を歩く。吊橋を二つ渡り沢に下りて行くとコースが少し違っているのに気付いた。良く見ると頑丈そうなコンクリート橋が土砂に押し流されるように崩れており、昨年までの登山道は渡れなくなっていた。去年の豪雨のためだろうが、自然の猛威というものを今更ながら見せつけられた気がした。四ヶ所ある吊橋を渡ると二俣の出合につく。二俣からはいよいよ本格的なナカツル尾根で、ここからは胸突き八丁の急坂が連続するところだ。風がないので蒸し暑く、たちまち汗が全身から噴き出してくる。長命水の水場で水筒を満たして、さらに急坂を登って行く。すでに周囲は霧に包まれていたが、いつのまにかはっきりとした霧雨に変わり始めていた。樹林帯は薄暗く、予報に反して天候は悪くなる一方であった。また太いブナの倒木が至るところにあり登山道を塞いでいる。みな胴回りが何メートルもありそうな大木ばかりだった。これは20年ぶりといわれた昨年の大雪のためだろうが、根元から裏返しになっているを何度もみるにつけ、その無惨な姿には心が痛む思いがした。道端にはオヤママリンドウやマツムシソウ、アキノキリンソウ、ハクサンイチゲ、ミヤマトリカブトなどがわずかに目立つ程度で、ほとんど盛りが過ぎているようであった。そういえば今年はニッコウキスゲやヒメサユリをひとつも見ることがなかったことにあらためて気づいた。体調を崩しているうちに季節がいつのまにか大きく過ぎ去っていた。登るにつれて霧雨は本格的な雨になり、途中で二人とも雨具の上着を羽織った。

まもなくすると10名ほどの団体とすれ違った。みんなピンク色の同じ様な雨具を着た、ほとんど女性ばかりのグループのようであった。山頂が徐々に近づくに従って雨足が少しずつ弱くなり、周囲の明るさも増したような気がした。しかし、ガスから抜け出すような気配はなく、視界は相変わらずなかった。私の体調はやはり本調子ではなく、先頭をゆく伊藤さんになかなか追いついてゆけない。途中で何度も立ち止まり、時々呼吸を整えてから追いかけなければならなかった。やはり朝日は葉山などとはレベルが違うなあ、などと当たり前のことを考えながら一歩一歩足を引きずるようにしながら登った。ようやくガスの中から大朝日岳山頂の標柱が現れたときには心底ホッとした気持ちに満たされた。登りはじめてからちょうど4時間がたっていた。山頂では登山者が二人休憩中だった。このまま雨が止まなければ避難小屋で昼食をとろうと二人で決めていたが、幸いに風が少しある程度で休むには支障がなく、私達はこのまま山頂で昼食をとることにした。本音をいえば小屋への往復の30分がつらいというのが実際で、私はもう一歩も歩きたくない心境であった。岩陰で風を避けながら早速、ビールで乾杯をする。何も見えなかったが、私はなんとか朝日に登れたことがうれしく、つかの間の山頂でのひとときを過ごした。しかし、休んでいる間に晴れるかと思われた天候は期待とは裏腹に、濃霧は再び大粒の雨に変わろうとしていた。

今日は大朝日岳に登れたことにただただ感謝をして山頂を後にした。雨は大降りになるというほどではなかったが、それでも霧雨は止むことはなかった。晴れていれば平岩山の草紅葉を眺めながら下れるはずだったが、残念だが今回はあきらめるしかない。山頂付近では潅木が色づき始めているのがわかる程度で、ナナカマドの赤い実だけが目立った。雨が降っていることもあって、一気に急坂を下り続け、長命水まではちょうど1時間で下った。長命水の標高は1060mで、山頂からの標高差800mをちょうど1時間で下ったことになる。ナカツル尾根はそれほどの急坂ということでもあるのだろう。雨具は着ていても私は汗と雨で下着まで濡れはじめていた。沢音が次第に大きくなり、二俣まで下りてくれば急坂のナカツル尾根は終わる。後はダラダラとした沢沿いの道を朝日鉱泉へと歩くだけである。結局、尾根上で出会ったのは先ほどの団体だけで、ナカツル尾根を登ったのは私達だけのようであった。私は下山後の温泉ばかりを楽しみに下り続けたが、激しい疲労のためか頭痛がひどく、帰りの運転は伊藤さんにお願いしなければならなかった。


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