(雨呼山)
雨呼山は山名のごとく昔から雨乞いの山として信仰の対象の山であった。水晶山を午前中に登り終えて、少し余力があったのでガイドブックに従って、近くにあるこの雨呼山も登ってみることにした。標高は906mと水晶山よりはずっと高いものの、登山口の標高も高く、これも1時間程度で登れるようであった。
天童貫津南から「ジャガラモガラ」をめざした。案内板のある舗装路の終点には駐車場もあって、通常はここから歩き出すようであったが、その先にも砂利道の林道が伸びているので車を進めてみた。やはり二つ目の山ともなるといくらでも林道歩きは少ない方へと、少々弱気になっている。しかし、1km程進むと行き止まりとなり、歩いてきてもたいした距離ではなかったようである。
「ジャガラモガラ」とは流紋岩の凹地状になっているところで、冷たい風が地下から湧き上がってくるため、高度が低いほど高山植物が咲いているという不思議な場所であった。今日は山菜採りを兼ねながらこの「ジャガラモガラ」を散策している人も目立ったが、登山者となると一人もいないようであった。駐車地点からは草が生い茂り、登山道をわからなくしていたが、かすかな草の踏跡をたどりながら直進する。別に登山口を示す標識もないので半分不安を抱きながら登って行くと、やがて階段状に作られた急坂が現れ、途中の木立には「雨呼山へ」と書かれた標識も現れて何となく安心する。階段状の登山道は登りやすいといえば確かに登りやすいのだが、ここの急坂は怒涛ともいえるほどの斜度があって、私は休み休み登らなければならなかった。やがて登路は尾根上をゆくようになり、稜線に出ると木の間からはようやく視界が効くようになった。しかし左手からは黒伏山や船形山らしい山並みが見えるのだが、薄い靄があってその姿形ははっきりとはわからなかった。少しのアップダウンを経て、いよいよ最後の急坂となる。急坂の手前には龍神の池があって、立ち寄ってみると傍らにはひっそりと小さな祠が祭られてあり、ここで昔の農民達が雨乞いの祈りをした場所だということが案内板に書かれていた。そこからは山頂までひと登りであったが、さすがに短いとはいえ、二つ目の山とあって汗が止めどなく流れ続けた。両足も異様なほど重く、ときどき体がふらついたりした。
雨呼山の山頂には駐車地点から30分で到着した。この山も水晶山のような展望を期待していたのだが、雨呼山の山頂は樹林に囲まれていて見晴らしはなかった。しかし、林間には爽やかな風も流れていて汗をかいた体には心地よく、ブナの木立からは午後の柔らかい木漏れ日が降り注ぎ、その明るい雰囲気は気分までリフレッシュしてくれそうであった。ここで疲れた両足を休ませながら、水晶山で残して置いた漬け物などを食べていると、いつしか充足した思いに満たされていた。